第81話 最後の改良
零戦設計開発責任者の越川三平と羽根嘉三は、大幅な改良としてはほぼ完成形である零戦五二型を完成させる。旧式(二一型)の零戦よりも馬力やスピード面での性能は上昇していた。ただ既に登場していた米軍のグラマンF6Fヘルキャットや、ボートシコルスキーF4Uコルセア等の機種と比べると見劣りしてしまうのは否めなかった。五二型については後ほどまた詳しく語る事にするが、三平としても、これ以上改良の余地は無く、無駄に時間を浪費するだけならば新しい後継の空母艦載機つまりは、新機種の開発に時間を割くべきだと、本気で思っていた位である。これはつまり、零戦については完成形であり、最後の改良である事を示唆していた。これ以上の能力上昇は望めそうにない事を感じながらも、後継機を満足に作れなかった悔しさが三平や嘉三にはあった。結局、日本側は敗因として米軍の航空力を甘く見ていた節があった。零戦と言う名機の力に心酔し過ぎて、その後継機を誕生させられなかったのが最大の敗因として上げられる。




