第54話 ルーズベルト給与
軍隊で食べる物が無くなった場合、調達方法はいくつかあるが、最も手っ取り早いのが、敵方の持っている食糧を強奪する事である。太平洋(大東亜)戦争最大の敵は米国であるが、日本軍は米軍の食糧を"ルーズベルト給与"と呼び揶揄していた。ルーズベルトとはアメリカ合衆国第32代大統領フランクリン・ルーズベルト(1882年~1945年)の事を指し、太平洋(大東亜)戦争開始時に米国の大統領であった事からこう言われた。ルーズベルトは海軍次官を7年も務めた事もあり、その経験が第二次世界大戦を指導する上で極めて貴重な財産となった。南方の島々で日本軍は度々"ルーズベルト給与"を目的に局地的なゲリラ戦を行う事もあったが、兵力・武力で勝る米軍から"ルーズベルト給与"を強奪するのは容易な事ではなかったのである。日本軍が兵站を重視して来なかった事による弊害はこんな所にも出ていた。とは言え殺した兵隊から何かを奪うと言うのは、世界基準で見ても公然と黙認されて来た事であり、日本軍だけが特筆して行っていたものではない。




