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第三十六話:緊急ミッション

「で、君はどうしたいの?」


 サキがレメロナに尋ねる。


「どうにもできません!!!!」


 アリシアは思う。


"何なんだよ"


 このレメロナとやらにヴァンですら戸惑っているようで、ただただ空を見ていた。


"なんとか朝ご飯をラーメンにできないかな。そうだ、ラーメンの屋台の前を通ったらその匂いでアリシアも、ラーメンが食べたくなるんじゃないか?”


 そんなことを思うヴァン。


「でも、謝ってもらいたいんです!!!!」


 サキは思う。


"この子、すごいなぁ"


 人の多い屋台エリア。ヴァン達とレメロナを中心に、人だかりができていた。


「もう、あんた謝っちゃえば? それでこの馬鹿、どっか行ってくれるんだからさ」


 そこまで口にしたアリシアは、ハッとした。


「今の馬鹿って言葉、ヴァンに対して言ったんじゃないからね。確かにあんたも馬鹿だけどさ、きゃははははは」

 

 それは、満面の笑みでのアリシアの暴言。


「ババババババババ、馬鹿? 馬鹿って、私に言ったの?」


 アリシアは面白がる。


"きゃはははははは。めんどくさくなること言っちゃったわね〜"


「許しません。絶対に許しませんからね」


 レメロナはその肩掛けカバンから、一冊の薄い本を取り出した。


「スキル”知識の重み"」


 レメロナはその本を持ち、そう告げる。


 そのスキルはレメロナの本(レメロナが読了し、内容を完全に理解したものに限る)をその内容量に伴い硬くできるというものだ。


「もう許しません。もう許しませんからね!!!!」


 そう言ってレメロナは、ヴァンの方に向かう。


「くらえ!!!! 知識の重みを」


 レメロナは本を武器にして、ヴァンに殴りかかる。だが、その本はヴァンの手にあたった刹那、まるでこんにゃくかのように曲がった。


「なんで? 私の"勇者哲学をモラルと数式からひも解く"の本はとてつもない内容の濃さなのに!!!!」


「それ……」


 ヴァンがレメロナの持つ本を、指さした。


"イケメン勇者とダンディ剣士の秘密の密会"


 レメロナは、そんな本を持っていた。


「……………」


 レメロナは状況が理解できなかったが事実はめちゃくちゃ簡単で、ただただレメロナがカバンの中から取り出す本を間違えたというだけの話。


「ぎゃーーーーーーーーーーーー!!!!」


 レメロナは自らの影ながらの楽しみだったそれを白日の下にさらされ、混乱した。そんなレメロナだった。


「よくもよくも!!!! この本、とっても素敵なお話なんですからね!!!!」


 レメロナは涙を流す。


「うわーーーーーん」


 そんな騒がしい一連の騒動の中、ヴァンの巻物が光った。ヴァンはレメロナを無視して、その巻物に記された文言を読んでみる。




緊急ミッション

〈ミッション名〉

 勇者狩りを協力して倒そう

〈依頼者氏名/場所〉

 リンライ / 勇者協会

〈報酬〉

 150,000ゼニー / 100,000勇者ポイント




 そのミッションはどうやらレメロナの巻物にも現れているらしく、レメロナはヴァンを睨みながらも自らの巻物を読んでいた。


「行くか」


 ヴァンがそう告げた。


「待ちなさい。まだ話は終わってませんよ」


 ヴァン達はワーワー言いながらついてくるレメロナも含めて、みんなで勇者協会に向かった。


 勇者協会はヴァン達が勇者認定試験を受けた円形競技場のすぐ横にある、厳かな建物。天に向かう細長い建物の最上部には時計が備わっており、それが時間を刻む。


 そんな何階建てかすら分からないほど高くそびえる建物の一階の受付。


 大理石やらなにやらが敷き詰められたきらびやかな入り口を入ったすぐそばにあるホールのようなその場所で、一人の受付嬢がテーブルに肘をつき、だるそうな態度をとっていた。


 その受付嬢は、ヴァンが勇者認定試験を受ける際に受付対応してくれたその人だった。


 相変わらずぶっきらぼうなその女性は、過去ヴァンと確執があったが、今回はそんなこと関係なさそうにヴァンに喋りかける。


「あんた、勇者になれたのね。馬鹿そうだから無理だと思ってたわよ」


 そんな毒を来客者に対して吐く、明らかに受付として適正の無い女性。だが、ヴァンに皮肉は効かぬ。


「うん、勇者になりたくて頑張ったからね」


 ヴァンはピースサインを見せた。それを見て受付嬢は、ため息をつく。


「楽しそうでいいわね」


 受付嬢がそう口にした。


「うちらは、リンライさんに会いに来たんだけど」


 サキがそう告げ、受付嬢が一つの部屋を指さす。


「あそこよ。でもさ、あんたら馬鹿ね。緊急ミッションを受けに来たんでしょ? 勇者狩りを倒そうだなんて馬鹿げたミッションを受ける奴なんて、いないわよ。命がいくらあっても足りないからね」


 そんな受付嬢の発言に一同(アリシア以外)の空気は重くなった。だが一同は意を決して、依頼者であるリンライがいるという部屋に向かった。


 

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