エンジェルライフ、最終回 ガン治療のタイムマシンを一緒に開発することにしたエライザと森園奈央。奈央は、自分の体で臨床試験をしてくれと言う。
ガン治療のタイムマシンなんて本当にできるのか!?奈央の話は、具体的で信憑性が高い。なにより、臨床試験をすでに行っていた。カルメンを治療する新しいガン治療につなげることが出来るのか。奈央の命を懸けた研究が続く。彼の運命を引き受けた渥美病院の看護師の対応にも注目!残念ながら最終回!
みなさんアリガト!
新型のガン治療器の開発が始まった。増殖したガンを新しい物から順番に消せるという技術を自分の体を使って臨床試験してほしいと奈央が言い出した。自分を撮影したという3か月前の奈央のMRI写真は、末期ガンの腰椎写真だった。
エライザは、検診機械の試運転を早められるように、できるだけ貴賓室の診療室で仕事をした。奈央もガーデンホテルに泊まりエライザが来れないときには付属品をホテルの部屋で組み立てた。時には、エライザもガーデンホテルに泊まり夕方から組み立てを行った。
奈央:これが、横軸の照射装置、同じものが上下でついているが、最初から横軸用のスペースが設けてある。来季の新型では、上下と横の光線が、交わるところの癌だけが消滅するように改良される。簡単な改造で莫大な改造費用が入るシーメンスの株は、高騰する。アラブの大富豪だけが、株で大儲けする仕掛けだ。私が、このアイデアを提供したシーメンスのアラブ人技術者は、副社長になったよ。
今日は、このくらいにしよう。先は長い。
エライザ:カッコいいプラモデルみたいで面白いですね。ガンダム作っているみたい。
奈央:エライザは、エンジニアでも成功したかもな。弟子にしたかったよ。
エライザ:奈央さんは、お酒飲まないの?
奈央:今は、控えている。モルモットが、他の病気で死んだら困るだろう。
エライザ・・・まだ、10時なんで、私は、ちょっと失礼して飲んじゃおっ・・
奈央:遠慮しなくて良いよ。おやすみ。
1週間の予定が、4日で組みあがった。
奈央:電源入れるよ。
静かな駆動音で、電源が入り操作パネルの液晶画面が立ち上がった。
奈央:こっちでボタンを押すから機械の側でランプがつくところを教えてくれ。
すべて英語のパネル表示だからエライザしか、立合いに来たくないのもわかる。チェックも終わり、
奈央:操作を覚えてくれ。
奈央が、ゴム人形のようなものを持ってきた。
エライザ:だっさい人形?
奈央:うるせー!俺はぬぐるみ職人じゃない!
エライザ:売れるようになったら、メーカーがキティーちゃんみたいなやつ作るか!
奈央:任せるよ。これは、人間のダミーだからいくら失敗してもいいから自由に操作してみて良いよ。
エライザ:面白そうだね。MRIの操作は、検査技師がやるから私は、やったことないんだよね。
奈央:この機械は、英語が分かる人は、簡単で誰でも医者になった気になれる。感覚でやればすぐできるようになるよ。
エライザ:これは、CT。あっわかた。これで、撮影する箇所を指定して、スキャン えっ終わり?
奈央:終わり。プレイボタン押して。できた!
エライザ:簡単だし、早すぎだよ。MRIもスキャン 終わり!CTと同じぐらいだ。プレイおーっ鮮明な血管だよ。
奈央:一番細いところが0.02㎜、毛細血管まで鮮明に見える。レントゲンも時間は同じだよ。
エライザ:そりゃそうだ。照射装置が一つだもん。
奈央:正解!同じユニットに3本の照射銃がセットされている。
エライザ:どうやって撮ってるんだろう?
奈央:あえて、難しいこと言ってあげよう。昔のブラウン管テレビのように光線を磁場で曲げてるんだ。
エライザ:確かに難しくて解らんわ!
奈央:今度は、造影ライトを当てるから赤い癌をジョイスチックで撃って消して!
エライザ:よし!赤いのが、ガン細胞!発射よし、連続で押してもおーっ掃除してるみたい。通販番組のケルヒャーだ!
奈央:良いかい、このダサイ人形は、性能は世界一、みてて、パネルで疾病と難易度を選んで送信押して!
エライザ:脳腫瘍・高度・送信、押した!
奈央:そうしたらオートスイッチ押して、実行
エライザ:押した!。わーっ何なになにななななんじゃ全部自動で撮影してガンも撃って消してる。画面が、まわって??
壊れた?あーっ分かった。MRIとCT、レントゲンを重ねて見せてるんだ。あーーっWぁあゲームみたい!スポットで
狙撃してる。うーーすげー!
奈央:人間の診断、治療では見えないところも出てくるかもしれないし、患者が知らない間に頭にマイクロチップを入れらり
するから、こんな簡単にはいかない。最後のスポット射撃の技術が上下左右の照射で可能になった。一方向だと通過した光線が
正常な細胞も壊すから2方向で両方当たった点のみが消滅する。
エライザ:それが、奈央さんのアイデアだね。
奈央:そうだけど実は、違う業界の印刷技術やレーザー彫刻など、医療以外の分野では当たり前のアイデアだ。私は、それを医療関係の技術者に
教えただけで神様みたいに呼ばれる。バカバカしい話だ。
エライザ:なんで?いろんな分野の人が話せば良いのに??
奈央:すべては、プライドと金儲けのため。韓国やドイツは、日本を追い越すために30年以上前からいろんな業種が混ざり合って
研究してる。日本は1970年ごろの行政縦割りと補助金で研究する仕組みだからこうなる。
エライザ:残念だけどよく聞く話だね。
奈央:愚痴はこの辺にして、今日はここまで、明日はいよいよタイムマシンでガンの時間をさかのぼる。
次の日、奈央からエライザにメールが入っていた。
エライザ:奈央さんからショートメールだ
奈央:今日は、体調が悪い。明日に延期したい。ゴメン
エライザ:ちょっと無理しすぎたか。機械は4日で組めてるから私も今日は、休憩か!
次の日も奈央から延期のメールが入った。
エライザ:病状が悪化したのかな・・末期の癌とは言え・・半年ぐらいは・・
その日の深夜、奈央からメールが入った。
奈央:明日は、行ける。よろしく頼む。遅くにメールして悪かった。
エライザ:よし!寝るぞ!ん、ちょっと飲むか!
翌朝8時、ガーデンホテルに着くと奈央が車で寝ていた。
エライザ:奈央さん!早いね!
奈央:渋滞するかと思って早く来た!
エライザ:この時間、伊良湖岬に渋滞はないでしょ!冗談言えるなら元気でたね。
奈央:今日は、調子いいぞ!
診察室に入って
奈央:コーヒーくれ。
エライザ:良いよ。
エライザが湯を沸かしに出ていく。
エライザ:おー奈央さん!ミルク要る?
エライザが戻って聞こうとすると、奈央が自分に注射を打っていた。
エライザ:奈央さんどうした?インシュリン?
奈央:造影剤だ。これで、1か月づつ3か月さかのぼれるちょうど、最初の写真を撮った時期だ。
エライザ:奈央さん昨日、その前、何してたの?正直に言って!
奈央:嘘なんか言ったことあるか。タイムマシンに乗る準備だ。
エライザ:造影剤、打ってたのね。
奈央:そうだ。運転が危険な状態だったから工房で寝た。3日目で少し耐性が出来たみたいだ。
エライザ:昨日の夜のメールは、ここからだった。2回目打ってから体調良いからメールしたんだ。
今日から臨床実験するなんて言ってないじゃん。
奈央:しないとも言ってない。嫌なら止めていい。止めるのは条件に入ってない。もう時間がないんだ。エライザ、君が嫌なら
自分で機械は操作できる。場所を貸してくれただけで十分だよ。ビデオで状況も撮影する。午後3時には終わるよ。
エライザ:嫌とは言ってない!言ってないけど!
奈央:約束したよな。お互いの立場で、
できることを、やる。
エライザ: できることを、やる! どうすれば良いの?
奈央:コーヒーブラックで、
窓辺で、二人でコーヒーを飲んだ。
奈央:エライザ、日本の女優の池田エライザって知ってるだろう。
エライザ:名前一緒だから知ってるスマホのコマーシャルかわいかったね。
奈央:俺、池田エライザのファンでな・・
エライザ:へーっ、最近、”ごちになります”やめたね。
奈央:すげーショックだった。お前、似てるな!
エライザ:そうか?私のほうが健康的で、背も高いし、
奈央:そうじゃねえよ。見た目もだが、気の強そうなとこが!
エライザ:池田エライザの性格知らんし。
奈央:彼氏のお母ちゃん治ると良いな。
エライザ:彼氏じゃねーし。
奈央:俺のタイムマシーンは、未来には行けないんだよな・・
エライザ:おんぼろタイムマシーン!
奈央:よし!おんぼろに乗るか!
奈央は、診療台に乗り自分で腰と頭をベルトで締めた。
奈央:エライザ:ビデオ回しといてくれ。
エライザ:赤い四角?
奈央:そう。自動で全部やるから見てるだけでいい。RUNと押せ
エライザ:押すよRUN
あっけなく治療が始まった。
エライザ:わーほんとに始まった! えっダイジョブ! えーっ頭も撃ちだした・・・癌の転移元、脳腫瘍か!
奈央さん、奈央さん! 全身のがん検診もう、終わり・・治療も!
奈央:しゃべらすな・・画面みて・・・やれ・・・
エライザ:10分待て・細胞の自己補修待ち・?1か月前まで癌が消えて、周りの正常細胞が修復されるのを待ってるのか。
準備完了、だって・・・おっ始まった・・もう終わった。10分待て・・か・・
あっという間に2回の照射で2か月前までの癌が消滅した。・・・・次が始まらない。・・・・
操作パネルのGOTに”停止中 患者をチェックしろ”
エライザ:・・患者をチェックしろ・・?奈央さん!患者をチェックしろって・・奈央さん!
エライザは、奈央に近づいて声をかけたが、返事がない。
エライザ:奈央さん!奈央さん・・奈央さん・・
脈をとった。瞳孔反応も見る。脈がよわい・・・こんな時”孤高の狼、ぶっとび脳外科医”は心強い。エライザは、迷わずアドレナリンを注射した。しばらくして・・
エライザ:奈央さん!わかる!
奈央:聞こえるよ。大丈夫だ・・生きてるよ。
エライザ:生きてるのは知ってるよ。外科医だぞ。やるべきことやってやったんだから・・・ありがと先生!ぐらい・・
奈央:何分死んでた?
エライザ:死んでないって。20分寝てた。
奈央:再生ボタンで、脳の照射後の映像診てみろ細胞から出血してるのと再生の様子。俺にも見せてくれ!
脳から出血したんで、機械が自動停止したんだ。出血量を見てみたい。
エライザ:どうやって、降りる?
奈央:動いたら画像がずれるからお前の携帯で撮影して見せろ。
エライザ:医者の使い方が荒いな・・これで再生・・・わっ・・でも出血少ないな、・・ここで止まった。奈央さんがこん睡状態になったのも感知してる。
奈央:うまく機能してるな患者が意識を失っても医師が確認するようになってる。携帯見せて!
エライザ:こんな感じ。
奈央:もっと近くに・・老眼で近視だから5cmぐらいがよく見える。
エライザ:5cmって、ちかっ・見える?この距離、より目になってるよ。
奈央:良いな。出血も少ない。できすぎだな。
エライザ:画像も鮮明だしCG見てるみたい。
奈央:この次は、3か月前だから骨髄腫瘍のほうは、硬膜を抜けて骨髄に絡んでいるところを撃つはずだ。たぶん俺は、歩けなくなる。
エライザ:たしかに、やばい箇所だね。止めよう。
奈央:最後まで聞け。脳のほうは、どこに3か月前の腫瘍が増えた見てないからわからん。次の照射で、どこに影響があるかもわからん。
死ぬことはない。ここで死ぬとお前に迷惑がかかる。口が効けなくなるとか・・目か、腕か。いずれにせよ
渥美病院の4東に連れ戻したと言って預けろ。後は、山本先生が看取ってくれる。末期の癌だった。で、うまいことやってくれる。
山本先生は、俺の問診で脳血管型認知症を疑てたはずだ。俺自身も転移は、脳からだと思ってた。あいつは、良い医者になる。
エライザ、いつか一緒に組め。お互いいい勉強になると思うよ。
エライザ:話したことも無いから知らねーけど・・
奈央:この治療の課題は、分かるな。言ってみろ。
エライザ:造影剤の時間差を短くする。特に正常細胞に近いところでは、せめて・・1週間ぐらい。
奈央:そのとおり、もっと早く会いたかったな。エライザ!だが、会えたし、次のステップを一緒に見れた。池田エライザより
小久保エライザのほうが、やっぱり良い女だな。
エライザ:眼鏡掛けてないし・・冗談言って無いで、もう止めよう。
奈央:止めてもいいよ。いつか、誰かがやる。でもそれを待ってたら救える患者が何人も亡くなる。テレビで見たよ。
エライザのイタリア公演。
”すべての人に希望の光が届けられるように、
けして消えてしまった光をわすれません!”
エライザのスピーチで私がやるべきことが見えた。
エライザも奈央の覚悟を悟った。無言で操作パネルを見る。消えていた準備ランプが点灯した。
エライザ:やるよ。RUN!
静かな駆動音が20秒ほど・・”患者をチェックしろ”機械が止まった。エライザは、映像で脳の出血量を見る。
エライザ:奈央さん、さっきより若干出血が多い程度で脳のほうは癌が消えてる。腰のほうは、癌が奥に少し残ってる。
奈央さん!奈央さん!
エライザが、奈央に近づく、奈央は目を開けてエライザを見ている。口が使えないようだ。
エライザ:聞こえる?奈央さん!
反応がない。エライザは、紙を持ってきて書いた。”終わるよ”奈央が、首を少し縦に振った。ベルトを外し、奈央の体を起こした。エライザが、紙に書いた”書ける?”。奈央は、体をくねらせ、苦しそうだ。左手が動きペンを持った。奈央が子供の絵のようにぐるぐると丸を描いた。エライザは、奈央を車いすに乗せて座らせた。体の動きから体幹は保てている。首も動かせる。
エライザ:奈央さん、○つけて!目、耳、口、左手、紙に書いて、後の右手、両足はエライザが書いて×をつけた。
奈央が目に○をつけて、後は、横棒で消した。
エライザ:渥美病院に行くよ。救急車使わないよ。
奈央:両目を閉じた。
会話は無い。エライザの運転で、奈央を自分の車に乗せ渥美病院に連れて行った。奈央を車に乗せたまま4東のナースステーションに行く。松田が一人でパソコンを打っていた。エライザが、近づくと気がついてカウンターに来た。
松田:はい、どうしました。
エライザ:森園さん車で連れてきました。歩きながら話せます?
松田:一緒に行きます。
他の看護師もエライザに気が付いたが、緊張感のある二人の空気に声も出せない。
二人きりで、エレベーターに乗って、
松田:森園さんの体調が悪い・・・
エライザ:森園さんから、一時退院の状態だと聞いています。
松田:そうです。一時退院したまま連絡がつかず、
エライザ:つれてきました。そのまま4東で、再入院でお願いします。責任は私がとります。その後の診察は、先生方の判断に任せます。最後は、4東で、看護しにくければ、個室で、差額はエンジェルライフにまわしてください。
松田:とりあえず、私の判断でできることは・・一時退院の患者をもとのベッドで看護します。
エライザ:ありがとう。
二人で奈央を車いすに乗せた。
松田:森園さんだいじょうぶ?
奈央:笑って、両目の眉を上げた。
エライザ:だいじょうぶなわけないじゃん!
松田:何があったか・・話せませんよね・・・
エライザ:いつか、あなたには話さないとね。
松田が、奈央の車いすを押して、病室へ向かった。床屋の前を通ると、奈央が声を上げた。
奈央:うーっ!
松田が止まると、開いていた扉から床屋の娘さんが顔を出した。
床屋:森園さん!戻ってきた。だめじゃん!
松田が車いすを押して売店前のエレベーターに後ろ向きで乗ると、エライザが、深く頭を下げて扉が閉まるまで下を向いていた。
あふれた涙は、そのまま真っ直ぐ床にしみ込んだ。
エレベーターの中で、松田は何も言わない。そのまま開いている。427④のベッドに奈央を寝かした。
ちょうど引き継ぎの時間になり、松田は、ナースステーションに戻った。
松田:森園さん27④に戻ってます。
何事もなかったように淡々と引き継いだ。
夜勤担当の小谷が小走りで森園の病室に挨拶に行く。
小谷:森園!!さん・・担当のオダニ!!デス!!!どこ行っとたの!!!!。
×ぺげ!((o(*こっちが!゜▽”!゜*)ルール!o)wGe!しんじられん!!!!う×ぇダvyバgんもお!!!
がっつり叱られ、5階のガラスが割れた・・・
取材に協力してくれた皆さん!ありがとう!
エンジェルライフ1 終わり




