表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/405

第三十二話:笑うアリシア

 メレナとメトロシカの家に、ヴァン達は戻ってきた。家の扉を開けた瞬間、依頼主の娘であるメレナがヴァン達の元にやってきて、笑顔を作る。


「月光草を持ってきてくれたの?」


 メレナは、とても嬉しそう。


「うん、持ってきたよ」


 ヴァンが笑顔でそれをメレナに見せる。母親であるメトロシカが、とても安堵した表情を作る。


「良かったです。本当に良かった。私、あなた達を蠢く洞窟なんておぞましい場所に行かせてしまったことを、とてもとても後悔してたんです」


 メトロシカはとても申し訳なさそうな表情で、頭を下げる。


「いいんだよ、そんなこと。俺達は、生きて帰ってこれたんだし。それに、ほら」


 ヴァンは戦利品をメトロシカの前に突き出す。


 メトロシカは、月光草から目をそらした。


「せっかく持ってきたのに、嬉しそうじゃないんだね」


 サキの言葉に対してメトロシカは、言葉を詰まらせる。


「なんで? なんでお母さん嬉しくないの? 病気が治るんだよ?」


 メレナが悲しそうな顔をする。


「治らないからよ。その病気は」


 アリシアが、静かにそう口にした。


「石化病は超難病なの。あんたのお母さんのその病気を治せる特効薬なんて、実は存在しないの。きゃはははははははは」


 アリシアの言葉に対して、メレナが絶望した表情を作った。


「ごめんね、メレナ。その人の言う通り、私の病気は治らない。でもそのことを、あなたに告げられなかったの」


 メトロシカが悲しい顔で、メレナに微笑む。


「治らないことを知っていたからこそ、とてつもなく安い報酬で、とてつもなく難易度の高い"月光草を一つ手に入れてください"というミッションを設定したの。コスパの悪すぎるそのミッションを受ける勇者なんていないだろうから、私が死ぬまでずっと、メレナに月光草という希望を持たせてあげられると思ったから」


 メレナの目から、涙が溢れた。


「きゃはははははは」


 アリシアが、あいも変わらず楽しそうに笑う。


 サキがアリシアを睨む。


「何が面白いの?」


 サキはその拳に力を込める。そんなサキに対して、アリシアが尋ねる。


「あんたさ、母親を助けたいんでしょ?」


「当たり前でしょ」


「ならあんたが、治してみなさい」


 アリシアはその掌に黒色の液体を出し、それをサキにぶつけた。サキの体に、真っ黒なオーラが溢れる。


「きゃはははははは。さて、あんたはどうなるかしら?」


 サキの体の中に、アリシアのスキルが溢れる。その圧倒的な力が体に入ったサキは、言葉を発す。


「すさまじい力だ。この力があれば、なんでもできそう。うちをパーティーから追い出した勇者を見返すことだって、できるね」

 

 そんな邪悪な感想を口にしたサキの肩にヴァンが、手をやる。


「おい、何言ってるんだよ。みんなを助ける素敵な回復師になるんだろ?」


 そんなヴァンの発言にサキは「ははっ」と笑う。


「分かってるよ。うん、分かってる。うちはさ、ただただ他人を助けたいだけなんだよな」


 サキはそう口にし、メトロシカの前に立った。そしてその右手を、メトロシカの胸に当てた。


「きゃははははは、スキル名は"オールヒール"よ」


 アリシアが手をひらひらと振る。


「スキル"オールヒール"」


 サキがそう口にした瞬間その手が光り、それに合わせてメトロシカの石化した部分が、元の皮膚に戻っていった。


「石化が治ってる!!!!」


 メレナが母親に抱き着く。メトロシカは石化して動かなくなっていたはずのその手で、メレナの頭を優しくなでた。


「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいか分かりませんが、とてもとても感謝しております」


 メトロシカがサキに対して頭を下げた。サキが、言葉を発する。


「うちが、このうちが、病気を治すことができた。こんなに嬉しいことはないよ」


 サキの目から涙が落ち、床にシミを作る。


「きゃはははははは。力に呑まれなかったのね。蠢く洞窟でもあんたの有用性は十分に理解できた。だから、合格よ。あんたは今から、ヴァンのパーティーメンバー。もちろん回復師としてね」


「ありがとう、本当にありがとう」


 目が真っ赤なサキは、涙に似合わない嬉しそうな表情を作る。だがアリシアが、残念そうな顔をした。


「あんたに、酷なことを二つ告げないといけない」


「酷なこと?」


 サキは首をかしげる。


「まず一つ、あんたのスキルはあたしが貸したものだから、返してもらう」


 そうアリシアが口にした瞬間、サキの体から真っ黒なオーラが消えた。


「そしてもう一つ、あたしのスキルを体に入れた人間は、その負荷に体が耐えきれず、ぶっ倒れる」


 アリシアがそう言うや否や、サキはその場に倒れた。アリシアは、サキを見下ろして笑う。


「倒れたザコのあんたに、良いことを一つ教えてあげるわ」


 気を失ったサキはもはや、アリシアの発言を聞けていなかった。だけど、アリシアは言葉を続ける。


「あんたに"オールヒール"のスキルが現れてる。あたしが貸したのよりもはるかに力は落ちるでしょうけど、回復師としてこれ以上ないスキルを、あんたは手に入れたわ」


 アリシアの言葉はサキには聞こえていないはずなのに、サキのその顔が嬉しそうに見えると、ヴァンは感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ