第二百六十七話:つながった魔界
ヴァン達とは離れた場所で、サキが階段を登り切った。
そこは開けた直径100mほどの円形の場所となっている。
その円形の場所の中心に、巨人用とでも形容できるほどに大きな鏡が存在している。その鏡の前にナナラナーラが立っていた。そして付近には、鏡の精がふわふわと浮かぶ。
さらに、その大きな鏡の付近に、人形やらネックレスやらなんやらといった、数多の物が存在していた。
「おほほほほほほ、どこまでも邪魔な奴らね」
ナナラナーラがその鏡を見上げながらそう宣う。
「邪魔? この国にとってのあんたのこと?」
サキのそんな軽口にナナラナーラは微笑む。
「おほほほほほほほほ」
「……あの大きな鏡と、その付近にある物達は何?……」
レイラがジト―っとそれらを見る。
「あの大きな鏡は、鏡の国の国宝である、"とある場所へとつながる鏡"というものですわ。あの鏡に人が大切にしている宝物を献上すれば、望む場所につながってくれるの。
でも、長距離かつ長時間その鏡をつなげるには、それだけたくさんの宝物が必要になる。だからこそナナラナーラとインヨウは鏡の精にこの国の人々の大切なものを集めさせていたの」
「おほほほほほほ、とある場所へとつながる鏡よ、この国と魔界をつなげたまえ」
ナナラナーラがそう口にした瞬間、その鏡が光り始めた。
「あなた達が来るのを待ってたの。あなた達にもこの国が魔界とつながる瞬間を見せてあげようと思いまして」
ナナラナーラの言葉に愕然とするサキ達。
「……どうしよう……」
レイラが顔をしかめる。
「閉じましょう、なるべく早く」
「俺達も応戦するぜ‼️‼️」
サザン率いる革命隊の隊員達がいつの間にかサキの後ろに立ち、そう叫ぶ。
「みんな‼️‼️ 鏡の兵士達を倒したんだね」
鏡の兵士と戦っていた革命隊達がこの場にいるということは、そういうことだと理解したサキ。だが、事実はサキにとって都合のいい方に違っていた。
「こいつらもいるぞ」
サザンが指差した方向に、鏡の鎧をまとった兵士達も立っていた。
「え、敵じゃないの? その人達」
サキが怪訝そうな顔をするが、サザンが首を横に振った。
「味方になったんだ」
サザンの言葉の通りのことが起こっていた。
時を少し戻し、サザン達革命隊と鏡の兵士達との戦いのシーン。
「お前ら、この国の兵士だろ? ならばなぜ、この国に蔓延する悪に加担する?」
サザンが自らのスキルで獣になった状態でそう叫んだ。鏡の兵士の一人が言葉を発する。
「この国を守るためだ‼‼‼‼‼‼‼‼」
そう叫んだ鏡の兵士。元々鏡の兵士は皆、喋れなかった。
だが今、喋れるようになった。インヨウのスキルでありナーレシアも受けていたインヨウ達に都合の悪いことは喋れなくなる呪いを、鏡の兵士達も受けており、そのことにより喋れなかった。だが今、ヴァンとの戦いでインヨウが弱り、兵士達にかかっていた呪いも弱まって、喋れるようになったのだ。
だが、極限状態の今、兵士達はそのことを説明する暇もなく、サザンと喋る。
「俺達だってインヨウとナナラナーラになんか従いたくなかった。だが奴らの指示に従わねば、この国を魔界とつなげると言われてたんだ。だから俺達は、この国を魔界とつなげないために、奴らに従っていた」
サザンがやれやれといった表情をした。
「おい、革命隊達、攻撃をやめろ‼‼‼‼‼ 鏡の兵士達もだ‼‼‼‼」
サザンの言葉により争いがいったんおさまった。
「全て説明する」
サザンはナナラナーラ及びインヨウがもうすぐこの国と魔界をつなげるであろう事実を説明し、それを聞いた鏡の兵士達は激怒した。
「俺達は騙されて、都合よく使われていたということだな」
「ああ、そういうことになる」
サザンが断言した。
「許せない」
鏡の兵士の一人がそう告げた。
「ああ、許さなくていい。君達も俺達も立場は違うが、この国を憂いている同志だ。今からでもともに、この国を守るためにナナラナーラ達を倒そう」
「分かった」
革命隊達に鏡の兵士達が加わり、サキ達の後を追うようにレイラがつなげた鏡を通って、その先にある階段を登った。
そうしてサキ達の側に革命隊及び、鏡の兵士達が到達したのだ。
「有象無象がうろちょろと」
ナナラナーラがそうほざく。
だが、ナナラナーラの背後にある鏡から、魔族が数体飛び出してきた。
とうとう、魔界に存在している魔族がこの国へ入り込み始めたのだ。
「早く、あの鏡を閉じないと」
サキがそう告げ、臨戦態勢をとった。




