第二十六話:筋肉質な女性
アリシアは"スキルチェック"によるスキルの確認を続ける。その横に立つヴァンの肩をとある女性が後ろから叩き、ヴァンは振り返る。
スリムかつマッチョである赤髪ポニーテールの女性。筋肉は備わっているが、ごついというわけでもない、細マッチョと評される体型。
年齢はヴァンと同じくらいで黒色のスポーツブラにショートパンツ、くるぶしくらいまで隠れる革製の靴という、露出の多い服装をしている。その腰には財布やら何やらが入りそうな、小型のバッグを装着していた。
「見つけた!!!!」
その女性が口にしたその言葉に対して、アリシアが怪訝そうな顔をした。
「何よ、あんた?」
見る奴見る奴大したスキルを持っていない奴らばかりでイライラしていたアリシアは、その女性のスキルを確認した。
"攻撃力5倍"
"速度3倍"
"体術のセンス有"
"耐久力⚪︎"
"雷の拳"
「こっちこそ見つけた!!!!」
そう口にしたアリシアは思う。
"いいじゃん、こいつ"
「ねぇねぇ、あんたもしかして勇者パーティに入りたいの?」
アリシアが笑顔でその女性に歩み寄る。満面の笑みのアリシアに対して、ヴァンは思った。
"これ、なんか変なこと考えてる時の顔だ"
「ま、まぁそうだけど。ヴァン君って名前だったよね? うちは君のパーティに入れてもらいたいんだ」
ヴァンは、なぜ自らの名前を知ってるんだろうと不思議に感じた。
「なるほどなるほど。稀代の勇者であるヴァンのパーティに入りたいだなんて、お目が高いわね」
"なんか、楽しそうだなぁ"
やたらとヴァンを持ち上げる発言をするアリシアに対しての、ヴァンのそんな感想。
「よし、来なさい」
アリシアの発言に筋肉質の女性はたじろぎながらも、
「お、おう」
と口にし、アリシアの後に続く。そして3人はカフェに入った。ヴァンとアリシアが横並びに座り、筋肉質の女性がその対面に座る。
「では、面接を始めます」
アリシアのその言葉を聞いたヴァンは、緊張してきた。バイトをたくさんしてきたヴァンだったが、幾度となく面接で落とされた過去を持つ。そんなヴァンは、面接が嫌い。
「お名前は?」
どこかから眼鏡を用意したアリシアは少しインテリジェンスな様相をまとい、そう質問する。筋肉質の女性は、背筋を伸ばして座る。
「うちは、サキ レーラだ」
「名前はサキね。あんたの長所は?」
サキは感じる。"面接してパーティメンバーを決めるだなんて、お堅い勇者パーティなんだなぁ"
そんなサキの思考などつゆ知らず、ちゃらんぽらんなヴァンは面接というものに対して、ブルーな感情に陥っていた。
「体力がある。また格闘技を子供の頃にやってたから、武術にも精通してる」
アリシアは思う。"よしよし"
サキはそこから少し、ごにょごにょと言葉を続ける。
「薬学の知識も有してるから、回復薬とかで仲間を回復もできる」
アリシアはその発言を聞き流した。
"あんたに薬学の知識は求めてないわよ。戦闘向きのスキルをたくさん持ってるんだから、それを活かさなきゃ"
そんなアリシアの感想。
「さて、ではあんたは何の職業で、ヴァンのパーティーメンバーに入りたいの?」
おおむねの回答を想定しての、アリシアの問い。
"戦士? 格闘家? 剣士?"
アリシアの推測は当然、その恵まれたスキルを活かす肉体系の職業ばかり。
サキはゴニョゴニョと恥ずかしそうにした後、意を決して言葉を発する。
「うちは回復師として、あんたらのパーティーに入れてもらいたいんだ」
「は?」
アリシアは素で、そんな声を出した。
「なんで回復師なの?」
サキは、ゆっくりと語り始める。
「うち、子供の頃やんちゃでさ、生まれ持ったスキルも良かったから森に行って、遊んでたんだ」
サキはアリシアとヴァンの目を交互に見ながら、言葉を続ける。
「でもある日、強い魔物に襲われて負傷した。何とか逃げれはしたけど、森の中で倒れちゃったんだ。出血がひどく、意識も朦朧としてて、"ああ、死んじゃうんだ"って思った。でもその時、顔は覚えてないっていうか、フードで顔を隠してたからあんまり見れもしなかったんだけど、とある人がやってきて、うちの傷口に手を当てたの」
サキは嬉しそうに話す。
「その瞬間、うちの傷は治ってた。その人はうちのお礼を聞く前にどこかに行ってたけど、うちはその時、とっても嬉しかったんた。命を救ってもらったってだけじゃなく、誰かに優しさをもらったって感じられてさ。だからうちも回復師として、他の誰かに優しさをあげたいんだ」
アリシアはため息を吐く。
"意思も固そうね"
サキのパーティ入りを諦めるアリシアの横で、涙を流す漢がいた。
「いい話だな~」
サキは自らの過去の話に共感してもらえ、嬉しくなった。
アリシアは冷めた目で、そんな様を見ていた。




