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第2話 モルドとルエルの出会い


 俺は他の魔族とはそりが合わなかった、人と魔族のハーフというのもあったが何より魔族の人を家畜とする思想が俺には合わなかった、恐らく人間だった母の遺伝が強かったのだろう、その所為で他の魔族からいじめられた事もあった。


 幸い俺には力があったから虐めて来た奴らは返り討ちにしまくった結果、俺にそんな事をする奴はいなくなった。


 ただ今度はその実力を四天王が一人『氷結眼ミリオネ』に買われ四天王の穴埋めにスカウトされてしまった。


 俺は四天王の中では最弱だったが、前線で戦うのを避けるために知略を練るようにした、やりたくない戦争はあれこれ言い訳して止めたり。


 そんな事していたら裏切りを疑われるだろうが人間側が勝手に内輪もめして軍が瓦解、こっちは大した損害も出さずに国を滅ぼせた、とか、評価される結果になり『知将』と称えられる様になった。


 そんな中だった、危険な芽を探しだし全て排除すべしと四天王が一人『雷鳴殺ガルバド』が提言しその役目に相応しい奴はということで選ばれたのが俺だった。




 そしてある情報をもとにルエルという凄腕の魔法使いが住むという村を近くの山から見下ろし、そしてその実力に感服した。


「ルエル――素晴らしい魔法使いだ」


 10歳になったばかりのはずな彼女の魔法は既に大人顔負けの実力を持っていた、間違いなく彼女は近く現れる勇者の仲間となるだろう。


「......ふむ」


 考える、俺は人殺しを出来るだけ避けてきたとはいえ殺しはした事がある。だがなんやかんや子供を殺した事はなかった。


 報告すれば彼女もこの村も消える。


「......」


 そうしたら彼女のあの虹の炎も見えなくなる?


 そうだ、潜入してから考えよう。



 ■



 偽装魔法で人間になりひそめる、何度か潜入した事はあるし俺と知らなければ俺は完全に人間に見えるはず。


「旅人さん、その足の傷は?」

「えぇちょっと魔物に襲われまして......お金は払いますので少しの間この村で過ごしても?」


 偽名としてズードを名乗りとりあえず、少し過ごしてからどうするか考える事にした。





 ズリ村はごく平凡な村だ、特筆すべきものがない。

 村の者からも疑われず、親交を築けているし問題はない、あるとすれば......


「隠れても無駄だ、ルエル」


 森の茂みにいる者に声をかける。


「――すごいッ村の皆だったら絶対バレないのに!」


 ルエルが思った以上に俺に懐いて来た事だろう。


「外には強い人が沢山だ、お前みたいなのはウヨウヨいる」

「そうなんだッ外の事知らないから、あたしはてっきり自分が最強かと思ってた!」


 しまったな敵に塩を送ってしまった。


「ねぇねぇ、あんたは強いんだからあたしに魔法を教えてッ」

「いや、それは......」

「教えて教えて――」


 駄々をこねて来る、どうしたものか......そうだ。


「虹色の炎の魔法を見せてくれたら手伝ってやろう」

「そんなのでいいの?いいよ!」


 彼女の手から赤い炎の玉が現れる、そこから色が混じり合い七つ色の炎が出来上がると彼女の手から離れていく小さくゆらゆらと揺れながら俺に近づいていく。


「当たっても平気なのか?」

「平気よッというか触れて貰わないと困るわ」


 触ると虹色の輝きが俺を包み込む、暖かく心が埋まっていく。


「これは回復魔法?」

「そう、おばあちゃんが教えてくれた魔法すごいでしょ、愛の魔法なんだって、すごいのよ全部治すんだから」

「あ、あぁ......」


 とても暖かく幸せな感情が溢れて来たふと涙が溢れそうになったことに気づいて腕で拭いた。


「大丈夫?何か失敗しちゃった?」

「大丈夫......気にするな......約束だったな、良いだろう教えてやる」

「ホントッ!?嬉しいッわーいわーい!大好きよズード!」


 彼女の事は殺せない。


 人間に恋をした愚かな父、どうやら血は抗えないようだ。



 それから近くに潜んでいた配下にはこう告げた。

『ルエルは小童で魔法使いとして二流、魔王軍への脅威となりえず殺す必要なし』



 ■



 偽装の為の傷も一週間ほどたって癒えてきたころ。


「ねぇ......その傷が治ったら出て行っちゃうの?」

「そうだ、元々その予定だった」


 ルエルは名残惜しいのだ、最近は特に俺に執着してきていたし同年代の子供がいないから余計寂しいのだろう。


「......」


 この出会いが今までの苦労の報酬だろうか、父と母は俺を遺して自殺して、そこから四天王にまで成り上がったのだ、相当すごいことだと思う。


「ここに残ってくれたら......あたし、あんたと――」

「――それは駄目だ」


 何を言おうとしたのか、わかってしまったから。


「お前には良い人が見つかる、こんな良い子は外にもはそうはいない」

「だったら着いてくッ」

「駄目だ、俺は危険な場所に行ったりする、今までの様に守ってやれない」


 そして結局、俺はルエルとズリ村に別れを告げた。

 これで良いのだ、そう思いながら。



 ――そして後日、ズリ村の襲撃が行われたという報を受ける

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