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第95話 マリアナの七面鳥撃ち
このマリアナ沖海戦に米軍は新兵器を用いて来た。その名はVT信管(近接電波信管)と言う。VTとは(variable time)の略語で高角砲弾の弾頭内に装着されたレーダーが、目標の数十メートル以内に到達すると、感応して自動的に砲弾を炸裂させる。従来の高角砲に使用されていた信管は日米共に同じ様な構造であり、あらかじめ何秒後かに爆発する様に設定されているので、確かな測定技術と時間設定を信管に与えない限りは、目標に対して効果を発揮する事は出来ない。これに比べてVT信管を装着した砲弾は、目標の至近を通過するだけで、これを感知して炸裂するのだから、その威力は絶大であった。この新兵器の登場により、日本側の航空機の損失は200機近くを失った。その様は自由に空を飛べない七面鳥になぞらえて、「マリアナの七面鳥撃ち」と揶揄される事になってしまったが、本当に米軍は面白い様に日本軍の航空機を撃ち落とした。この兵器は後の日本軍の特攻対策にも有効であった。




