第44話 10年
大日本帝国陸海軍において、10年間と言う期間は様々な意味でキーポイントになる。例えば最下級の二等兵から入隊した兵隊が叩き上げで下士官・下級士官になれる目安が大体10年位である。海軍兵学校や海軍大学校を卒業したエリート士官が立派な艦長になるのもおおよそ10年。戦闘機の優秀なパイロットが育つのも、10年生き延びれば立派なパイロットになる。この10年と言う期間が長いのか、短いのかと言う事は何とも言えないが、少なくとも兵器を作るよりは長いと言う事は言える。大日本帝国海軍には、艦と運命を共にすると言う悪しき伝統があったが、その伝統について、ある士官はこう吐き捨てた。「艦と運命を共にするのでは誰が指揮を採って戦うのか?」と。艦と運命を共にするのは艦長の仕事だが、如何にも侍的な思考で10年以上はかかる艦長育成期間から、考えるとその伝統については、非効率以外の何物でもない。人名軽視も甚だしい。大日本帝国陸海軍が10年間と言う人材育成の期間について何も考えていない事がよく分かる事例である。




