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第三百三十六話:魔族と人間のわだかまり

 ヴァン達は、白と黒の国を歩く。


「おい、魔族に近寄るな!!!!」


 とある人間の父親が、自らの息子であろう子供に対して、そう告げる。


 子供が、近くを歩いていた魔族の方に、ふらふらと歩いて行ったのだ。


「へ、こっちこそてめえらなんかに、近寄ってもらいたくねぇんだよ」


 近寄られた魔族である"秀才ゴブリン"という、喋れるゴブリンが、そう告げる。


「やっぱり、人間と魔族は仲が悪いんだね」


 ヴァンはそのいざこざに対してそう告げ、そのヴァンの言葉に対して、ララーシャは頷く。


 そしてララーシャは儚げに、とある方向を見た。


「少し、面白いところに行きましょうか」


 ララーシャがそう告げ、サキは首をかしげる。


「面白いところ?」


「面白いところなら、行きたいぜ」


 何も考えていないヴァンが、笑顔でそう告げた。




 ララーシャに連れられて、一同はとある場所に到達した。


「うふふふふ、私がいなかったら貴方達は、ここに来れていなかったでしょうね」


 ララーシャのその言葉に、ヴァン達は頷く。そこは、黒の城の下部にある城下町。


 そこには、数多の魔族が闊歩している。


 この白と黒の国では、白の城の下に人間達の生息しているエリアが存在しており、黒の城の下に魔族の生息しているエリアが存在している。そして、その中心部に繁華街として、人間と魔族が存在しているエリアがある。


 原則、人間エリアには魔族は入らないし、魔族エリアには人間は入らない。


 もしそのエリアに侵入してしまうと、戦いこそ発生しないが、あらゆる侮蔑の言葉を投げかけられる。


 その魔族エリアに、おそらく初めて入った勇者である、ヴァン達。そのヴァン達を、魔族達が睨む。


「なぜ、勇者がこのエリアに?」


「ララーシャ様が連れてきた輩でなければ、八つ裂きにしてやるのに」


 そんな声が、ヴァン達の耳に届く。


「うふふふ、ごめんなさいね」


 ララーシャがヴァン達に謝る。


「私も魔族には言ってるのだけどね、人間と仲良くねって。でもこの子達はまだ、分かってくれてないみたいなの」


 ララーシャが、残念そうな顔をした。

 

 魔族の集団なのに、ある程度の社会性を有しているという、そこに存在している者達。


 買い物や洗濯のような行為をし、家で暮らすその魔族達だ。


「魔族にも、社会性ってあるんだね」


 サキがその様を見て、驚く。


「うふふふ、この国にいる魔族は皆、ある程度の知力を有しているからよ。知力の低い魔物がこの国に来た場合、人間達といざこざを起こし、即座に霊祖体の亡骸を暴れさせてしまうでしょう。だからここにいる魔族は、ある程度の知力と、最低限の社会性を持っている者達なのよ」


 ララーシャがそう説明して、ため息をはいた。


「だからこそ、人間達と仲良くしてもらいたいのだけどねぇ」


 ララーシャが、残念がる。


「きゃはははは、あんた、本当に不思議な魔族ね」


 ララーシャが、人間と魔族が仲良くできていない現状を心から憂いているのを理解したアリシアは、そう告げた。


「不思議? まぁ、異端ではあるでしょうね。ですが、人間と魔族が仲良くするのを願うというのを不思議な存在と評されるのは、少し悲しいですね」


「きゃははははは」


 アリシアは笑った。


"魔族と人間が仲良く……か"


 アリシアは、そう思った。


 アリシアは永いこと生きたがそれでも、魔族と人間が仲良くしたという例を聞いたことがなかった。


 それほどに、魔族と人間のわだかまりは深い。


 だからこそ、そのわだかまりを解きたいと願うララーシャのことを、滑稽にすら感じていた。


「うふふふふふ、来て」


 ララーシャがほほ笑みながら、その魔族のエリアの奥にある、路地裏を歩く。


 薄暗いその路地裏には誰も存在しておらず、少しだけ不気味に感じるそこを、ヴァン達は歩く。


 そして、その路地裏をしばらく歩いたヴァン達の前に、鍵付きで進めない扉が現れた。


 路地裏の奥に現れたその扉で、路地裏のさらに奥に行くことを防がれる。


 ララーシャが持っていた鍵で、その扉を開けた。その扉を開いた先も、路地裏である。


 再び路地裏を歩くヴァン達。


「うふふふふふふふ」


 ララーシャが路地裏の奥にある、少しだけスペースのある広場に到達し、笑顔を見せた。


「なっ!!!!」


 アリシアがその広場の光景を見て、驚きの表情を作った。


「ありえない」


 アリシアが、そう告げる。その光景を見たアリシア以外の者達も、驚いた顔をする。


 ヴァンのその顔は少し、ほころんでいた。


「うふふふふ、素敵でしょ」


 その光景を見せたララーシャが誇らしそうに、そう告げる。

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