第百五十七話:二つ目のダンジョン
ヴァン達は移動し、二つ目のダンジョンに到達した。ヴァン、エリーラ、レイラ、サキ、アリシアはその穴を見た。
「たくさんの人を連れてきた方がいいのかな」
ヴァンがそう口にする。
第一のダンジョン内の試練は、5人のクリアが必須であった。今回も同様にクリア必須人数が決まっているのであれば、たくさんの人で入ったほうがいいのだろう。
「ふふふ、そうですね。だから、この国の兵士達にも来てもらっております。おそらくもうしばらくすると、到達するでしょう」
エリーラの言葉通り、屈強そうなエルフの兵士達が十人ほどこの場所に現れていた。
「彼らはこの国の精鋭です。ダンジョン内で足手まといになることはないでしょう」
「あ……あの、エリーラ様」
兵士の一人がおずおずと言葉を発した。
「なんでしょう?」
「確か、入れるようになったダンジョンは金色に光ると聞いたのですが?」
「ええ、光っているでしょう?」
確かに光っているダンジョンを見るエリーラ。
「いえ、我らにはそのダンジョンが光っていないように感じるのですが」
「え?」
ヴァン達はみな、金色に光って見えている。だが兵士達は、そうではないらしい。
「どういうこと?」
ヴァン達には理由が分からない。しかし、光っているダンジョンにしか入れないというルール上、兵士達は入れないのだろう。
「分かりました。では、私達で向かいますので、皆さんは国の警備に戻ってください」
「はい」
そうして兵士達は去っていき、ヴァン達はそのダンジョンに飛び込んだ。
「…………相変わらずじめじめしてるね…………」
レイラが嫌そうにそう口にした。所々松明に照らされるダンジョンの中を歩くヴァン達。
ただただ歩く。かなりの時間歩いたが、一向にゴールと呼べる場所には到達しなかった。
前回のダンジョンとは違い一本道ではなく、曲がり道やら分岐路やらで複雑な今回のダンジョン。
分岐路では一度通った道が分かるように岩で壁面に傷をつけ、印を残して進んだ。だがまったくゴールにつかず、歩き続ける。
アリシアは思う。
"こいつら、早く気づいてくれないかしら?”
アリシアはフワフワと浮かんだ状態でヴァン達について行くが、その移動は無駄であることを理解していた。
「あーーー、どんだけ長いダンジョンなの‼‼‼‼」
普段冷静なサキがそう叫んだ。
もう数時間歩いたが、ゴールに到達しない。
「どうしましょうか。このまま歩いていてもゴールに辿り着ける確証がありません」
前回のダンジョンとは違って道が一本ではない今回のダンジョンでは、いくら歩いてもゴールに近付いているのかすら分からない。
「ちょっと考えよう」
リーダーであるヴァンがそう口にしたが、ヴァン自体は何も解決策を思いつかない。
「問題は、なんでゴールにつかないかってことだよね」
サキが状況の整理を始める。
「可能性その一、はるかに長い道だからまだついていない。可能性その二、道をそもそも間違えてる。可能性その三、そもそも根本的に何かがおかしい」
サキのその発言に、ヴァン達は考える。
「もしも可能性その一の場合は、このまま頑張ればゴールにたどり着ける可能性はある。でもあとどれぐらいでゴールかは分からないから、今日一日あってもゴールできるかの確証はない。
可能性その二の場合は、もっと状況は悪い。このままいくら進んでもゴールにはたどり着けない。可能性その三の場合はさらにさらに状況は悪い。何がおかしいのかから調べる必要がある」
「どちらにせよ、このまま進むだけではだめってことですよね」
エリーラが頷く。
「…………あの…………」
レイラが意味ありげに言葉を発した。
「…………そう言われると、壁から魔力の気配、する…………」
「どういうこと?」
リーダーではあるが、全く話についていけてないヴァンがレイラの言葉に疑問を呈した。
「…………この洞窟の壁……スキルの影響を受けてる………気がする………」
ヴァンはいまいちどうすれば良いのかが分からなかったが、サキが言葉を発する。
「ヴァン君、壁に向かってスキル"焔の心"だ」
サキの言葉の通りのことをヴァンが実施した。
黒炎が壁に当たった瞬間、その壁が燃え、そして開けた場所がヴァン達の前に現れた。
「きゃはははは、やれやれ、やっと気づいたか」
アリシアはこれ以上移動しなくてよく、安堵した。




