第11話 零戦の特徴②(格闘)
その卓越した旋回と宙返りの能力は零戦の格闘能力を抜群のものに押し上げた。戦闘機同士の空中戦をドッグファイトと言うが、開戦間もない頃の零戦にドッグファイトで優勢を保てる機体は無かっただろう。スピードもあり格闘性能にも優れた零戦は、正に戦の申し子とも言える存在であった。プロペラ機とは言えども、日本が世界最高水準の航空機を作り出した事に変わりはない。ただ、大した改良もなしに、長年戦い続けてしまうと言う愚を日本海軍は犯してしまう。分かってはいてもあまりにも良い兵器であった為に長く活躍出来る。あるいはそうあって欲しい。そう思ってしまうほど、零戦は完全無欠の戦闘機である事は確かだ。やがてこの日本海軍航空隊の至宝とも言える戦闘機が十死零生の特攻作戦に動員されようとは、三平も嘉三も思っても見なかった訳である。特攻作戦とは片道切符の燃料しか持たず、爆弾を抱えて機体ごと敵艦船に体当たりをすると言う、統率の外道とまで言われた、命と引き換えに戦果を得る生きて帰る見込みの無い攻撃の事である。




