第70話 生きて虜囚の辱しめを受けず
「生きて虜囚の辱しめを受けず。」と言うフレーズは戦時中の昭和の大日本帝国陸海軍を端的に表す言葉の一つかもしれない。このフレーズが登場するきっかけになったのが、戦陣訓と言うものから生まれたのはあまりにも有名である。昭和16年1月、東條英機陸軍大臣名で陸軍全軍に示達された。中国大陸での軍紀の乱れに手を焼いた陸軍首脳が、綱紀粛正の為に、島崎藤村、土井暁翠らの意見を参考に作ったものであるが、その中の「生きて虜囚の辱しめを受けず。」と言うフレーズが、捕虜になる事を禁じた規定として有名になった。これが、戦陣訓のディテールである。要するに捕虜になる位なら敵に一撃を与えて死ぬか、もしそれが不可能なら自決しろと、そう言う事なのである。捕虜になる事を禁じた或いは恥だと思うようになったのは、恐らくこの戦陣訓の影響が大きいと思われる。世界の他の国々は一刻も早く作戦を成功させる為に全力をつくし、もしそれに失敗したならば、一目散に捕虜になる事を命じたのとはまるで正反対であった。




