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第1話 煉獄卿モルド


 魔族と人間の長い戦いの歴史......それは勇者によって終わりを迎えつつある。


「これで終わりだ――『煉獄卿モルド』」


 勇者パーティ3人よる快進撃は魔王軍を瞬く間に壊滅させていき、ついに魔王城まで侵入を許していた。


「よくここまでたどり着いたものだ......だがその快進撃も此処まで」


 魔王軍最高幹部である四天王のうち3人は全て勇者により倒された。


「残念ながら魔王様に会う事もなく貴様らは無様に死ぬのだ」

「そうはならないッ貴様を倒し、魔王を倒して世界を平和にする」


 勇者が聖剣を向けてきた、黒い髪にかつてはあどけなさも残していた、だがこの時には既に消えていた。


「俺たちは魔王を倒す、皆行くぞッ!」


 鼓舞するこの少年こそが勇者マルス。


 そして僧侶の女サリアと魔法使いルエル


「さぁかかってくるが良いッ」





 ――と、まぁ威勢のいい事を言ったもののが俺が勝つのは難しい。


 何せ俺は四天王の中でも最弱、今まではあれこれと言い訳して生き延びて来たに過ぎない、それが背びれ尾びれついて知将とか言われるまでになっていた。


 今も押されている、知将だなんだと担ぎ上げられながら期待にどうにか応えて来たが......


「あんたはここで殺す」


 赤いショートヘアーをした魔法使いルエルは怒りの表情を崩さず炎の魔法で攻撃してくる。


「ふ、流石だなルエル」

「――ふざけないで」


 俺とルエルという魔法使いには因縁がある。


 かつて、危険な存在となりうる者の候補として観察していた時に見せられた、虹色の炎の魔法、あれからというもの彼女の全てが俺の心を射抜いて見せた。


 だから彼女を有象無象の小童として報告した。


 それがたとえ将来的に危険な存在になるとわかっていても、魔王軍への裏切りだとしても――


 だが、その結末は最悪な結果を招いた。


「ふん――」

「くッ」


 そんな事を考えていたからか、マルスの猛攻への反応が遅れた。


 そして――


「マルス様ッ」

「ありがとう」


 どうにか攻撃を当ててもサリアの回復により無意味になり、こちらが劣勢になっていった。


「ぐわッ」


 ついに片膝をつく。


「終わりだ『煉獄卿モルド』ッ」


刃が俺の腹を貫く。


「ガハッ......」


駄目だ、このままじゃ死んでも死にきれない。


「待てッ......」

「命乞いは聞かない」


 違う、これは俺が今まで胸に秘めていた事を告げたいのだ、これを隠したまま死ぬしにたくはない。


「ルエル、貴様に言いたい事があるッ!」

「......?」


 突然の事に動揺したのだろうルエルは困惑する。


「初めて見た時、虹の炎を見た時からお前に惚れてた」

「......は?」

「ルエル、結婚してほしい」


 今更隠すことはないだろう、知将だなんだと担ぎ上げて来た奴らはさっさと死んでしまったんだ。


「どういうつもりだ、貴様、ルエルにしたことを覚えていないとは言わせないぞ」


マルスは剣を向けて来る。


「己を偽るのを辞めたまでだ......ルエル返答は?」


 ルエルはというと――


「――ふざけないでッ!あんたが何をしてきたかわかってるの!?あたしを騙してズリ村を滅ぼしてッ!今の今まであたしが何を思って生きて来たかわかる!?」


 だろう、と思っていた。あんなことをしたのだ殺されても文句は言えないし、俺もその覚悟を持って告白した。

 だが、殺すにしてもこれだけは知っていて欲しい。


「お前の言いたい事はわかる、だが......俺はお前の故郷を滅ぼしてはいない」


 例え信じられなくとも、これだけは知っていて欲しい。

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