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第二百八十四話:スキル"貸与"

 ヴァンが剣を構える。


 知能の低いオーク達だが実力はかなりのもので、一瞬たりとも気を抜けない。


 オードがヴァンに再度こん棒を向かわせる。


 ヴァンがその攻撃を避けつつ、超高速のスピードで勢いをつけた状態で5mほども跳ね、オードに対して攻撃を与えようと正義の剣を向かわせた。


 オードに斬りかかろうとするヴァン。だが、そのヴァンに、もう一つのこん棒が横から向かった。


 ナードがオードを守るかのようにヴァンに殴りかかる。


「正義の盾‼‼‼‼‼‼‼‼」


 ヴァンが"圧倒的な正義感"によりその盾を発現させ、ナードの攻撃を防ぐ。


 だが、ナードの攻撃は強く、ヴァンは正義の盾ごとふっとばされ、建屋にぶつかった。


 ヴァンがぶつかることでその建屋が崩れた。


「ヴァン君‼‼‼‼」


 サキがヴァンの方に走った。


「くっ」


 正義の盾で防ぐことでかろうじて一命を取り留めたヴァンに駆け寄ったサキが、スキル名を発する。


「スキル"オールヒール"」


 ヴァンの傷は治り始めてこそいるが、かなりの深手であるその傷を完治させるには数分かかる。


「レイラちゃん、ユーリちゃん、時間をかせいで‼‼‼‼‼」


 サキのそんな要望。


「……分かった……」


 レイラとユーリが頷いた。


 オーク達はヴァンにとどめをさすために、歩く。


 そのオークの前をユーリが飛んだ。


「私が相手です」


 空を飛ぶユーリをオードとナードが目で追った。


「空を飛んでる。鳥かな」


 明らかに鳥ではないユーリに対してそう告げるナード。


「おで、鬱陶しい鳥もつぶしたい」


 ナードがこん棒をユーリに対して振った。


 ユーリに直撃しそうになるナードのこん棒だった。




「こっちこっち」


 レイラはオードの近くに位置取っていた。


「小さい奴、つぶしたい」


 オードは地面を走るレイラを、こん棒を振りかざして追った。


 そのオードの顔に、果てしない衝撃が響いた。


「ぐお‼‼‼‼‼‼‼‼」


 あまりの衝撃により倒れ、地響きを鳴らすオード。


「きゃはははは、やるじゃない」


 アリシアが褒める。


 ユーリがナードをひきつけ、自らに攻撃させる。そしてレイラは、ユーリに向かうナードの攻撃が当たる場所に、オードを誘導したのだ。


 そのことにより、オードに対してナードの攻撃が当たった。


「大丈夫か、兄ちゃん」


 ナードが心配そうにオードを見る。


「いてぇ」


 オードが頬を抑えながら立ち上がった。


 オードは脳が揺れているのを感じた。


「やりやがったな、ちびすけども」


 オードは怒っていた。


「さて、どうしましょう」


 ユーリが悩む。先ほどの奇襲が成功するのは一度だけだろう。そして、ユーリとレイラにはオードとナードに攻撃する術がない。


 そんな折、声が聞こえた。


「時間を稼いでくれて、ありがとう」


 サキによる治療が完了したヴァンがそう告げたのだ。


「お前はさっきぶっ飛ばしたはずなのに」


 オードがヴァンを見る。


「次は復活できないように、ぺちゃんこにしよう」


 ナードのそんな提案に、オードは頷いた。


「ヴァン様、攻撃のスキルは持っていますよね?」


 ユーリがヴァンに問うた。


「ああ、とっても強力な奴が」


 ヴァンが自信満々に頷く。


「なら、思い切りぶちかましてやってください」


 ユーリがヴァンの背に触れてから言葉を発する。


「スキル"貸与"」


 ユーリはそのスキルでヴァンに、自らの持つ膨大な魔力のおよそ半分程を譲渡した。


 ヴァンに魔力が溢れる。


 そんなヴァンにオードとナードがこん棒を向かわせる。


「スキル"焔の心"」


 ヴァンの身体に真っ黒な業火が灯る。その業火は過去の同じスキルのものとは比べ物にならない程に燃えさかっている。


「……熱い……」


 付近に熱気が蔓延し、レイラがそんな言葉を発した。


「やっちゃえ、ヴァン君」


 サキがそう口にする。


 オードとナードのこん棒が同時にヴァンにぶつかる刹那、ヴァンの黒炎が一層激しく燃え盛り、こん棒を通り道にし、オードとナードの方に向かった。


 オードとナードのこん棒は燃え尽き、そしてオードとナードの身体にも黒炎が衝突し、二匹は吹っ飛んだ。


「あ、熱い‼‼‼‼‼‼‼‼」


「助けてくれぇぇ‼‼‼‼‼‼‼‼」


 黒炎に吹っ飛ばされたそいつらの身体に黒炎が灯り、消えない。


「俺達の邪魔をするな。そして二度と人間を襲わないって約束するか?」


 ヴァンがそう問い、オードとナードは頷く。


「あ、ああ、約束する」


「約束するから命だけは助けてくれぇぇ」


 オードとナードがそう告げた時、そいつらに灯っていた黒炎が消え去った。

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