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エルフとドワーフ

迷宮から出て、公爵邸に戻ると今日は、お姫様は俺と残り、エリーンがどこかに向かっていった。その後姿を見送りながらお姫様が俺に話しかけた。

「すまんのう。」

あ、やはり俺は処分か!逃げないと。

「レベル20以上の階層だと、エリーンとわらわだけではちと荷が重い。公爵家の使用人で誰か来てくれんかと探していたのじゃが。」

首はつながったみたいだが、お姫様は涙目でこちらを見ている。どうしたんだろう。

「なかなか強い者は忙しいようで来てくれないのだ。なんとか前衛を二人みつけたので、二人を加えて五人で明日からはレベル上げになる。」

俺はうれしくて泣きそうになった。人探しでふたりは色々手を尽くしてくれていたのだと知って。

「お姫様、ありがとうございます!こんな俺のために 頑張っていただき。一生忠誠を尽くします。」

泣きそうになった俺を見て、お姫様は少し視線を逸らして言った。

「うーむ、助っ人を見てその言葉を取り消さないことを期待するぞ。」

どういうこと?二人の間が微妙な雰囲気になったところに、エリーンが二人を連れて戻ってきた。エルフとドワーフのようだ。近づいて来るにつれて、二人の顔が見えるようになった。俺は興奮した。二人とも凄くかわいい。感謝の言葉を取り消すはずが無い!


HP 160 MP 450 知力 440 体力 155 腕力 158

素早さ 310 運 290 森の民 レベル 30 スキル なし 特技 なし

身長 170 体重 50 B 90 W 55 H 85 雌 20歳


金髪碧眼だ、地球で言うと北欧の美人という感じだ。こういう亜人だと鑑定2がありがたく感じる。いろんな意味で。エルフはMPや知力が凄いな。しかしスキルがないならどうやってMP使うんだろう。


HP 800 MP 80 知力 82 体力 810 腕力 820

素早さ 77 運 82 山の民 レベル 30 スキル なし 特技 なし

身長 155 体重 60 B 95 W 65 H 95 雌 18歳


ドワーフはくりっとした目とおでこ広くてがかわいい。黒髪で肌は褐色だが光っている。地球だとラテン系美人だ。ドワーフだが、髭はないな。典型的な前衛キャラだな。

鑑定しながらにやけた顔をしている俺に怪訝な視線を向けながらエリーンが二人を連れて近づいた。

「背の高い方がモウル、低い方がペルカです。こちらの人間がショウです。」

エリーンが短く紹介した。なんかそっけないな。

「どうも、モウルです。」

エルフは視線もこっちに向けずに言った。

「あ、わはし、ペルカです。いっしょうえんめいがんばいます。」

こっちは手を握ってきたが、なんか言葉がおかしい。

「ふたりは最近レベル30になって、この島に渡ってきました。まだ若いので今はお屋敷で色々と修行中です。」

「俺はショウと言います。よろしくお願いします。今はお姫様の従者として働いています。」

「顔合わせもできたので、明日の朝迷宮9時ですので、みなさん遅れないように集まってください。」

ふたりは頭を下げて去っていった。お姫様も何か言いたそうだったが、飛び去った。残された俺にエリーンが声をかけた。

「お嬢様からは強い助っ人を準備して欲しいと言われていましたが、新米の出来の悪いのしか準備できませんでした。新米でも有望なのはお兄様のパテに取られてしまってるので。」

良くわからんが公爵家も色々むづかしいようだ。俺は美人だから構わないんだが。

「モウルは賢いのですが、スキルや特技が使えないので、森の民として認めてもらえていません。この島に来る森の民は少ないのですが、彼女は魔法がダメなので前衛として生きていこうとしています。そういう生き方をする森の民は少ないので悩んでいるようです。ペルカはやる気だけは人一倍あるんですが、空回りが多くて、迷宮に連れていくパテが少ないのです。そのため働きが安定しません。今日までみたいには行かないと思いますので、明日からは気を引き締めて下さい。」

「21階層からはどんな魔物がでるのですか?」

「大蜘蛛と、アイスウルフと熊ですね。大蜘蛛は一体で出てきます。ダメージは20ほどですが、毒が強くて、一分で100ほどのダメージを受けます。なのでショウさんにタゲを取ってもらいます。」

うん、もし強い毒にあれが効かないなら死ぬな。

「アイスウルフが一番厄介です。火魔法に耐性があるので、お嬢様の攻撃はあまり効きません。一度に最高三体出ます。なので前衛三人で一体ずつと対峙する必要があります。一人がしくじると戦線が崩壊します。大きなダメージを受けたらすぐに回復の必要があります。アイスウルフのダメージは通常20くらいですが、クリティカルを持っているのでその時はダメが80くらいになります。モウルが喰らうと危ないです。なのでモウルが危険になったらショウさんがモウルにHP薬を飲ませて下さい。」

お姫様を危険に晒すことはできないから当然だな。

「熊も一体で出てきます。これはHPが高いので長期戦になります。ダメも大きいので私とペルカでタゲを取り、モウルには横にまわってもらいます。ショウさんはもし誰かが危険になったらHP薬を飲ませて下さい。」

これは本当に迷宮の戦いになるんだなと思った。

「ひとつ提案があるんですが。」

「なんですか?」

「俺はボウガンを持っています。後ろから使っても良いですか?」

「ボウガン、ですか?」 

おれはリュックから折り畳み式のボウガンを取り出し組み立てエリーンに渡した。

「最初に見た、弓のようなものですね。」

「そうですね。これが矢です。」

「金属の矢ですね。威力が大きそうですね。通常のエンチャント無しの矢だとエルフが使って、良くてダメージ50くらいです。でも金属の矢は見たことがありません。使ってみる価値はあるかもしれません。」

「矢は10本しかないんですが。」

「それなら、アイスウルフ戦で誰かが危険な時に使って下さい。」

「わかりました。」

エリーンとの仲が深まったような気がする。向こうはどう思ってるのか知らんけど。


翌朝、7時前には五人が迷宮前に揃った。昨日とは違いモウルとペルカはしっかり装備を整えている。モウルは高速戦闘向けの皮の鎧、鉄の剣、皮の兜、ペルカは鉄の斧、鉄の盾、鉄の鎧、鉄の兜、重そうだ。言い遅れたが、俺も鉄の鎧と兜を一応身に着けている。あまり関係ないけど。


21階層以降でレベル上げをする時は、普通は迷宮内で泊まるようだ。主道を急いでも21階層まで片道5時間はかかる。日帰りでは効率が悪いな。今回は初めてのパテなので一泊の予定らしい。エリーンの背中の袋はいつもより膨らんでるし、ペルカも大きな袋を背負っている。20階層まではもう経験しているので気楽な感じだ。11階層以降は俺が先頭を歩き、一度蛇に齧られたが、毒が効かないので、少しモウルとペルカに見直してもらえた。


実は昨日の夕方、二人と別れ際にペルカに魅了をかけた。レベル上げの間だけのメンバーのようだが、仲は良いに越したことはないしな。もともとペルカは友好的なので違和感も少ないだろう。明日にはMPが回復してモウルにも使える。

「しょうさんは、おととなのに、おひへさまの、しゅうしゃなんて、すこいてすね。」

ペルカが話しかけてくるが、やはりわかりにくい。

「ペルカさん、山の民の言葉で話して良いですよ。」

「え、ショウさんは私たちの言葉がわかるんですか!すごいですね。私なんかもう3年も空の民の言葉を勉強していますが、まだまだです。」

こっちだと、よくわかる。

「男の従者はめずらしいの?」

「貴族の従者が異性なのは、あまり聞いたことがありません。凄い人なんですね。」

いや、単に魅了を使っただけなんだが。

「ペルカさんもそのリュックすごいね。俺なんか持てないよ。」

「荷物運びくらいしか、お役にたてないので。」

「いやその斧とかすごいじゃない。」

「当たればそうなんですが。」

当たらないのか!

「空の民は接近戦が苦手なので、多くの同胞がこちらの島に来て働いています。ワープゲートに行く際も同胞4人で前衛で壁を作るというフォーメーションが多いのですが、私の攻撃はなかなか当たらなくて、いつも先輩に怒られてます。」

エリーンが言ってたのはこれなんだな。

「それじゃ、迷宮にはそれほど行ってないの?」

「そうですね。お屋敷で洗濯や掃除をしてることが多いですね。だから今回のレベル上げではお役に立ちたいです。」

キラキラした大きな瞳でこちらを見つめる表情の好感度は抜群だ。家政婦扱いのようだが。

「ペルカはどこでレベル上げやったの?」

「私は出身の島の迷宮でレベル上げをしました。そこはこちらの迷宮みたいに毒のある魔物はいないので、時間はかかりましたが、危険は低いですね。」

「島によって迷宮の魔物は違うんだ。」

「そうですね。おそらくこの島ではこちらの迷宮が一番厳しいと思います。私の島では迷宮は3つでしたが、こちらは4つもありますし。」

「え、迷宮ってそんなにあるの。」

「はい、空の民の島ではそれぞれ貴族が管理しているようです。」

いろいろ知らないことばかりだ。


昼になって20階層までたどり着いた。入り口には10階層にもあった、ゴミは持ち帰りましょう、の看板があった。これしか読めないが。

「ここで昼ごはんにしましょう。午後は21階層でレベル上げの探索を行い、今晩はここで野営をします。」

エリーンがてきぱきと指示をだす。

「夜は魔物がでないんですか?」

「夜でも魔物は出ます。なので緊急でない限り野営は10の倍数の階層で行います。普通は複数のパテが野営をしているので、交代して見張りを行います。もし魔物が現われても見張りで対処します。」

なるほど、ちょっとしたセーフポイントなんだな。

「トイレはどうするんですか?」

「10の倍数の階層には深い穴をいくつか掘ってあるので、そこに捨ててください。」

それは捨ててもいいんだ。

食事の間にフォーメーションを決めた。探索中はエリーンとペルカが前衛でモウルと俺が後ろを進む。お姫様はエリーンの肩の上だ。三体出た時はモウルが前衛の真ん中に上がる。お姫様は左のペルカ上空から攻撃する。おれは矢を撃つときは右のエリーンの背中に飛び乗って上から狙う。地面だと射線が味方と重なり危ないからだ。


食事が終わるといよいよ21階層だ。昨日までと違いメンバーには笑顔がない。本来ならレベル30が四人いると21階層は楽勝らしいが、このパテはそうではないらしい。俺もあまり役にたたないが、頑張ろうと奥歯を噛みしめる。エリーンが21階層の本道を外れ脇道へと先導する。脇道といっても幅五メートルはある。曲がりくねっているが、更に枝のような細い道が所々で分かれている。しかしエリーンは広い道を進み続ける。二十分ほど進むと来た道を引き返し始めた。

「この道を往復するの?」

「そうですね。大きな脇道はエンカウンター率が低いので、通常なら前後を囲まれる危険性を下げることができます。効率は悪いですが安全です。」

「そうなんだ。通常ではないこともあるの。」

「稀にですが、魔物発生率の確率変動が起こり、大発生することがあります。」

そうかここでは確率変動はドル箱じゃなくて、命の危機なんだな。

「もしそうなったらどう対処するの?」

「お嬢様は空中に避難していただき。我々は全力で本道に逃げます。」

うーん、そうならないことを祈ろう。

「それは何?」

モウルが俺のボウガンを指さして、聞いてきた。ため口かよ。まあ、ゲームではだいたいエルフは人間を見下してる。

「ああ、これは弓だ。」

「触っても良い?」

俺は黙ってボウガンを渡した。

「ショウはこれが使えるの?」

モウルはボウガンを触っていたが首をかしげて俺にボウガンを返してきた。かわいいから許そう。

「ああ、普通の弓より使いやすい。」

俺が矢をつがえて、見せようとしたら、モウルがそれを止めた。

「待って、その矢見せて。」

モウルは矢を受け取ってしげしげと見て、触った。

「これは金属なのに軽いのね。こんなの見たことない。役にたつの?」

「それはわからないな。使ってみないと。」

「役に立つなら、私も欲しい。」

「そうだな。」

モウルの自由な発言に俺は思考が停止した。


本道へもどる途中に横道から大蜘蛛が現われた。2メートルはあるな、怖い。俺が後ろから走り出して、大蜘蛛の前面に立った。モウルとペルカは大蜘蛛の後ろに回り込んだ。エリーンは少し下がった。


HP 3000 MP 0 知力 100 体力 300 腕力 200 

素早さ 300 幸運 150 レベル 21 スキル なし 特技 毒付与


蜘蛛は足が8本だが、毒付与できるのは前の2本だけらしい。なので側面の二人は毒の心配はない。ペルカは斧を振り回してるがあたる気配がない。大蜘蛛の後ろ足でちょっとずつ削られてる。モウルは足の攻撃をかわしながら剣で切り付けてるが、一度で30くらいしかダメが入らない。俺は防御に専念して盾と剣で大蜘蛛の攻撃をかわしているが、結構速い。早々に一撃を喰らった。ダメは30貰ったが毒は大丈夫そうだ。その状況をモウルとペルカが口を開けて見ている。手動かせよ!お姫様のファイアーボールは着実に大蜘蛛のHPを削ってる。五分くらいで大蜘蛛からもう一撃喰らった。やばいな、と思っていると、ついにペルカの斧が当たって大蜘蛛は倒れた。大蜘蛛が爆砕すると後には何かが残った。あれドロップってあるの?

「おお、魔石が落ちたな。」

「これはラッキーてふね。」

ペルカが魔石を拾い、手早くエリーンの袋に入れた。ペルカの妖精語はわかりにくい。

俺が怪訝な顔をしているとエリーンが説明してくれた。

「20階層まではドロップはありません。21階層以降は倒した魔物に応じて魔石が落ちることがあります。でも30階層まではほとんど落ちません。なので魔石を目的とするパテはそれより下に向かいます。」

「魔石は何に使うんですか?」

「魔石の使い道は多いですよ。レアな武器や薬を作るのに必要ですし、上級種の方は魔石を定期的に採らねばなりません。魔石がないと世界はまわっていきません。」

それほど大事なんだな。

「エリーンのいうとおりじゃ。この世界は地上で生産する作物と迷宮で生産する魔石を二本の柱としてなり立っておる。なので多くの者が迷宮を目指すのじゃ。」

お姫様、そんなどや顔で言わなくても。

「今の魔石は赤でしたね。」

「赤は一番下じゃ。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と順に貴重になっていく。赤だと買取は30コルくらいだ。貴重なほど高くなる。まあ青以上は見たこともないがな。」

これはゲームでもよくあるパターンだな。MMOで雑魚キャラの俺も高難易度の報酬は見たことないし。


ペルカが目をキラキラさせながら話しかけてきた。

「ショウさん、ほんとに毒無効なんですね。すごいです。どこかの貴族様ですか?」

そんなこと聞いてる暇あったら、素振りでもしろよ。

「ペルカ、ショウの素性については詮索してはならん。分かったな。それと毒無効のことは内密にな。」

お、お姫様はドワーフ語も話せるのか。さすが公爵令嬢だ。

「はい、お姫様、肝に銘じます!」

お姫様に一喝されて、ペルカは涙目で答えた。

「ペルカ、なんで怒られたの~」

ふたりの会話を理解できないモウルが興味深そうに聞いた。


同じところを2キロほどを行ったり来たりするだけだったが、三十分に一回くらいは魔物があらわれた。決して楽勝ではないがなんとか乗り切った。俺はあまり貢献してないけど。危機が訪れたのはもう遅い時間だった、はずだ。なにせ迷宮内は時計が狂い時刻はよくわからん。熊が出て、フォーメーションどおりモウルが横に回り込んだ。その直後、大熊の後ろからアイスウルフが二頭現われたのだ。全員が直ぐに気づいたができることは少ない。前衛二人は熊対応で動けない。お姫様は直ぐに前に飛び立って上からファイアーボールを浴びせるが、アイスウルフにはほとんど効かない。俺はエリーンの背中に飛び乗って立ち上がった。エリーンが大熊と戦っているので、足場が定まらなかったが、なんとか矢をボウガンにセットした。その間に、モウルは左のアイスウルフの攻撃は封じていたが、右のアイスウルフからの攻撃をまともに浴びていた。既にHPが半分まで減っている。俺はこの異世界に来て初めて祈った。当たれ!俺の放った矢は右のアイスウルフの左目を直撃した。アイスウルフは矢を引き抜こうと、必死にもがく。その隙をぬって、左のアイスウルフをいなしながら、モウルが後退してきた。ペルカが更に前に出て、大熊の動きを止めてモウルの退路を確保する。俺は二本目の矢をつがえながらエリーンの背を飛び降り、右手にボウガンを持ち、左手で回復薬を取り出す。二本目の矢を放つがそれを左のアイスウルフは飛び退いて回避する。

「モウル、これを!」

モウルとアイスウルフの間が空いたところで、モウルに回復薬を投げる。モウルは盾をアイスウルフに投げつけ、俺の投げた薬を受け取った。右のアイスウルフが矢を受けたまま迫ってきたが、それはペルカが引き受けた。そしてエリーンが単独で大熊の前に立つ。俺は後ろから手の空いてないペルカ回復薬2を飲ませ、そのあとエリーンの背に飛び乗り、こっちも手の空いてないエリーンに回復薬2を飲ませた。そのあと、熊はお姫様の猛攻の前に沈み、俺も右のアイスウルフにボウガンをもう一発当てて止めをさした。


「こんなこともあるのじゃな。皆よくやってくれた。」

みんな呆然としていたが、お姫様が長い静寂を破った。

「前後を囲まれるのではなく、こんなに接近して2グループ同じ方向から来ることもあるんですね。」

誰も返事しないのか。俺が間を繋ごう。

「難易度に対して余裕が少ないからな。あのときショウのボウガンが当たってなかったらあぶなかった。」

「ショウ、ありがと、命の恩人。」

あいかわらず、モウルよ、もうちょっと言い方無い?

「あれはクリティカルヒットですね。アイスウルフの動きも止まりましたからね。ダメも大きかったではないでしょうか?」

エリーンは冷静に分析してる。確かに一撃で100以上ダメ与えたからな。内緒だけど。そもそも向こうから持ち込んだボウガンは鑑定してもこれは鑑定できないって出るし。

「やっぱり、あれ欲しい。」

モウルの言葉にみんな首をかしげてる。


そのあと、パテは本道に戻り、他のパテのそばで野営した。お姫様以外が交代で見張りに立ったが、みんなは2時間で俺だけ1時間だった。それも、どうも俺の見張りの時お姫様が寝ないでくれていたみたいだ。雑魚キャラは悲しい。

翌日は午前中順調にレベル上げをこなし、昼食後地上へと向かった。夕方には二日ぶりに日の光をみた。やはり地上は落ち着く。お姫様の指示で翌日は物資の補給と休養に当てることになった。


翌朝、食堂でエリーンと一緒になった。

「エリーンさん、どうしてお姫様は俺のレベル上げなんかを手伝ってくれてるんですか?」

「それは、お姫様はあなたを正式な従者として登録しようとしてるからですよ。公爵家の使用人はレベル30が必要条件になるので。モウルやペルカもあれでレベル30ですからね。レベル30だったら、他の島にゲートを通じてお使いにもいけますからね。」

そうか、それでみんなレベル30なのか。もう少し頑張れよと言いたい。自分はさておいて。

「ということは、レベル30以下の人はいないということですか?」

「昔はそうだったみたいですが、今はこの島にもいろんな種族がいるので、食料や家が必要になります。農業や建築に従事する民は船で来るのでレベル30以下でも来れます。そのような民は迷宮に入らないのでほぼレベルはあがりません。」

「でもそのような民は雇ってもらえないのでは?」

「貴族から直接はできませんが、たとえば自営はできますし、貴族の荘園で働く場合は荘園管理の使用人のもとで働くことはできますね。」

ここでも臨時雇いとか孫請け負いみたいなのはあるんだな。

「空の民はあまり食べないのに、荘園なんかあるんですか?」

「町には他の種族がたくさん住んでますからね。食料を迷宮や船で輸送するとコストが高いので、出稼ぎに来ている種族の食料はその島で作ります。でも他の島に比べると確かに荘園は少ないでしょう。」

「エリーンさんは物知りですね。すごいです。」

「いえいえ、私など運搬の特技もないのに、お嬢様に拾っていただきましたから、せめていろんな知識を身に付けて、お嬢様のお役に立ちたいです。」

運搬の特技が無い?どういうこと。そんなに運べるのに。俺が首を傾げてるとエリーンは俺の疑問に気づいたようだ。

「草原の民は普通でも300キロくらいは運搬できますが、運搬の特技があると五割ほど更に運ぶことができます。そうすると迷宮の中の長く留まることができるので。」

なるほど、それは便利だ。

「エリーンはどうやってお姫様と知り合ったの?」

「私の両親が公爵家で使用人として運搬の仕事をしていました。両親には運搬の特技があったので重宝されてましたが、私にはなかったので使用人として雇うかどうか問題になりました。その時お嬢様が、自分の従者にしたいと強く言っていただいたのです。私の義理の兄弟も半分は運搬の特技を持っていたのに私を選んでいただいて感謝しています。」

「義理の兄弟、ってどういうこと?」

「ああ、草原の民は基本的に一夫多妻なのです。父にも三人の妻がいましたので、私には義理の兄弟が5人います。」

そうか、馬だからそうなんだ。ちょっとうらやましい。色々大変そうだけど。

「そうなんだね。エリーンは迷宮で役に立つからともかく、俺なんか弱いし、運べないし、従者になっても役に立たないような気がするけど。」

「それはお嬢様にお考えがあるようですよ。」

エリーンにはぐらかされた。


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