第63話 見越し射撃
零戦には7.7㎜機銃と20㎜機銃が備え付けられている事は、以前にも紹介した事である。しかしながら、実戦でこれら2つの機銃を使い分けて敵機を撃ち落とす事は容易な事ではなかった。"見越し射撃"は、そんな中でゼロファイター達が生み出した芸技だった。7.7㎜はあたるが、威力の高い20㎜はあたらない。7.7㎜では防弾性能の高い米軍機は中々落とせない。敵機に致命傷を与えるには、どうやって命中率の低い20㎜をあてるか試行錯誤した結果、照準よりもずらした位置から20㎜機銃を撃って、その照準に敵機が侵入して来る事を見越す。それが"見越し射撃"である。ドイツの名パイロットであるマルセイユも、この"見越し射撃"の名手であったという。20㎜が命中する様になれば、大抵の戦闘機は吹き飛ぶ。つまり、撃墜数が大幅に増加するのである。ただ、この"見越し射撃"を実行するには、熟練の操縦技術が必要である事は言うまでもない。日本海軍航空隊のゼロファイター達が生み出した芸技ではあったが、この芸技を使いこなせたのは、一部の撃墜王だけであったと言われている。




