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第91話 左捻り込み
日本海軍の戦闘機乗りには、秘術なるものが存在した。それが"左捻り込み(ひだりひねりこみ)"である。その正体は敵機に後方につかれた時、宙返りの頂点で、左に捻る様に旋回して敵機の後ろにつく技である。同様に米軍にも零戦対策として編み出されたのが、秘術"サッチ・ウィーブ"である。二機のペアが左右ジグザグに緩い旋回を繰り返し、互いに交叉しながら"機織り(ウィーブ)"する様に飛ぶ。こうすると飛行軌道が交叉する時に互いの後方が確認出来る為、常に援護し合える訳である。この様に日米両軍共にこの様な秘術を編み出す事により、少しでも戦局を有利に持って行きたかったのは明らかである。それでもこの様な大技はあくまで秘術であって、ほとんどのドッグファイトで優勢を得る為には馬力だとかスピードや格闘性能と言ったスペックが大切だったと言う事は言うに及ばない。日本海軍の左捻り込みに関しては主に一部のパイロットが零戦で使っていた秘術であり、それも頻繁には使われていた訳ではない。




