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第三百九十五話:君達

「うふふふふふふふ」


 ララーシャが、微笑む。


 胸の中にある"魔核"という存在を、自らの影により壊したララーシャである。


 ララーシャのその身体が、ぽろぽろと崩れ始め、地面に仰向けで倒れた。それによりララーシャの身体は、ギロレロナでも操れなくなった。


「ごめんなさいね」


 ララーシャがヴァン、サキ、レイラ、アリシアを見て、そう告げる。


「どうして?」


 ヴァンは、何も理解できておらず、不思議そうな顔をする。ララーシャの行動の意図として、自らの魔核を壊すことで、笑い面に操られるその体を使用不可にしたのだ。


「スキル"素敵な……"」


 笑い面が、そう口にする。


 笑い面にはもともと怒り面が使っていたスーツの身体が残っており、それを新たな胴体にしようと、そのスキルの詠唱を始める。


 だが、ララーシャの影の拳が、身体がなくふわふわと浮かぶ笑い面に向かう。笑い面の顔はその影の攻撃を避けこそするが、スキルの詠唱が遅れた。さらにそこに、ヴァン、サキ、レイラが向かった。


 事情は分からないが、少なくとも今すべきこととして笑い面を倒さねばならないということだけは分かる一同は、笑い面が次の行動をする前に、攻撃を始めた。


 残っているかすかな魔力を使用しての、笑い面への攻撃。


「スキル"圧倒的な正義感"」


 ヴァンの手に握られた正義の剣が、笑い面に向かう。


 まだその身体を用意できていない笑い面が、笑う。


「あははははははは、残念だなぁ。ここでお前を殺せたら、ガラムハザール様に一層認められていたのに」


 ヴァンの正義の剣で、無防備な状態の笑い面の顔が、縦一文字に斬れた。


「あはははははははははは、くっそぉぉぉぉぉ」


 笑い面はそう叫びながら、消失した。


「ララーシャ!!!!」


 アリシアが、消えゆくギロレロナに等興味もなさそうに、ララーシャの方に向かった。


 今ララーシャは倒れ、その身体がボロボロと崩れている。


「スキル"オールヒール"」


 サキが、そのスキルを使用する。


 だが、ララーシャの身体は全くと言っていいほど回復せず、その身体の崩壊は続く。


「うふふふふふふふふふ、無駄よ。魔核が壊れた魔族は、死にゆく運命なの」


 ララーシャが、首を横に振ってから、サキに向けて言葉を発する。


「でも、ありがとうね、サキちゃん。回復しようとしてくれて、嬉しかったわ」


 ララーシャが、そう呟いた。


 アリシアの目から、大粒の涙が溢れている。


「うふふふ、泣かないで」


 ララーシャがアリシアに向けて、そう告げる。


 だがアリシアはその目から、大粒の涙を流す。


「あんたは昔……、あたしの唯一の友達だったから……」


 アリシアが、そう口にする。


「うふふふふふ、昔はそうでしたね。ですが今、アリシアの周りには、こんなにもたくさんのお友達がいます」


 ララーシャは、ヴァン達を見る。


「うっ……」


 アリシアは、涙を流す。魔族であるアリシアは、ララーシャが助からないことを、誰よりも理解している。


「うふふふふふふふふふふふふ」


 ララーシャは、笑う。


「ヴァン君」


 ララーシャがヴァンの方を見る。


「はい」


 ヴァンは、ララーシャの言葉を聞き漏らさないように、その背を正した。


「申し訳ないのだけど、君達に一つ、頼みたいことがあるの」


「なんでしょうか?」


 ヴァンが背筋を正したまま、問うた。


「うふふふふふふ、君達の冒険の目標の一つに、魔族と人間が仲良く暮らせる世界を創るっていう、私の願いもいれてもらえないかしら?」


 ララーシャが、言葉を続ける。


「私にはそれを達成するのは、無理だった。でもきっと君なら、いいえ、君達ならきっと、その願いを叶えることができるから」

 

 ララーシャはヴァンと、大泣きしているアリシアを見て、微笑む。


 ヴァン達も、その目に涙を浮かべている。


「もちろんです!!!! 俺は今、みんなが笑顔になれる世界を目指してます。だから、人間と魔族のみんなが笑顔になれる世界を、絶対作ります」


 ヴァンが、そう宣言した。


「うふふふふふふふふ、ありがとう」


 ララーシャが、とても嬉しそうに微笑んだ。


 そしてララーシャは、ゴルドに向く。


「他者に渡せる魔力が残っているのなら、私にもらえないかしら」


 ゴルドが頷き、「スキル"霊源"」と、口にした


 それにより、ララーシャの身体に、魔力が灯った。


「すまない、我も先ほどの戦いで魔力を消耗しているから、この程度しか渡せない。ともに戦った貴殿の最後に、もっと多量の魔力を渡したかったのだがなぁ」


 ララーシャが首を横に振る。


「いいえ、十分よ」

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