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お姫様の従者に

翌朝になって、いよいよMPが回復した。出発前にエリーンに向けて魅了を放つ。そうすると目の前に使用するスロットの選択画面がでた。スロットの右端にはお姫様が表示されている。スロットが10あるので、魅了は10体までできるようだ。この感じだと魅了に有効期間はないようだ。少し安心した。効果は直ぐに現れた。

「お嬢様、このままこやつを歩かせると、まだ数日かかります。お許しをいただけるなら、こやつを載せて走りますと一日で到着いたします。宜しいでしょうか?」

まだこやつ呼ばわりだが、背にのせてくれるらしい。

「そうじゃな、こやつがおぬしの背で何か悪だくみをしそうなら、わらわが消し炭にしてくれるので、それもよかろう。」

こうして時速二十キロほどで草原と森を抜けて、夕方には山小屋にたどりついた。エリーンから降りるとやっと縄が解かれた。

「本当にこんなところに山小屋があるのだな。誰が建てたものかのう。」

「お嬢様、前に出ないでください。何が潜んでいるかわかりません。」

エリーンは盾と槍を装備して前に立った。なかなかかっこ良い。誰もいないんだけど。


日が暮れかかっており室内は薄暗かった。エリーンは土足で入ってきた。まあ靴はいてないんだけど。

「暗くてよく見えんな。ランプはないのか。」

俺は姫様の求めに応じて、ネットで買った単一電池4本で使える災害対策用の灯りのひとつを点灯した。

「おい、これは光属性の魔道具か?」

お姫様は、浮遊する高さを上げながらおれに尋ねた。これは答えに困る。色々向こうから持ち込んでるから、ひとつづつ突っ込まれると辻褄があいそうにないな。

「えーと、俺にもよくわかりません。」

こんな適当な答えにも、魅了の効果なのか、ふたりは顔を見合わせたが、拷問して自白を求められることはなかった。そのあと二時間くらい、山小屋にある色んなものを二人は物色して用途を俺に尋ねた。

「ようわからんが、おまえはなかなかの曲者じゃな。レベルは低いようだが、使える奴のようじゃ。わらわの従者になるなら、色々なことには目をつぶってやっても良いぞ。」

「お嬢様、このような怪しき者をお傍に置くなど、危険ではありませんか?」

「それならば、エリーンの言うようにここで断罪するのか?」

「それは、すこし早計な気も致します。」

「そうじゃろう。なのでわらわに尽くすなら命を助けてやるということが良いのではないか。」

「わかりました。お嬢様の仰せのままに。」

俺を無視して会話は進んでいるが、俺には人権ないようなので、黙っているしかないですよね。

  

山小屋で一泊したあと、お姫様は更に北を巡回するように指示した。エリーンの背中で移動するので、俺がひとりで動きまわるより圧倒的に早い。途中でイノシシと出くわしたが、エリーンが一撃で屠った。さすがすべてのステータスが高いから強いのは当たり前か。武具にも鑑定が使えるので、エリーンの装備を鑑定してみる。


鉄の盾 魔法防御 +3

鉄の剣

鉄のヘルメット 


まあ、エリーンは従者だからこんなもんか。お姫様はどうかな。


鉄のローブ 物理防御 +3

木のワンド 


ローブは高そうだけど。ワンドは微妙だな。もう少し良いのないのか。もともと接近戦闘は無理なので、結構身軽だ。


その日は半日お姫様の領地巡回を行い、夕方には山小屋に戻った。

「この辺りは狼もでないので、なかなか良い土地じゃな。」

狼いるのか!出会ってたらアウトだったな。

「そうですね。水も豊かですから畑にも使えそうですね。」

「ショウ、お前はレベル10だと言ってたな。それでは色々不便だからレベル上げに迷宮に参ろう。」

「いいお考えですね。レベルが低すぎるとほんとに役に立ちませんから。」

ほんとに俺は雑魚なんだな。涙

「迷宮ですか。どこにあるんでしょうか?」

「町のそばじゃ。エリーンの足なら二日で戻れるじゃろう。」

「そうですね。少し買い物をして準備をすれば三人でも二十階までは問題ないでしょう。」

翌朝、またエリーンの背中に揺られ、二日後には町の入り口についた。ゲームだと最初に興奮するイベントだ。町は城壁に囲まれている。

「この城壁は何のためにあるんですか?」

「魔物のスタンピードに備えてじゃ。他の種族が我ら空の民に挑んでくることは考えられんからの。」

「スタンピードですか?」

「スタンピードとはまれに迷宮の魔物が大量に発生して迷宮の外まで溢れ出してくることです。この島ではまだ起きたことがありませんが、他の島ではその為に町が壊滅したこともあるようです。」

「町に住むのは空の民ばかりではないからな、しもじもの命も守ってやらねばならぬ。」

言い方はイラっとくるが、中身はまっとうだ。大きな門を入るとそこは中世のヨーロッパの町のようだ。石畳の道を挟んで色々な店が並んでいる。道を行くのは、それこそゲームに出てくるような色んな種族の民が歩いている。気持ちが昂る。

「空の民の町なのに、あまりいないですね。」

「あたりまえじゃ。我らは平民でも使用人を抱えておる。日常の雑用はそやつらがこなしておる。このようなところにはあまり出て来ぬのじゃ。」

「それならば空の民は何をしているのですか?」

「多くの者は迷宮に入っておる。魔法が得意な我同族なくては迷宮攻略はすすまないのでな。」

こんな話をしているうちに、エリーンは一軒の店に入った。

「これはお姫様、わざわざお越しいただきありがとうございます。」

店の主人がもみ手をして一行を迎えた。高齢の人間だ。鑑定してみよう。


HP 155 MP 149 知力 165 体力 170 腕力 158

素早さ 156 幸運 128 レベル 31  スキル なし 特技 商売


「今日はどのようなお品をお探しですか?」

「従者の装備を整えようと思ってな。薬をいくつか買いたい。」

姫様の言葉に反応して、主人はいくつかの箱を取り出した。値札が付いている。

読めないので、エリーンに読んでもらう。


HP回復1 100コル  HP回復2 500コル   MP回復1 100コル

MP回復2 500コル  解毒   100コル   


「回復薬と解毒薬をいくつか買っておけ。」

「えーと、金が無いのですか。」

「あれだけの山小屋に住んでいて金がないのか!」

「すいません。ありません。」

「そうか、それならあの光属性の魔道具をわらわが買ってやろう。ほれこれで。」

姫様が有無を言わせず、小さい銅貨を何枚か俺に握らせた。銅貨かよ。俺が銅貨を見つめているとエリーンが待ちきれず口を開いた。

「お嬢様からそんなに大金をいただいたのに、お礼をなさい!」

え、大金、銅貨十枚が。たしか通りで売ってたサンドイッチみたいなのが2コルだったから、1コルは100円くらいなんだろう。回復薬が100コルということは1万円か。結構な値段だ。普通のゲームよりかなり高い。ぼったくりだ。

「すいません。銅貨を見るのが初めてなので。」

「その銅貨は一枚100コルです。薬が1本買えます。」

え、銅貨が1万円。お姫様はあれを10万円で買ってくれたのか。ネットで2980円だったので大儲けだ。

「そうなのですか。それはありがとうございます。それではHP回復薬8本とMP回復薬2本をお願いします。」

「解毒は大丈夫なのか。低階層でも毒持ちの魔物は多いぞ。それにMP回復は要らんだろう。魔法も使えないのに。」

影の宇宙人の言葉を信じればおれには毒は効かないはずだけど、ここはうまくごまかさないと。

「あ、そうですね。それではHP回復を一つ減らして、解毒をひとつお願いします。MP回復はお姫様の為です。」

なんとかごまかして我々は店を後にした。

「ここでは、銀貨とか金貨はないんですか?」

俺の言葉を聞いた、二人は笑い出した。

「金貨などあるはずないじゃろう。そんなもの高すぎて流通しないわ。銀貨はあるにはあるが、通常の取引では使わない。一枚で一万コルだ。」

この星では鉱物はレアらしい。日常は鉄の硬貨をつかうようだ。すぐ錆びそうだ。

「そうなんですね。それに薬は結構高いですね。」

「そのとおりじゃ、薬の精製はエルフの固有スキルなので、あやつら組合を作って高値でしか卸さないのじゃ。そのためにあの値段になっとる。」

「エルフ以外は薬が作れないのですね。」

「厳密に言うと、種族の固有スキルは他の種族ではレアスキルとして取得できることがある。しかしそのような者がいても作れる量は知れているだろう。」

なるほど、種族の固有スキルは他でもレアスキルとして低確率で取れるんだな。


そんな話をしているうちに、お姫様の家でもある領主の館に到着した。二人のドワーフが門番として我々を迎えた。

「お帰りなさいませ、お姫様。お勤めご苦労様です。」

大きな門が開き俺たちは領主の館の前の大きな庭に立った。

「ショウさん、私とこちらに。使用人棟に案内します。」

俺はエリーンの背から降り、お姫様に挨拶して、エリーンと共に使用人棟に向かった。

小さく区切られたウナギの寝床のようなところで翌朝目覚めた。まあ、区切りがあるだけありがたい。隣が寝返りして尻尾があたるなんて怖いからな。ウナギの寝床は雄雌別なので、朝食をとっているとエリーンも現れた。こちらの食事は硬いパンと野菜スープだけで質素だ。使用人だからなのかな。

「おはようございます。よく眠れましたか?」

エリーンの対応も魅了のおかげで柔らかくなってる。これなら踏み殺されなくて済みそうだ。二人だけになることは少ないから色々話をしよう。

「おはようございます。はい、ぐっすり眠れました。使用人多いですね。」

「そうですね。公爵は迷宮管理もされていますから、警備が多いです。」

「金もかかりますね。」

「迷宮の入場料や迷宮を輸送に使う商人からの税で賄っているようです。公爵家一年間の予算は数千万コルらしいです。」

そうか、ここは輸出入の税関みたいなところでもあるんだ。

「一年は何日ですか?」

エリーンは俺を見つめた。

「本当にそんなことも知らないのですか。一年は310日ですよ。」

確かに大のおとなが一年は何日なんて聞くとおかしいな、気をつけよう。一日26時間で一年310日だと、この星の公転日数は地球より一割くらい短いんだな。


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