42話:不穏な動き
善永のパンチを受けた山南は、派手に吹き飛ばされた。そして、廊下に叩きつけられ、そのまま起き上がれなくなる。善永は山南に歩み寄る。
「これで、斎藤さんと本田さんの仇を討つことができた。」
「だから、なんのことだよ…そいつらがどうしたんだ…」
「まだとぼけるのか!お前が斎藤さんと本田さんに大やけどを負わせたんだろう!」
「!…んなことやってねえ!俺が狙っていたのはお前だけだ!お前を倒すための計画を練ってきたんだ!」
「!」
善永は、意識を失いそうな山南の顔を覗き込む。
「でも…あの焦げよう…パイロキネシスじゃないと…」
「やけどなんて、他の奴でもできるだろ…」
山南はそのまま意識を失った。
「くそったれが!それじゃあ、誰が2人を!?」
善永は立ち上がり、拳を強く握りしめた。
2人が戦っていた廊下の曲がり角、その戦いを角から覗いていた人影があった。その人影は、電話を始める。
「もしもし…私です。人員の増員を希望したく、連絡しました。」
人影は誰かと話している。その相手が誰なのかはわからない。
「ええ。最近、争いが相次いでいましてね。計画を進める上で邪魔な存在です。」
人影は続ける。
「計画は順調に進んでおります。なんせ、20年以上もこの計画に携わってきたのですから。」
人影は窓の外を見る。そして、不気味な笑みを浮かべた。
「この計画は実現させます…SOCIOLOGIの名において、このNo.3が。そのときまで楽しみにお待ちください…No.1…」
その人影が電話を終えると、何食わぬ顔で廊下を歩き始めるのであった。
善永が突っ立っていると、そこに荘介がやってきた。
「ん?善永!お前、山南を倒したんだな!」
「まあな…って!まずい!」
善永がある人物を発見した。白髪で50〜60代ぐらいの男性が、むすっとした表情で歩いてきているのが見える。
「教頭の小熊正一先生だ!この場面が見られるとまずい!山南を隠せ!」
善永と荘介が山南を隠すように並び立つ。小熊が2人に気がついた。
「お前ら、そんなとこで何やってんだ?お前らのことだ…また何かよからぬことでも…」
小熊が2人を睨んでいる。
「え、えーと、世間話です。」
「そう、そうです!最近景気が悪いなーとかそんな感じです!」
小熊は2人の背後が気になった。覗き込もうとする。すると、2人はそれを遮るようにカニ歩きをする。
「何やってんだ。」
「何がですか?」
しばらく、2人の背後を覗き込もうとする小熊と、それを遮ろうとする2人の攻防が続いた。
「まあいい…」
息を切らした小熊が折れた。2人を睨みながらもその場を後にするのであった。
「ふぅー。危ないところだった…」
「怖いんだよな、あの先生…」
2人はほっと一息置いた。
小熊がしばらく廊下を歩いていると、3人の人物が立ち話しているのが見えた。生徒指導の英一と、理事長のホワイト、そして生徒会長の有賀だ。
「おや?3人とも、ここで何を?」
小熊が尋ねる。それに対して、英一が返答した。
「おや、小熊先生じゃありませんか。いえ、歩いていたら理事長と出くわしましてね。」
「小熊先生も、なぜこんなところを歩いているのですか?」
ホワイトの質問に、小熊がたじろぐ。
「い、いえ、最近ここでよからぬことをやっている生徒がいるって聞いてましたから、見回りに…」
ホワイトはにっこりと笑った。
「それはご苦労様です。やはり、小熊先生は頼りになりますね。」
「はは…」
ホワイトの笑顔に、小熊は少し照れている。その横で、有賀が空気を悪くさせる発言をした。
「この廊下はそこまで人通りがありません。そこに、4人も、それも大物揃い…妙ですよね?皆さん、一体何をしていたのですか?小熊先生も、本当に見回りでここに来たのですかね?」
その場にいた全員が、顔の表情を変えた。
「ふふふ。今、私の頭の中にはベートーヴェンの『運命』が流れている!これは、何かが起きるぞ!ふははははは!」
高笑いしながら、有賀は去っていった。
善永の挑戦状:当初はナポレオンを讃える曲として作曲された、ヴェートーベン作の交響曲第3番の名称を何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:セントハウンド(嗅覚ハウンド)




