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第三百八十九話:スーツ姿の胴体

 笑い面がその鎧の胴体により、霊体兄弟の方に向かう。


 霊体兄弟は、笑い面から距離を取る。


「スキル"素敵なお召し物"」


 笑い面が、そう告げる。


「むむ?」


 霊体兄弟は、首をかしげる。


 笑い面には今、自らの鎧の身体がしっかりと存在している。


 だからそのスキルに意味はないように感じる、霊体兄弟。


 だが、霊体兄弟の背後に、とある存在が立った。


 そこにいるのは、スーツを着た男性の胴体。その首から上は存在していないが、二本足で不思議と立っている。


「どういうことだ?」


 霊体兄弟は、不思議がる。


「身体が二つ?」


「あははははははは」


 笑い面が、笑う。


 その胴体は、基本的に怒り面が使っていたものだ。


 その怒り面の胴体を今、笑い面が操っているのだ。


 怒り面は今、霊祖体の亡骸を操っており、その身体が空いているからこそ、笑い面が使ったということだ。


 元々怒り面のものだった胴体のその手が、霊体兄弟の方に向かう。


「あははははははははははははははははは」


 笑い面が笑う。


 最悪なことに笑い面が扱う場合、元々怒り面の使用していた胴体であろうと、"笑い話"のスキルを使える。


 つまり、そのスーツの身体の手に掴まれても、終わりだ。


 そしてその手が霊体兄弟の方に向かい、霊体兄弟を掴む……、その刹那、とある声が響いた。


「スキル"雷の拳"」


 サキが突如として現れ、スーツの胴体に対してなぐりかかった。


 その拳がスーツの胴体に当たり、スーツの胴体は吹っ飛んだ。


「あははははは、あと数秒登場が遅かったら、僕の勝ちだったのに」


 笑い面が、楽しそうな様相を見せる。


 今そこには、ヴァン、サキ、レイラが立っている。


「きゃははははははははは」


 アリシアも、浮かぶ。


 空では霊祖体の亡骸が、その動きを止めている。


「あはははははは、負けちゃったんだね、泣き面と怒り面」


 笑い面は自らの同胞がやられてしまった事実を、理解した。


 そして改めて、ヴァン達を見る。


「まぁ、どうでもいいことだけど」


 笑い面が、そう口にした。その笑い顔は、恐ろしいほどに冷酷なものであった。


「だけど、ピンチだね」


 笑い面は、そのことを理解する。確かに今ヴァン達もおり、明らかに分が悪い。


「このまま畳みかけよう」


 "闇の化身"を使いすぎて魔力がほとんど残っていない状況ではあるが、ヴァンがそう告げる。


「うん」


 サキ達もうなずく。


「ありゃりゃ、困ったねぇ」


 笑い面が、全く困ってない顔で、そう告げる。


 その瞬間だった。


「らぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁ」


 そんな絶叫が、世界に響いた。


 ヴァン達は、その声により顔をしかめる。


「きゃはははははは、ちょっと間に合わなかったわねぇ」

 

 アリシアが楽しそうに、そう告げる。


 霊祖体の亡骸の封印が、解けたのだ。


 そのことにより、付近に溢れる圧倒的な魔力。ヴァン達は濃厚すぎる魔力により、息苦しくすらなった。


 さらにその場に、とある存在が現れた。


「おほほほほほほほほほほほ」


 高らかな声で笑う、プリズマ。


 プリズマはララーシャにやられ、その身体に数多の損傷を受けている。


 ララーシャはあととどめ一つで、プリズマを倒せる状況だった。


 しかし、ララーシャが霊祖体の亡骸の封印解除に気を取られてしまった折に、プリズマの天女が動けないプリズマを掴んだのだ。そしてそのままプリズマを、この場所まで連れてきた。


 だからこそララーシャもその後を追って、この場所に到達している。


「ごめんなさい。私がきっちりプリズマを倒さなきゃならなかったのに」


 ララーシャが、悔しそうな顔をした。


 サキが、ララーシャの身体に傷がついているのを察知し、"オールヒール"で回復した。


「ありがとう」


 ララーシャが、サキに対してお礼を言った。


「あははははは、大丈夫ですよ。きっちり、プリズマと霊祖体の亡骸を倒しましょう」


 サキが、そう告げた。


「……笑い面が、いなくなってる……」


 レイラが、その事実に気づいた。確かに笑い面はどさくさに紛れ、姿形をその場から消していた。


「どこに行ったんだろう?」


 ヴァン達は考えるが、それよりも何よりも、先に対処すべき存在がいることに気づく。


 プリズマが動けない身体にもかかわらず、霊剣を持ち、微笑んでいるのだ。


「さぁ、私の意のままに動きなさい、霊祖体の亡骸」


 プリズマが、そう告げた。


 その瞬間、霊剣が輝き始めた。


 ヴァン達はその霊剣の輝く様を、しかと見た。

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