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第二百八十八話:残虐性

「オードとナード、助けられないのかな……」


「無理だ、おで達はもう助からない。だから、早く逃げろ。のんびりしてるとニーズランドがやってくる」


 オードとナードは真剣なまなざし。


「すまない」


 ヴァンはオードとナードに背を向けて走った。


 ヴァン達がしばらく走ると少しだけ離れた場所から、二回の爆音が響いた。それを聞いたヴァンは顔をしかめた。


 ペガサスの場所まであと数分の所に到達したヴァン達の前に、とある存在が現れた。


「勇者君、お久しぶりですね」


「!!!!!!!!!!!!!」


 ヴァンが愕然とした表情を作る。その目の前で、ニーズランドが深々と頭を下げている。


「あはははは、はるか昔に僕が殺しそこなった命が、よもやここまで成長してしまうとは」


 ニーズランドはニヤニヤとした表情。


 ヴァンの身体は硬直している。過去のトラウマによるものだ。


「あの日、殺しそこなった命、今こそ僕が終わらせてさしあげましょう」


 ニーズランドは獣のような体勢のまま、ヴァンの方に向かう。


「あいつのスキルにだけは触れるな、爆発させられるぞ!!!!」


 ヴァンが仲間にそう叫び、仲間達も一層身構えた。


「スキル"貸与"」


 ユーリがヴァンに自らの魔力を渡した。


「スキル"闇の化身"」


 そう口にしたヴァン。様子見している余裕はない。


 過去のトラウマ兼魔帝八中将に対して、全力をぶつけるしかないのだ。


 ヴァンの身体に真っ黒なオーラが溢れ、ニーズランドに向けてそのオーラを飛ばした。


「あはははははは、スキル"生物創造"」


 ニーズランドの手に突如、小鳥が現れた。


 "生物創造"はニーズランドに似つかわしくない、命を生みだすというスキル。


「スキル"限られた命の輝き"」


 そのスキルを"生物創造"と組み合わせるニーズランド。


「なんて邪悪な」


 ユーリが顔をそむけた。


 爆弾となった小鳥がヴァンのオーラと対峙し、爆発した。


 付近に爆炎が轟き、"闇の化身"のオーラの威力は相殺させられれた。


「あはははははははははははははは」


 ニーズランドはとても楽しそう。


「お前は、なんなんだ!!!!!!!!!!」


 ヴァンが叫ぶ。


「なんでそんなにも、命を粗末にできるんだ!!!!!!!!!!!!」


 ニーズランドは首を傾げた。


「僕にはそれを大事にする理由が分かりません」


"こういうやつなのよね"


 そんなアリシアの感想。


 残虐性は魔帝八中将の中で間違いなく最凶で、実力もトップクラス。少なくともインヨウやジジジジとは一線を画す強さのニーズランド。


"こいつの攻撃を喰らうと即死。なら回復師のうちが、こいつに対してできることはない"


 サキはそう判断し、走り出した。ニーズランドから離れる方向にだ。


「あははははははははは、君達の仲間、尻尾を巻いて逃げましたね」


 ニーズランドは自らから離れていくサキに対して、とても面白い気持ちになった。


「スキル"生物創造"」


 ニーズランドの前に三つ首のサイが現れた。


「スキル"限られた命の輝き"」


 三つ首のサイは爆弾にさせられた。そして、爆発するタイミングはニーズランドとサイのみぞ知る。


「行け、限られた時間の中で、せいぜい僕の役に立て」


 サイはヴァンの方に走る。ヴァンが顔をこわばらせた。


 ヴァンには闇の化身のオーラが現れている。


 だが、ヴァンは攻撃せず、サイの突進を避けるように動いた。そしてサイの横を抜けて、ニーズランドに向かおうとした。


"パァン"


 爆音が響いた。突進をヴァンが避けたタイミングで、サイが爆発したのだ。


「くっ」


 闇の化身のオーラをまとうヴァンであれど、少なからずダメージを受けた。


「おやおや、オーラでサイを攻撃すれば、自らにダメージはなかったでしょうに」


 ニーズランドが不思議そうな顔でヴァンを煽る。


"ヴァンの性格上無理ね"


 アリシアはそう思う。爆弾にされた可哀そうな生物を攻撃することは、ヴァンにはできないだろう。


 ニーズランドは言ってしまえばヴァンの弱点でもあるその性格を的確に察知し、そこを攻める攻撃を繰り出したのだ。


 ニーズランドは残酷な笑みを作る。

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