エンジェルライフ⑯森園奈央が開発できるとエライザに持ち掛けたガン治療の最新鋭機、パルス免疫治療器はガン治療のタイムマシンだ!本当か!?次回:最終回
カルロのアクセサリー作りの為に、自分で整備した工房を無償で貸してくれた森園奈央。エライザに相談があると言ってきた。奈央は、ガン治療のタイムマシンを一緒に作りたいと言い出す。そんな漫画みたいな話が本当なのか?カルメンの治療に悩んでいたエライザは、奈央の話を聞いてみることにする。奈央が、命がけでエライザに伝えたい技術とは・・・次回:最終回
⑯
Heboと、とみめからリモート通話。元気でトンガで暮らしている様子が伝えられた。エライザは、イタリアから帰国し、何やら新しい研究テーマを企画している。エライザに代わり宇田朋美がシリア入りしてういかと共に、シリア国境に近いトルコ領内で、赤十字の医療チームをサポートしていた。
真理をメインクルーにしたHeboの義足プロジェクトも終了しチームも解散する。
三人で、田原のイタリア料理店、オルカで飲んでいる。
真理:今度、豊川市の義足メーカーがHeboの義足を一般販売するんだって。
エリ:お父さんは王族の王位継承順位が上がり皇太子になってトンガに戻るんだって。家族そろって2年ぶりに一緒に暮らせるね。
真理:いろいろあったけど、杉本さんが言ってたみたいにみんなで変化を観察してチャンスを見つけてチャレンジできたかな・・
エリちゃんなんかトンガ料理の達人になっちゃったし、今度、東京の領事館のパーティーで、エリちゃんスペシャル 長いものトンガ巻き作るんでしょ。
直斗:Heboが美味しいって言うまで、いっぱい作ってたからな。俺と杉本さんじゃ食べきれなくて結局ジャイアンに回っていく。
エリ:タンカーの話でHeboが心開いたみたいになってるけど・・その前に、私の料理で、Heboのココロ掴んでるんだから忘れないでほしいな・・
真理:杉本さんは、その辺のところ良くわかってたよ。エリに任せて、伊良湖岬で悩んでたから・・エリちゃんに感謝してるって言ってた!
エリ:直接、言って欲しいな・・
真理:照れるんじゃない!杉本さんなんか怪しい感じ・・エリのこと気になってるかも?
エリ:ないない、野生児過ぎる。ワイルドを超えてるもん。
直斗:たしかにワイルド超えてます。今度は、日本で初めて男で保育士になった、菊本・カマウ・嘉一さんと中東で活動するみたいですよ。
真理:知ってる。菊本さんて、保育士辞めて、アフリカのケニアで孤児院始めた人でしょ!
エリ:私も週刊プレイボーイで、特集記事、見た!ケニアのナイロビの郊外で”希望の家”だったっけ・・
直斗:あの二人が、合体したらトンデモナイことしそうだね。絶対、エライザと組ませちゃいけない・・・
真理:そうだね。みんな付いて行け無い! 今回だって、エリの料理に任せて全然ここに来ない杉本さんに、相当イラついちゃったよ。
直斗:俺たち医者は、分からないって言いずらいから知ってる可能性を並べて喋ってしまう癖があるけど、杉本健司の止まって、悩む姿には、教えられたよ。
真理:技術的に最先端の医療はどんどん開発されていくけど、ベストな医療、介護環境は、人それぞれなんだよ。
直斗:結果として、今回の決め手は、エリちゃんのトンガ巻きか・・
エリ:杉本さんのジャングル探検隊じゃないの!
真理:伊良湖港のセリ市の魚屋のおっちゃんか!?Heboの選んだスズキ、最安値で落としたじゃん!
直斗:そこ!? MVP?(爆笑)
翌朝、モトズラウンジで、
あさこ:エライザ、帰ってきて、そうそうで・・悪いんだけど、本院の相談事・・・
エライザ:えーっ・・今更、渥美病院の相談事に私が出てくのは・・気乗りしないなぁ・・
あさこ:私もそう言ったんだけど・・整形の山本先生が、下の脳外で診てもらって、異常なしの患者さんからエライザに聞いてみてって頼まれたって・・
エライザ:私を知ってるってこと?私の患者だった人?
あさこ:カルテ見ても載ってないから患者じゃないんじゃない?モリゾノとか・・いう人みたい。
エライザ:モリゾ・・・あっ思い出した!私の患者じゃない!下の整形にヘルニアで入院してた人で・・
カルロの工房貸してくれてるっていうか・・こっちが、借りっぱなし・かな・・
あさこ:知り合いは知り合いか・・・どうする?
エライザ:知らん顔はできないな・・会うだけで、どっか紹介するとか・・一回、ここにも連れてきちゃったし・・
エライザは、カルロがイタリアから送ってきた金属の圧延機の置き場所が困り森園に相談していた。本院に入院していた森園を訪ねて話に行ったが、エライザの訪問に気づいた看護師や患者が詰めかけたため、森園を病室から連れ出して、モトズラウンジへ逃げ込んだことがあった。結局、森園が無償で、工房の一画にカルロの機械を仮置きさせてもらえたが、そのまま借りっぱなし・・負い目がある。
数日後、本院の会議室で
エライザ:お久しぶりです。奈央さん(森園奈央:男)
奈央:お無沙汰してます。海外でもご活躍で!。
エライザ:ただ、飛び回ってるだけです。
奈央:今回は、すいません。私なりにエライザの立場は分かっているつもりなんですが・・
奈央が、経緯をエライザに説明する。奈央は、仕事の事故をきっかけにヘルニアを発症し入院、リハビリを続けている。奈央は、実は電子測量のスペシャリストで、渡辺エンジニアリングに籍を置く前は、電子測量の基礎技術を開発してきた技術者だった。
今でもいろんなメーカーが相談に来ると利権の枠を超えて相談に無償で乗っている。
エンジェルライフの診療室に導入する予定のガン治療の新型機、パルス免疫療法の開発にも奈央のアイデアが使われた。結果として、MRT、CT、レントゲン撮影とパルス免疫療法を同時に施工できる治療機械になった。ドイツメーカーのシーメンスから販売予定だが、まだ公表されてない。
奈央:・・それで、・・シーメンスの技術者との話で、GEの造影剤が素晴らしいけど使えないって話になって。じつは、私の所にGEの新作のサンプルがあって・・もちろんお互いのエンジニアには、話せませんけど、私がメーカーの枠を超えて相談を受け付けているのは知られてますから、GEの技術者は内心では、私がシーメンスと繋がっていることを想定してサンプルを預けたのかもしれませんね。
エライザ:へー、パルス免疫療法って奈央さんのアイデアなんですか?
奈央:違います。私のは、同時に出来る所と、撮影精度の補正技術です。
エライザ:難しすぎて・・・
奈央:まあ、言えない守秘義務もありますので・・簡潔に言います。癌細胞を年齢順に消滅できます。
エライザ:はーあ!?そんなことできるんですか?
奈央:できます。技術的には・・・と、言うかできました。
エライザ:もしできたら・・がん細胞を新しい順に消して、その都度治療して、また、その前のがんを消して・・・
奈央:さすが、エライザだね。私の話で、一気にそこまで想像できる人はそんなにいません。シーメンスもGEも想像できる技術者は、居ませんでした。と、言うかたぶん、上に却下されたと思います。同じ機械で全部できちゃうところで潰されたんじゃないですか。
エライザ:何でですか?良いことですよね・・
奈央:簡単です。4台の機械が1台で済んだら儲からなくなる。今は、4台売れるんですから。
エライザ:残念な考え方ですけど、私も経験してます。
エライザ:4台が、1台もすごいことですけど・・ガンを年齢順に消せるって、それって・・・
奈央:もうわかっているみたいですね。私が言いましょう。ガンのタイムマシーンです。ガンをできた順番に新しい物から消滅させて、患者の容態を過去に戻していくのです。初期の状態に戻せば、今の医学でほとんどのガンが完治できる。
エライザ:それが出来たら世界の医学の常識が変わってしまいます。
奈央:そう・・だからエライザに話さなければならなかった。
エライザ:えっ、どういうことですか?
奈央:エライザは、エンジェルライフをここまでけん引してきて、正しいこと、人々が喜ぶことが必ずしも世間で脚光を浴びて、人々に喜ばれるとは限らないことを知っています。
エライザ:確かに、それぞれの国に利権があり政治と癒着しているから正しいこともその時の権力を敵に回せば潰される。
奈央:その通り、私も若いときはそれで失敗を重ねた。どんなに素晴らしい技術でも、今、儲けている人が仕事を失っては潰されます。
そのことが分かっている人にしかこの技術は伝えられません。
エライザ:それで、奈央さんは、私に何をしろと。
奈央:私をモルモットにしてほしい。
エライザ:実験台にってこと?
奈央:そうです。エンジェルライフに導入予定のシーメンスの最新鋭機で臨床試験をします。大抵の人にはごく初期のガンが発生し自己免疫力で消滅する。
私にも当然ある。今までそれが見える機械が無かっただけだったんです。
エライザ:奈央さんで、臨床試験をするんですね。
奈央:ただ、条件があります。この先私の体で分かったことや可能となった診療方法などは、私が了承するか、死ぬまで誰にも公表しないでほしい。
エライザが、医者としての責任で他の人の臨床試験に利用するのは認めます。忙しいのは分かっているので、気乗りしなければ無かったことにしてもらってもいいです。
必ず私以外の人がいずれは気づくことですから。
エライザ:わかりました。考えさせてください。
翌日、
あさこ:エライザ、どうだった?
エライザ:腰の状態の相談だった。下の画像も見て山本先生や脳外の判断と私も同じだと言ったら安心して帰った。ヘルニアは、長引くから本人も不安だったんじゃないかな。
あさこ:そう。よかったわね。安心してもらえて。
昼休み、エライザは、これといった予定も無くモトズラウンジで買い込んできたモスバーガーとマックバーガーとファミチキにかぶりつきながらテレビを見ていた。
エライザ:へー新しい細胞増殖か~・・むずかしそ~っ・?あったな昔”スタップ細胞はあります”って、言って辞めた大学教授?・・名前変えて他の人が出してきたのか・・
それにしても、ハンバーガー2個、それも違う店で・・ファミチキも買うとは、普通の人は、やれそうで、やれない。同時に食べ比べするらしい。エライザは、やっぱり普通じゃない。
エライザ:モスは、うまいけど食べにくいんだよ!中身だけ出ちゃったヨ!ん、ハンバーグだけでもうまい!ファミチキを挟んじゃえ・・中身がはみ出てバンズだけになったモスバーガーにファミチキを挟んで、
エライザ:おーっサックサクで、モスの味!新商品じゃん!・・でもちょっと・・くどいか・・あっ!
合体ハンバーガーのモスチキを半分ほどかじって、マックから爪楊枝で、ピクルスだけを抜き出してモスチキに挟んだ。
エライザ:モスチキ・マックか、ピクルスしか参加してないけどマックの商品みたいだな。得意げにガブリ!
エライザ:やっぱ、ピクルス要るわ!モスチキ・マック、最高!
ネーミングは、モスチキ・マックで良いらしい。そこへ、元が帰ってきた。
元:おーっハンバーガーか、うまそうだな。
エライザ:マックあげるよ!ちょっと買いすぎた。私、もういらないから・・
元:助かるね。昼飯に定食じゃ多いし・・年寄りは悩んで結局食べずに帰ってきた。マック一つで十分だ・・もーらい!
元は、もらったマックにかぶりついた。
元:昔から変わんねーな・うまいよ。パンがもそもそして・・
エライザ:ピクルス無くてもわかんねーのか・・(ちっちゃくつぶやいた)
エライザは、イタリアで出会ったカルロの母、カルメンの病状について現地の医師と打ち合わせていた。エライザの紹介でイタリアの医師がカルメンの診察を行っていた。進行が極めて遅く事例が少ない骨肉腫であること、イタリアでの放射線治療では、効果が出ていないとの報告が有った。
一方、元とあさこは、今人気の藤井壮太名人の健康診断をエンジェルライフで行う話を詰めていてガーデンホテルの貴賓室に最新型の検診機器の導入を検討していた。
エライザ:奈央さんが、言ってたのはこの機械か・・イタリアの放射線治療で全く効果がないのでは、日本の光免疫療法でも難しいかもしれいな・・
エライザはカルメンを日本で治療することを考えていたが、効果が見込めないのに呼んで、落胆させられないと迷っていた。
エライザ:奈央さんに、もう一度会ってみるか・・
数日後今度は、エライザが奈央を自分の診療室に呼び出した。
エライザ:奈央さん、この間の話なんですけどもう一度、聞いてもいいですか?
奈央:しばらく、音沙汰無いから興味ないのかと思ってたけど。
エライザ:さすがに、身内の患者さんで私が再診察はやりにくいなと思ったんですけど・・奈央さんが言ってた守秘義務の話をよく考えてみたら秘密にしとくなら再診察しても問題ないかと・・
それと、正直に言うと・・私の知り合いのお母さんが、イタリアにいるんですけど、骨肉腫で苦しんでいて紹介した医者も治療がうまくいってなくて困っている状態なんです。
奈央:知り合いは、彼氏だ!
エライザ:いいえ、違います。
奈央:正直に言うんでしょ!
エライザ:奈央さん、なんでわかるんですか?
奈央:エライザが、オオカミの目じゃない・・乙女の目になって、困ってる。
エライザ:まいったな・・でも、ホントに彼氏じゃないけど・・私が勝手に・ホレてるっていうか・・でも、イタリア人だし・・
奈央:十分です。一緒に研究を進める条件をもう一度、話します。研究は、エライザと二人だけで進めること、すべての研究内容は私が承諾するか、死ぬまで、一切公開しない。条件はその二つだけ。
守れる?
エライザ:そんなに難しい条件じゃないんじゃないですか?
奈央:研究成果が、恋人や家族を救うとしても秘密が守れる?
エライザ:そうか、いい結果が出ても言えないってことか・・・彼しか聞いたのも・・・
しばらく考えていたエライザの顔つきが変わった!
エライザ:奈央さん!一緒にやらせてください!
奈央:孤高の狼の目に戻ったね。誰かの為じゃない。お互い自分自身のため、診療看護師としてエンジニアとして、研究しよう。結果が出せたら、金儲けは誰かに任せればいい。
エライザ:藤井壮太さんの話、聞いてます?
奈央:ネタ元は、言えないけど、聞いてます。私も同じことを考えています。エンジニアとしてシーメンスのアドバイザーで入りますよ。シーメンス側は、私が話しておくので、エライザがエンジェルライフ側に言うことは何もないよ。シーメンスの説明書は、ドイツ語と英語。操作GOT、パネル、スイッチ類の表記は英語だから立合いはエライザに必ず話が行く。
エライザ:元さんか、あさこさんが私に予定を聞いてくるからそのまま立合いに行けば、奈央さんが来てるってことですね。
奈央:私をシーメンスが用意したエンジニア兼治験者として、臨床試験すればいい。渥美病院には何の報告も要らない。
エライザ:わかりました。連絡を待ちます。
エライザは、久しぶりに緊張感を感じてモトズラウンジのセカンドベッドルームにこもっていた。パソコンで最新の放射線療法や光免疫療法などを調べたり学会の論文を見返したりしたが、奈央の言うような、がん治療の研究成果も論文も無かった。
エライザ:奈央さんて何者だ・・・カルロの金属圧延機も見ただけで分かってたし・・スカイツリーの測量技術とか・・でも、今まで言ってたたこと全部、本当だったしな・・
エライザは何日も眠れぬ夜を過ごしていた。当然、酒も増える。
あさこ:エライザ、予定見て空いてそうだったから・明日、貴賓室の検診所に新型の検査機器が入るんだけど立ち会える?
エライザ(よっしゃ!:小声で)良いですけど・・・
あさこ:じゃ、お願い10時くらいだと思う。
エライザ:向こうの診療室で、他の事やってます。
やっぱり今日も、眠れそうにない。
翌日、8時に貴賓室についた。自分で鍵を開けて入るのは久しぶりで入り方を忘れている。
エライザ:えーと、インターホンで、暗証番号を聞いて・・・って、誰もいないし・・インターホンを切ろうとした・・
インターホン:はい!セコム本部です。
エライザ:??せこむほん・・ もしもし?
インターホン:はい! セコム本部です。エライザさんですね。
エライザ:はい・・なんで、わかるの?
インターホン:モニター画像が、顔認証で承認しています。暗証番号は、23423です。
エライザ:2,3,4,2,3 (エレベーターが動き出した)ほっ動いた・・
インターホン:よろしくお願いします。
エライザ:ビビった。こんなんだったか?オープン前は、セキュリティー無かったか・・
診療室に入ってみた。以前のCT、MRI、レントゲンの機械が撤去されて部屋がガランとしていた。
エライザ:3台まとめて同時撮影は、ホントなんだ!それだけでもすげーのに・・ガンをタイムマシーンで消す??
エライザは、分けもなくランニングコースに出てみたり、脇に置いてあるエクササイズ自転車を漕いでみたり、
ななか10時にならないなと、携帯を見ていると、携帯が鳴った。
エライザ:おっ、もしもし
奈央:シーメンスの森園奈央と申しますエンジェルライフの小久保エライザさんですか。
エライザ:はっ、はい。奈央さんそこまでする?
奈央:エライザさんですね。今、ガーデンホテルの駐車場に到着しました。お時間がよろしければ、機材を下ろしますので立合いをお願いいたします。
エライザ:はい!今、行きます!なんか、よそよそしいなの、椎名りんご!ん、ういかでも言わんな・・
一階へ降りて搬入トラックのところへ行くと、思ったより小さなトラックに機材が一つ、
エライザ:こんにちは、エライザです。
営業:シーメンス大阪の技術営業担当久保です。
奈央:シーメンス大阪、三河地区エンジニアの森園奈央です。
エライザ:奈央さん荷物これだけですか?
奈央:本体は、これだけです。検診台や付帯設備はその都度宅急便で来ます。ホテルのフロントに預かって貰えるように、お願いしてください。
エライザが先導し検診室まで運び込んだ。
奈央:久保さんありがとう今日はここまでです。
久保:お疲れ様でした。
奈央:エライザ、久保ちゃん知ってるでしょ?
エライザ:見たこと有るような・・?
奈央:渡辺エンジニアリングの久保!
エライザ:あーっ、カルロの機械を下ろしてくれた人でも何で?
奈央:この機械は、渡辺エンジニアリングが買って、エンジェルライフに場所を借りて渡辺が研究する。表向きは、シーメンスが納品。
エライザ:めんどくさいね。
奈央:良いかい。ここからすべて秘密事項だよ。あなた方医者は、医療機器の世界を全く知らないで使っているだけなんだ。開発前にはいろんなリスク対策がめんどくさいんだヨ。今回は、エンジェルライフが、藤井名人の検診の結果で、誤診があるとシーメンスの機械が売れなくなる。シーメンスは、完成品を渡辺に売る。渡辺が勝手に改造したから誤診があってもシーメンスは、悪くない。すべてエンジェルライフと渡辺の責任となる。成功したらすべてシーメンスの功績。失敗してもエンジェルライフが悪いんじゃなくて渡辺の調整不足にできる。その後は、渡辺を排除してシーメンスとエンジェルライフで新しい設置業者とPRを続ける。これが、シーメンスが、渡辺に機械を売る理由です。
エライザ:奈央さんは、何者?
奈央:元さんとあさこさんは、シーメンスが納品すると思っている。購入代金が、改造費用含めて渡辺に入る。ここでの仕事は基本的に私とエライザだけです。シーメンスからエンジェルライフの立合いは、情報漏洩が懸念されるので1名のみとお願いしています。エライザの予定が悪いときは、作業を止めるか、鍵だけ開けてくれれば、勝手にやります。
1週間で動かせると思います。私は、あくまでシーメンスの人間です。
エライザ:了解しました。面白そうですから見てても良いですか?
奈央:もちろんです。面白いですよ。今日は、本体の梱包を解いてアンカーで固定したら終わりです。外で話したく無いので、もし良かったらここで、昼食をとりながら話したいのですが・・
奈央は、機械を所定の位置に固定すると
奈央:これで、OKです。食べながら話しましょう。
エライザ:ビューホテルのビュッフェで、お弁当作ってもらいました。飲み物は、これどうぞ。
奈央:ありがとう。イタリア人とは、連絡とっているの?
エライザ:週に1回ぐらいお母さんの病状を聞くぐらいですけど・・
奈央:この機械で良い結果が出せて呼べると良いけど、先日話したように私は、エンジニアとして、
エライザ:私は、医者、看護師として自分ができることをする。そういえば、入院してましたよね。
奈央:一時退院で、抜け出してきた。携帯もエライザ以外は、着信拒否。
エライザ:やばいでしょ!私が連れ出したことに・・
奈央:ここにいるのは、シーメンスの人間ですよ。
エライザ:了解しました。でも、体調は?
奈央:3分以上立ってられません。3分以下で、座ります。
エライザ:なんか・・聞いたことあるなぁ?・・・
奈央:OKできるだけ、簡単に説明するよ。これは、最新型のパルス免疫治療機の完成品です。ここで改造して3次元で照射できるようにします。
造影剤は、GEの新型サンプルを愛知県の産業技術センターで調合しなおした。世界で最も優れているGEの造影剤を使い、シーメンスのMRIで撮影した結果は、この通り。
奈央は、1枚の写真を見せた。
エライザ:MRIですね。腰骨で、ヘルニアの患者さん?
奈央:よく見て!君なら分かるはず。
エライザ:ヘルニアに見えるけど神経根に触っていないな・・・この色分けが、正しいなら・・骨髄ガン・・硬膜外の脊髄腫瘍です。それも末期。
奈央:こっちは?
色分けが二色の同じ写真を見せた。
エライザ:ヘルニアにしか見えない。神経根に当たっていると考えて治療計画を立てます。
奈央:ここで、この機械でこの写真が撮れるとしたら。この写真は、私の腰椎だ。
エライザは、写真を持つ手を震わせながら凍り付いた
エライザ:・・実際に・・・え・・
奈央:冷静になって。良いかい続けるよ。
奈央が動揺するエライザを落ち着かせて・・
奈央:GEが、私にアドバイスを受けたくて置いていったサンプルを自分に点滴したんだ。
ここからが、タイムマシーンの始まりだ。照射してガンを消す前に次の日に追加で違う造影剤を打った。そして、このMRIの写真を自分の腰で撮影した。最初の照射で1か月前までのガンを消した。2回目の照射で、2か月前まで戻した。これが、3か月前まで戻した時の写真だ。もちろんモニターで色解析している。赤いのが3か月以上前の古いガン。若いガンは薄いピンク。
色は変えられる。若いほうがピンクで良いよね。
エライザ:うふっ
エライザが口元を緩めた。
エライザ:奈央さんの体は、大丈夫なんですか?
奈央:わからない。今は生きている。
エライザ:ピンクだけ消滅させ、神経細胞の組成を待つ。そこで赤いガンを消滅させる。患者の下半身への後遺症を少なくできる。脳で使えばもッと効果的に脳細胞の組成とがんの消滅を繰り返すことが可能です。
奈央:エライザには、もう説明する必要はなさそうだね。
エライザ:今後の課題は、薬の副作用と他の抗がん剤との影響。私のすべきことは、他社の抗がん剤の種類と元さんの提供するサンプルの分析。治療実績の収集。
奈央:私のすべきことは、この機械の組付け、改造。それとモルモットになること。
エライザ:奈央さん、この写真が奈央さんのものならどこかにガンの転移元があるはずです。
奈央:それも、テストで探そう!そして見つけたガンを消そう。私が消える前に。
骨髄ガンは、ほとんどの場合、他から転移する。転移した骨髄ガンが末期状態ということは、元のガンがどこであれ末期だということは、誰でもわかることだった。
エライザ:・・・
言葉は、無い。




