プロローグ:裏ボスの少女、旅に出る②
「だいたいさ、あんた変身前からスキル持ちすぎなのよ!! なによ、"攻撃全体化"に"即死系攻撃無効"、"状態異常無効"、"3回連続攻撃"、"闇の心"、"漆黒の骸骨"って。第一形態でそんだけ持ってりゃ、勇者なんざ、勝てないわよね」
アリシアは、叫び続ける。
"疲れないのだろうか?" ガラムハザールは、そう思った。
「アリシア様には及びません。"攻撃即死化"、"魔力無限"、"全属性の呪文無効"、"5回連続攻撃"、"闇の化身"、その他数えればきりがないほどの、数多のスキルを有する貴方だ」
「そうね!! 全く使ったことのないスキルばっかりだけどね!! あんたのせいで、戦うことすらないんだからね!!」
アリシアは、頭を抱える。
「一応最後に聞いてあげるけど、わざと負けてあたしの出番を作ってさしあげましょうって気は……」
「毛頭ございません」
ガラムハザールの断言。
「ああ、そう!! そうなのね!! そんなふざけた思考なのね!! ならこっちにも、考えがあるわ!!」
アリシアはガラムハザールに対して、背を向けた。
「どうするつもりでしょう?」
「きゃははははは、あたしが、勇者を連れて来てあげる。あんたを倒せる、とても優秀な勇者様をね」
ガラムハザールは、焦った表情を見せた。
「貴方は裏ボスだ。その存在を人間どもや下級の魔族、そしてあの憎き神であるジャバラに知られるのは、得策ではないでしょう。それが分からぬほど愚かな貴方では、ないはずだ」
「きゃはははは、もちろん分かってるわよ。だから、あたしの身分をばらさないようにして、勇者を見つけてきてあげる」
アリシアは自信満々な表情で、笑う。
ガラムハザールは、頭を抱えた。そのしぐさは、魔王に似合わなかった。
「単刀直入に申し上げるが、あまりいいイメージが湧きません」
「大丈夫大丈夫、簡単よ。きゃははははははは」
アリシアは、のんきそう。ガラムハザールは相も変わらず、曇った表情。
「よし、そうと決まれば、善は急げね。それじゃ、バイバーイ。次会う時にはあんたを簡単に倒せるほどの、立派な勇者を連れてくるわね」
そこまで告げたアリシアが、嫌な笑みを浮かべる。
「でもその勇者はあんたを倒した後であたしに倒され、その魂を喰われてしまう定めなんですけどね、きゃははははははは」
そう言い残してアリシアは、まるで瞬間移動のようにガラムハザールの前から消え去った。
先ほどまでのうるさかった魔王城とは打って変わって、静寂に包まれた。ガラムハザールはあいも変わらず、苦虫を噛み潰したような表情を作っている。
「クソガキが」
ガラムハザールは、ただただそう告げた。
ガラムハザールの頭上に隕石が現れ、それをガラムハザールが先ほどと同じように、右手で受け止めた。その状態で、ガラムハザールは思う。
"きっと、めんどくさいことになる"と。