第25話 特務士官
日本海軍には海軍兵学校、通称海兵を卒業したエリート少尉いわゆる正規士官と、学徒動員で入隊した大学生の少尉、通称予備士官と、下士官や一兵卒から叩き上げで少尉になった特務士官の三種類の少尉(士官)が存在していた。格付け的には海兵出身の正規士官→学生の予備士官→叩き上げの特務士官と言う格付けがあり、折角頑張って少尉になっても特務士官は、それに相応しい待遇が用意されている訳では無かった。日本海軍航空隊のエースや撃墜王のほとんどは下士官か特務士官であった。敵機を何百機と落としてようやく辿り着いた地位だと言うのに、海軍兵学校を出たばかりと言うだけの年下の新品少尉や予備士官から特務士官は羨望の眼差しが送られていた。軍隊と言う所は、厳しい縦社会であり、実力は勿論星の数(階級)が最重要視される所である。まさにサバイバル。少しの差でも序列をつけたがるのは、そう言う権力構造が階級により決められていた事に内在する。特務士官はその象徴的な存在である。陸軍はどうあれ、海軍にはこの様な三種類の少尉に序列をつけていたのに違いはない。




