11話:がっぷり四つ
篠原たちが相撲道場に入ると、生徒たちが稽古をしているのが見えた。一人の生徒が篠原たちの存在に気がつくと、一斉に身構えた。
「待ってくれよ。喧嘩を売りに来たんじゃない。」
篠原は生徒たちを宥めようとするが、身構えたままだ。そのとき、
「そいつの言うことは本当だ!!」
一人の男子生徒が叫んだのを聞いて、皆が警戒を解いた。その生徒はかなりがっちりとしていて、背が高い。思わず、早明浦が持っていた竹刀を落とした。
「大した人だね…鶴の一声で皆の警戒を…」
なぎさが感心していると、篠原がその生徒に指を差す。
「あいつこそが、俺のあてさ。」
その生徒は大きな声で言う。
「何をしに来た!篠原!」
篠原は周りの生徒を見ながら言う。
「できるだけ、他の人には聞かれたくない。ちょっと面貸してくれ。」
篠原はその生徒に事情を説明した。
「ふむ。おおよその事情は理解した。だがな…」
「やっぱり難しいか…」
その生徒はあせあせしながら言った。
「いや、そういうわけではない!俺が言いたいのはだな…」
「だが?」
「絶賛マネージャー募集中でな。そろそろPRでもしたいと思っていたところなんだ。」
篠原は荘介に耳打ちした。荘介はその場を後にする。
「つまり、やるんだな?」
その生徒は頷いた。
「実力を確かめるのも兼ねてな。言っておくが、手加減はしないぞ。」
篠原は善永の方を見る。
「善永、今度は相撲だ。」
しばらくして、相撲道場に人が集まりだした。普段は相撲部員以外が立ち入ることなどないが、その日は別だった。
『さあ!クイズ研究会による部活狩り!これで4戦目です!現在、1勝2敗のクイズ研究会!今回は勝利できるのでしょうか!』
『相撲部三年、本田志賀之助さんはそっぷ型の中でもかなりの実力者です!その体格で、多くの力士を倒しています!』
早明浦が不服そうに言った。
「おい!5戦目だろ!?剣道部のことを忘れるな!」
「お前が剣道部の代表を騙るな。」
土俵の周りに人が集まる。実況席も置かれ、今までにない盛況だ。相撲部員は舞い上がっていた。
「これでマネージャーがくるといいな!」
「ああ!女子のマネージャーだともっといいな!」
舞い上がっている相撲部員の中で、一人、集中している者がいる。廻しをつけていて、がっちりした体格を露わにしている。本田と呼ばれている生徒が、土俵の近くで立った。まずは行司役の荘介が土俵に立つ。かなり緊張しているようだ。荘介は体を震わしていた。
「行司を、務めさせて、いただきます。荘介です。早速、選手入場。」
なぎさが頭を抱える。
「そう君、それだとレフェリーだよ…」
「にーしー、川路善永ー!川路善永ー!」
体操服に着替えた善永が土俵に入ろうとする。しかし、土俵際でおどおどしている。
「早よ入れ!」
「雲竜型と不知火型、どっちがいい?」
「どっちでもいいし、お前がそんなこと気にすんな!」
荘介は咳払いをした。
「ひがーしー、本田志賀之助ー!本田志賀之助ー!」
本田が礼をして、土俵の中に普通に入った。
「君、これは大相撲じゃない。最低限の礼があればいい。気楽にしなさい。気楽に。」
本田は優しい表情で言う。
「は、はあ。」
(類は友を呼ぶと言うが…篠原さんの友人、いい人すぎる!)
善永は感心していた。その横で、荘介がルールの説明をする。
「これは、兆能力ありレギュレーションです。2人とも、質問は?」
2人とも問題ないと答える。
「それでは、構えて。」
2人が拳を土俵につける。それを見て荘介が叫んだ。
「のこった!」
その瞬間、本田は勢いよく直進してきた。
(電車道を狙っているな!)
電車道とは、立ち合いと同時に相手を一気に土俵外に押し出すことである。善永の体格は、決してひょろひょろではないが、本田をまともに相手ができるほどがっちりもしていない。善永はテレポートビジョンを発動しながら、横にかわした。
「いつの間に、レベル2に!」
善永が青いオーラを発しているのを見て、行司の荘介が驚いていた。
『開始と同時に、急突進だ!まるで蒸気機関車だ!』
「いいぞ。ならば、俺も。」
本田も兆能力を発動した。青色のオーラが揺れ動いているのが見える。
善永の挑戦状:四十八手を考案したと言われている、初代横綱とされている人物は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:早明浦ダム




