第7話:仲間との絆、そして欺瞞
隊長を殺害したという重い罪を背負ったシークイーナは、森の奥へと逃げ延びた。 彼女の心は、絶望と罪悪感で満たされていた。 なぜ、こんなことになったのか。 ただ、静かに暮らす魔女たちを救いたかっただけなのに。
彼女は、自分が魔女であるという事実を隠し、騎士団という偽りの仮面を被ることで、誰かを守れると信じていた。しかし、その結果、彼女は、守りたかったはずの人々を、そして信じていた仲間を、深く傷つけてしまった。
森の中をさまようシークイーナのもとに、セフィロスが駆けつけた。
「シークイーナ様! ご無事でしたか!」
セフィロスは、彼女の無事を確認すると、安堵の表情を浮かべた。
「隊長は…」
シークイーナが、震える声で尋ねる。
「…残念ながら」
セフィロスは、悲しげに首を横に振った。
「私のせいだ…」
シークイーナは、その場に膝をついた。 セフィロスは、そんな彼女を、静かに見つめていた。
「いいえ、シークイーナ様。あれは、虚無の力が引き起こしたことです。シークイーナ様は、何も悪くありません」
「だが…私が、あの場にいたからだ。私が、アルヴィンたちを欺いていたから…」
シークイーナは、涙を流すことすら許されない、自身の運命を呪った。 彼女は、魔女であるという事実を隠すために、冷酷な騎士を演じ続けた。その結果、最も心を許せるはずだった人間たちから、裏切り者と見なされてしまった。
その頃、村に残されたアルヴィンは、憎しみに燃えていた。 隊長を殺された怒り。そして、信じていたシークイーナに裏切られた絶望。 彼は、魔女はやはり、信じるべきではない「悪」だと、再び確信した。
「あの魔女を…シークイーナを、必ず討つ!」
アルヴィンの心は、復讐の念に支配されていた。 彼の中で、シークイーナは、もはや「英雄」ではなく、忌まわしい「魔女」でしかなかった。
セフィロスは、シークイーナを励ましながら、今後の計画を立てていた。
「シークイーナ様。もう、私たちに後戻りはできません。騎士団は、シークイーナ様の正体を知り、あなたを追うでしょう。私たちは、真の目的を果たすために、より深く、人間社会に潜入しなければなりません」
「…人間の絶滅、か」
シークイーナの声は、虚ろだった。 彼女は、もう何のために戦っているのか、分からなくなりかけていた。
森の奥で、シークイーナとセフィロスは、次の行動を決意する。 しかし、その決意は、もはや「使命」のためだけではなかった。 それは、彼女の心が抱く、人間への罪悪感を、拭い去るための、最後の抵抗でもあった。
欺瞞と裏切りの物語は、まだ始まったばかりだった。