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第四百一話:モニターに映された存在

 ヴァン達はその壁の内側に入り、国の中を見る。


「……これが、科学の国……」


 レイラが、ぼそりとそうつぶやく。そこは科学の国という名の通り、他の国とは少し様相が違うものであった。


 モクモクと紫色の煙を発する工場が、付近に立ち並ぶ。無数にあるその工場の中で何がされているのかは分からないが、毒のような紫色の煙を発する工場が無数にあるというのは、不気味な光景である。


 さらに、国の中の一部にかなり大きな、何もないエリアが存在している。半径数kmほどの運動場のような、開けた場所があるのだ。その不思議なエリアを横目にヴァン達は、国の中を進む。


 その国の中のいたるところに、モニターがある。そのモニターの中からヴァン達に向けて、声が発せられる。


「そこを、右に進みなさい」


「そこは、まっすぐです」


 その声にいざなわれるようにヴァン達は、先に進む。


 そして、とある建物にたどり着いた。


「……嫌な雰囲気の建物だね……」


 レイラが、顔をしかめる。


 ヴァン達も同意する。目の前に現れたのは、正方形かつ真っ白な建物であった。


 かなり広く、縦、横、長さそれぞれ数kmもありそうな、窓無しのその建屋は、不気味である。


 その建屋にあるのは、大きな自動ドアの入り口が一つだけ。


 ヴァン達がその建屋の前に立った瞬間、自動ドアが開いた。


 その中には、無機質な廊下が伸びている。廊下の左右に無数の部屋があるが、モニターから発せられる声が、その部屋に入ることを許さない。


「まっすぐ、廊下を進んでください」


 そんな声が、響く。


 そしてヴァン達は、その言葉に従う。無機質な廊下を歩くヴァン達は、自然と無言になってしまった。それからしばらくした後ヴァン達は、とある扉の前に立たされた。


「そこに入ってください」


 モニターから聞こえる声が、そう告げる。


 そしてヴァン達は、その部屋の中に入った。そこには、無数の者達が立っている。


「ここは?」


 ヴァンが、首が傾げる。そこは、とても広い場所だ。


「何人いるんだろう?」


 サキが、考える。ざっと数百人くらいはいそうなその部屋の中には、巨大な巨大なモニターが一つ、存在している。


 無数に存在している人々の中で、勇者の服を着ている者達が、一定数存在していた。


「勇者パーティ達なのかな?」


 サキが、そう推測した。


 その勇者の服を着ている者達を中心として、小集団が形成されているように感じるのだ。


 つまり、数多の勇者達がパーティごと集められたという、その場所。


 皆の目線の先に存在する巨大なモニターが、起動した。


 そしてそこに、とある女性の姿が、映された。


「……うわ……」


 レイラが、顔をしかめる。そこに映された、というか今までずっとヴァン達に指示を出していたのは、ヴァン達にとって見知った顔であった。


 サファイアのように真っ青な長髪を後ろでくくった、高飛車そうなつり上がった目をしている二十代後半位に見える女性が、そのモニターに映し出されたのだ。その女性は白衣に眼鏡という、賢そうな身なりをしていた。


「むむむむむ」


 ヴァンが、顔をしかめる。


「彼女が、ここの支配者なんだね」


 サキがヴァンに向けて、そう告げる。


「誰?」


 ヴァンが、首を傾げた。ヴァンはその女性の顔を見ても、誰なのかが、分からなかった。


「……ミドレナだよ……」


 レイラが、そう口にする。


「ミドレナ……、って、誰だっけ?」


 ヴァンのその言葉に対してアリシアが、やれやれと言った表情をした。


「楽しみの国でジジジジを倒した後に現れた、レイラを作った女性よ」


「ああ、ちょっとだけ会った人ね」


 ヴァンが、合点をいかせた。

 

 レイラは、嫌そうな顔をしている。


「……あいつ、嫌い……」


 レイラは、そう断言する。


 ”魔力水晶”であるレイラは、今モニターに映っているミドレナの、スキル"私のために与えるその命"により創られた過去を持つ。


 そんなミドレナの上半身のみが今、モニターに映っている。


「うふふふふふ、皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 ミドレナがそのように、言葉を発した。その場にいる勇者パーティ達は、ジッとミドレナを見る。


「ミドレナって、魔帝八中将であったころのジジジジの仲間だったよね? てことは、悪いやつってことだよね?」


 ヴァンの言葉に対してサキが、頷いた。


※ミドレナの過去の登場シーンは、第百二十九話です。

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