第92話 ハンモックナンバー
ハンモックナンバーとは、海軍兵学校の卒業席次の事である。分かりやすく言えば、卒業時の成績順位の事で上位トップ5名には恩賜の品が天皇陛下から授与される。陸軍士官学校も海軍兵学校も、このハンモックナンバーによって学校卒業後の軍での人事を決定していた。平時ならばまこと有用に機能したが、戦時となると、このハンモックナンバー人事による弊害も出てくる。例えばミッドウェー海戦で大敗を喫した司令官は南雲忠一司令官(中将)であるが、南雲中将には空母機動部隊について明るい知識がなく、根っからの水雷屋であった。そんな南雲中将よりも空母機動部隊に明るい適任者は複数名いたにも関わらず、このハンモックナンバー人事により、一気に勝てる戦を敗退の坂を転げ落ちる戦に変えてしまった。勿論、南雲中将が悪い訳ではない。部隊の人事を海軍兵学校のペーパーテストの出来だけで、判断していた大本営がいけないのである。せめて有事位はハンモックナンバー人事を止めて適材適所に人材を配置するべきだった。のだが、ハンモックナンバー人事は大日本帝国陸海軍健軍以来の伝統であった為、そう簡単には変えられなかった。




