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第二百五十三話:普通に過ぎる日

 翌日である決戦の前日は普通に過ぎる。一応修行はするが、身体をほぐす程度。無理に修行して体がガチガチではお話にならない。


 だからこそヴァン達はその日、身体がなまらない程に適度に午前午後修行した。そして夜、仕事が終わったミラと合流し、革命隊の隠れ家に向かう。


「明日だな」


 サザンが静かにそう口にした。


「うん」


 ヴァンが頷く。


「明日の昼、宿屋に向かう。全員で鏡の中の世界に入り、そして、その世界で我ら革命隊が先陣を切り、雑兵を倒す。君達は本丸であるナナラナーラを倒してくれ」


「ああ、分かった」


 ヴァン達はサザンの作戦に同意する。そして、その日は解散となった。


 そんな感じで決戦前最後の日は、いたって平穏に終わった。



「よし、行くぞ」


 次の日、ヴァン達の宿屋の部屋にたくさんの者達が押し掛けた。


 むさい男達で明らかに定員オーバーの宿屋の一室に熱気がこもり、アリシアが嫌そうな顔をした。


 革命隊の隊員達に見られながら、レイラが鏡に触れる。


「……すごい魔力だ……」


 レイラはその鏡に触れた瞬間、その鏡に灯る魔力の主の圧倒的な実力を理解した。


 その魔力を身体に入れたレイラに光が灯る。それほどに、すごい魔力であった。


「……"ようこそ、鏡の世界へ"……」


 レイラがヴァンが夢?のような光景で聞いたそのスキル名を口にした。


 その瞬間、その鏡が光った。


「……つながったよ……」


 レイラが嬉しそうな顔をした。


 その光る鏡に、サザンが触れた。


「まずは俺達革命隊が入る。君達は俺達の後に続いてくれ」


 そうして鏡の中に進んだ革命隊達。一気に静かになった宿屋の一室。


「俺達も行こう」


 ヴァンがそう口にし、その鏡の中の世界に進んだ。




「前来たところではないな」


 ヴァンは、過去に不思議な女性に連れてこられた場所とは違うことを理解した。


 いたるところに鏡が存在している厳かな城の中の廊下と表現するとしっくりくる、その場所。


 鏡は全て反射しておらず、鏡の国の至る所を映している。

 

 ヴァンは、革命隊の者達が戦っているのを見た。


「うふふふふふふふふ、ようこそ」


 その戦いの渦中、真っ赤なドレスを身に着けたナナラナーラが笑った。


 革命隊が戦っているのは、赤ん坊のような様相に羽が生えた形状をしている、"鏡の精"と呼ばれている存在。その鏡の精が革命隊に対して噛みつき攻撃を繰り出している。


 その鏡の精達の奥に、ナナラナーラが立っていた。


「うふふふふふ、あなたたち、遠慮はいらない。みんな殺してあげて」


 ナナラナーラが鏡の精に対して、そう命令した。


 革命隊は屈強な男達であるが、鏡の精の数は革命隊の三倍はいる。


 革命隊は剣を持ち、鏡の精に斬りかかるが、その攻撃をひらひらと避けるそいつら。


「くそ……‼‼‼‼」


 革命隊は歯を食いしばる。


「助太刀しよう」


 ヴァンはそう言うが、革命隊のリーダーであるサザンが首を横に振る。


「いや、君達はナナラナーラを倒してくれ」


 サザンの言葉にヴァン達は標的を変え、ナナラナーラを睨む。


「うふふふふふ、そうそう。わたくしを捕まえなきゃね」


 ナナラナーラはランタンの灯りが照らすその場所をヴァン達とは逆方向に、走り出した。その後を追うヴァン達。


「待て‼‼‼‼」


 ヴァンが叫んだ。


 その廊下を走るナナラナーラはとある扉から先に進んだ。ヴァン、サキ、レイラ、ミラ、アリシアもその後を追う。


 扉を進んだ先のその場所には玉座があり、その玉座に座っている存在がヴァン達を見ていた。


「インヨウ‼‼‼‼」


 体の左右で色が白と黒で別れている魔族が、ヴァン達を見ていた。


「ふふふふふふ」


 感情の無いはずのインヨウが笑う。


「どうしてお前が?」


 理解できないヴァンが問うた。


「この鏡の国の影なる支配者だからだよ」


 インヨウは静かにそう告げる。


「ならお前が、この国と魔界をつなげようとしている元凶だな?」


「うふふふふ、インヨウ様とわたくしが元凶ね」


 ナナラナーラがほほ笑んだ。


「なら、あんたら二人を倒せばいいってことだよね?」


 サキが己の拳と拳をぶつけ合わせ、威嚇する。


「まぁ、そうだね」


 インヨウが玉座から立ち上がって、笑う。


「僕達を倒せるならね」


「倒せるさ」


 ヴァンは余裕の表情。


「そうか。なら、戦ってもいけど………」


 インヨウはそう言いこそするが、即座に襲ってはこなかった。


「でもさ、その前にちょっと、お話しようよ」


 そんな、インヨウの不思議な提案だった。



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