3話:ゴング鳴る
『さあ、クイズ研究会の川路善永さんによる部活狩りが今、始まろうとしています!相手は、ボクシング部部長の篠原牛滋さんです!実況役は私、放送部の斎藤二太郎と!』
『解説役の河元信正です!よろしくお願いします!』
2人の声が校内に響き渡る。校内に残っていたほとんどの生徒が、放送に耳を貸していた。
「おい、部活狩りだってよ。」
「なんだよ?それ?」
「面白そうだし、聞いてみるだけ聞いてみよう。」
リングの上では、善永と篠原が見つめ合っていた。
「KOした方が負け…これでいいな?」
「いいですよ。勝ちますからね!」
(それにしても…)
善永はリングを見回した。
「このリング、やけにカラフルですね。ジャクソン・ポロックのアートを思い出す。」
篠原がにやっとした。
「ほう、これの良さがわかるようだな。少し気に入った。」
2人がグローブとヘッドギアを身につけてしばらく向かい合っていると、ついにゴングが鳴った。
『試合開始のゴングが鳴りました!2人ともしばらく向かい合っています!河元さん、ここで2人の情報を。』
河元が手元にあった資料に目を通しながら2人の解説をする。
『はい!まずは篠原牛滋さん、階級は…ウェルター級です。全国大会では一度、決勝戦まで進んでいます!対して、川路善永さん、ただのクイザーです。ボクシングの素人ですね!つまり、兆能力をどう使うかが重要になりそうです!』
最初に仕掛けたのは篠原だ。
『篠原さん!ジャブで牽制だ!善永さんは防御する!』
(これならどうだ!)
善永は右フックをする。が、
『善永さん!右フックをかわされる!』
(ボクシング素人が…テレビや映画の見よう見まねで戦えると思うなよ。)
篠原は善永の隙をついて、右脇腹にボディブローをぶつける。
「ぐはっ!」
『おっとぉ!牛滋さんのボディブローだ!』
『これはレバーにきますよ。』
荘介がリングの下から善永に叫ぶ。
「善永!兆能力を使え!普通のボクシングで勝てるわけないだろう!」
善永は言われた通り目をつむり、兆能力を発動する。
『善永さん!目をつむる!兆能力を発動した!』
「ならば、俺も使わせていただこう。」
善永がオーラを発したのを見て、篠原も兆能力を発動した。
『善永さんに合わせるかのように、篠原さんも兆能力を発動した!オーラの色は青だー!』
(なるほどな…全国大会に出るだけはあるな。)
善永は篠原と距離をとりながらジャブで牽制している。それを見ていた一太が、なぎさに小声で尋ねる。
「彼は、なんの兆能力を持っているのですか?」
「はい。えいちゃんの兆能力は、『テレポートビジョン』です。兆能力範囲であれば、視界をどこにで移すことができるという優れものです。」
「なるほど。私と戦ったときは、部室を俯瞰することで、泥の位置を把握していたと。」
一太は納得していた。
(俺の兆能力範囲は、ちょうどこの部室ぐらいの広さだ。視界を「設置」するなら…)
善永は俯瞰できるように、天井の隅に視界を移した(善永はそれを「設置」と呼んでいる)。そのとき、篠原の右ストレートが飛んできた。善永はそれをかわす。
『善永さん!目をつむっていながら、篠原さんの右ストレートをかわす!』
(やっぱりボクシングは動きが激しいな…定期的に視界を移さなければ、篠原さんの背中しか見えなくなる。)
『篠原さんの攻撃を、善永さんがかわし続ける展開が続きます!善永さんに反撃のときは訪れるのでしょうか!』
二太郎の言う通り、善永はただかわすしかなかった。
(この人は、兆能力を発動している…だが、さっきから繰り出されるのは普通のパンチだ。それに、俺のように五感のどれかを発達させている様子もない。)
善永はリングのコーナーに追い詰められた。
『善永さん、コーナーに追い詰められた!』
「どうした?怖くなって前が見えなくなったか?」
篠原は右ストレートを善永の顔面に打ち当てようとする。それを、善永がかわした。
「!これをかわせるのか!」
荘介がにやっとしている。
(岡目八目という言葉がある。当事者よりも、第三者の方が物事の真相がよくわかり、的確な判断ができるというものだ。善永は、テレポートビジョンを駆使することによって、当事者でありながら第三者になれる!)
『これは、驚き桃の木山椒の木!あの距離で右ストレートをかわした!』
篠原の右ストレートはコーナーの柱にぶつかる。すると、カラフルなペンキが辺りに飛び散った。
「なるほどな。これがあんたの兆能力か。」
善永の挑戦状:自動車事故でこの世を去った、その画法は「アクション・ペインティング」と呼ばれる、アメリカの画家は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:斎藤一




