第三百八十二話:サキ&レイラ vs 泣き面
つまり、戦いは以下のマッチで行われることになった。
①ヴァン vs 怒り面&霊祖体の亡骸
②サキ&レイラ vs 泣き面
③ゴルド&シルバ vs 笑い面
④ララーシャ vs プリズマ
"面白い戦いになりそうね"
アリシアは、そう思う。
ヴァン達にとって、敵として不足なしの相手達である。
その戦いの始まりを見て、アリシアは喜んだ。
そしてまずは、サキ&レイラ vs 泣き面の戦いにシーンは移る。
「ううううううぅぅぅぅぅぅ」
泣き面はサキの攻撃によりダメージを受けたその身体で、サキの方に向かう。
泣き面の目からは、とめどなく涙が溢れている。
そしてその涙が、地面に垂れている。
サキはそんなこと関係なく、攻撃をしかける。
サキが、泣き面の方に走る。
「スキル"雷の拳"」
サキが雷をまとったその拳を、泣き面に向かわせた。
「ぅぅぅぅぅぅぅ」
泣き面は、相変わらず泣き続けている。
「スキル"涙の暴走"」
泣き面が少し後ろに下がりながら、そう口にした。
サキは、そのスキルの詳細を理解している。そのスキルは、涙を爆発させるというもの。
今、泣き面は涙を手に有していない。
"泣き面が涙を手に取って爆発させるよりも早く、うちが攻撃を当てる"
サキは、そう思う。
だが、そのサキの足元で、爆発が起こった。泣き面の涙は地面にも落ちており、それが爆発したのだ。
「きゃぁ!!!!」
その爆発で、サキの進行は防がれた。
さらにその脚も、傷ついてボロボロになっている。
泣き面は、畳みかけるつもりである。
「およよよよよよよよよよよよよよ、可哀そううぅぅぅぅぅぅ。こんなゴミを殺さねばならない私、可哀そうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
泣き面は、騒ぐ。
泣き面の前に、レイラが立った。
「ううううううぅぅぅぅぅぅ、邪魔なやつねぇぇぇぇぇ」
泣き面が、レイラを見る。
「スキル"涙の暴走"」
ギロレロナがその涙を手に取り、それを球にして、レイラに向けて投げた。だがその涙の球はレイラの"魔力水晶"により、その身体に吸収される。
「……返すよ……」
レイラが、そう告げる。
「……スキル"涙の暴走"……」
レイラは、泣き面のスキルを使用した。レイラはその身体に吸収したスキルを、使えるのだ。
だからこそそのスキルを使用し、泣き面を見る。
だが、何も起こらなかった。
「……ん……?」
レイラは、首を傾げた。
「……どうして、何も起こらないんだろう……?」
レイラは、一瞬考える。スキルの勉強をしていたレイラは、とある事実を理解した。
"……私、泣いてない……"
涙の暴走は、涙を爆弾に変える能力。だからこそ泣いてないレイラは今、そのスキルを使えないのだ。
「……………」
レイラは必死に、悲しかったことを思い出そうとした。
だが、いつも無表情なレイラは泣くことができず、ただただその場に立つ。
そんな茶番を無視して泣き面は、サキを狙う。
回復役兼攻撃役のサキを倒さねばじり貧になることくらい、泣き面にも分かっているのだ。
今サキは、レイラの稼いだ数秒で自らにオールヒールを施し、その身体が完全回復している。
サキも泣き面と対峙するつもりだから、泣き面の突進は、望むところだ。
「ううううううぅぅぅぅぅぅ」
泣き面とサキが、対峙する。
「可哀そう可哀そう、可哀そうな私ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
泣き面は今、大泣きしている。
「あんたさ、さっきから自分のことばっかりだね、泣く理由」
サキが、そう告げる。
「ううううううぅぅぅぅぅぅ、何故この私が、自分のこと以外で泣かないといけないのでしょううぅぅぅぅぅぅ?」
泣き面は、そうほざく。
「いや、薄っぺらい涙だと思ってさ」
サキが、そう告げる。
「自分が可哀そう、可哀そうって、自分のことだけ考えて流す涙に、価値なんてないよ」
サキが、そう断言する。
泣き面はサキの言葉に対して、イラっとした。
「ううううううぅぅぅぅぅぅ、可哀そうな私ぃぃぃぃぃぃ、こいつに馬鹿にされちゃってぇぇぇぇぇぇ」
一層激しく泣く、泣き面。泣き面のその顔はもはや、ぐしゃぐしゃだ。
泣き面が涙を、両手に持った。
サキが泣き面の涙に対して、構える体勢をとった。
再びその涙の球が投げられるだろうと思ったサキであるが、泣き面の行為は、全く別のものであった。




