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エンジェルライフ  作者: 森嶋直斗
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エンジェルライフ⑭仲良くなったHeboとケンジ!初めての義足を付けてみたHeboの様子は?

すっかり遊び仲間になったHeboとケンジ。真理からもらった機関車トーマスの”ケンジ”のTシャツを着て、Heboの前に立つ。Heboは、幼いころに”ケンジ”憧れていたのを思い出した。ケンジが、持ってきた義足に興味を示すHebo。初めて、義足を付けてみた。

伊良湖岬のいろんな自然を観察して、Heboは、ケンジが大好きになった。ケンジは、Heboの遊び相手になった。


Heboは、ケンジの膝に座って、ケンジが持つ義足を不思議そうに見ていた。

ケンジ:後でこれで遊ぼう!

と、言って義足を横に置くと、Heboをソファーに座らせビデオを流した。

機関車トーマスのアニメだ。日本から来た新幹線をモチーフとした”ケンジ”が登場する回のものだった。

ケンジ:Hebo、トーマス好きだったよね。この回知ってる? 見てみて!

と、ビデオを見せてケンジは席を外した。

Heboはトーマスが好きだったがこの”ケンジ”のキャラクターを忘れていた。だが、見ているうちにもっと小さなころ何度も見せてとせがんでいたことを思い出した。最新のモーターを積んで世界最速で走る日本から来た”ケンジ”にトーマスがあこがれるようにHeboもあこがれていたのを思い出した。

町のお爺ちゃんに”ケンジ”の話をするとトーマスを見たことが無いお爺ちゃんたちも自慢げに、”そうだよ、日本の技術は世界一なんだ”と教えてくれた。トンガのまわりの島国では、今でも大きく経済成長した

日本の統治時代を懐かしむひとも多く、日本に好意的な高齢者が多い。Heboは、”ケンジ”を通し新しい技術に憧れたのを思い出した。ビデオが終わるころHeboの後ろに戻っていたケンジがHeboに声をかける。

ケンジ:Hebo!ビデオどうだった。見たことあるやつだった?

Hebo:見たことある!何回も見たと思う。あっ”ケンジ”だ! 

と、ケンジが真理にもらっていたTシャツに気づくと片足でHeboが跳んできた。

Hebo:これ、”ケンジ”のTシャツだね。ケンジが”ケンジ”だったの

と、ケンジをキラキラした目で見上げた。

ケンジ:違うよ僕も”ケンジ”が好きなだけだ。

ケンジは、持ってきた義足を取り出しHeboに見せながら言った。

ケンジ:これは、”ケンジ”、日本の新幹線を作った技術者たちが作った義足と言って、Heboのように足がなくなってしまった人が早く走ったり、高く飛んだりする道具の足だよ。

Hebo:へーっ”ケンジ”の日本で作ったんだ。

ケンジ:これを付けるとどのくらい早く走れるか感じてみる? 車いすに乗って!

Heboは、ケンジが持ってきた車いすに片足で飛び乗った。

ケンジは車いすを押して大広間に続く室内ランニングコースに出ると全速力で車いすを押した。

Heboはスピード感に興奮して大喜びしている。100m以上の長いコースを車いすを押して全力で走りきることはできない。

半分もいかずに息切れして最後は、よたよたと失速した。ぜいぜい言いながら、ケンジは、

ケンジ:早かった!?

Hebo:最初だけね。

ケンジ:最初だけか・昔は早かったんだけどな・・早かったころは、風の音が聞こえて走るのが面白かった。

ケンジは、義足を見せながら言った。これは、速く走れる道具だよ。トーマスも日本から来た新幹線の”ケンジ”みたいに速く走りたいって言ってただろ!Heboも、もっと早く走りたい!?

Hebo:(両眉をクッと上げた。)


ケンジは、試験用の義足をHeboにつけてみた。と、言うより義足の付け方をレクチャーした。装着する前にHeboの体に合わせて並べただけで、長さが足りない。来日前に採寸して作ったが、Heboが成長して試験用の義足は大分小さくなっていた。それも織り込み済みでケンジは、試験用の義足を発注していた。今回の義足は、ソケットの材質が新素材で出来ていて、端部に装着するライナーも無い。足首と膝の部分の関節には薄いダンパーが組み込まれ、軟骨の役割をはたす。骨の役目をするフレームも弾性を持たせた新しいカーボン素材でできている。全てが新開発で従来では考えられないトラブルも想定しなければならない。

ケンジは、試作用をすでに3本発注していてHeboに合わせているのは2本目の義足。今日は、Heboに義足の構造や装着方法、手入れの仕方を教えるために使っている。

ケンジ:これで付けてみて。

短くなっていた義足の下に厚底のサンダルをガムテープで止めてHeboに義足を装着させた。装着方法はそんなに難しくないので付けるだけならすぐに出来た。

ケンジ:ゆっくり歩いてみて。

Heboが、恐る恐る足を進める。

Hebo:うぁあ 難しいね。体重をかけるのが怖い。

すぐに手すりをつかまりながら進めるようになったが、向きを変えるときは片足で跳んでくっると振り返る。

今のHeboにとっては、義足は仮装パーティーのグッズといったところか。

ケンジ:じゃあ外して、今度は義足をばらばらにします。

Hebo:?ばらばらに?

ケンジ:そう、ばらばらに!

この義足は、肉の部分もシリコンで作ってあって中のフレームや関節部分は外からは見えない。試験設備で実験したが、フレームや関節部分のセラミクとの接触部分はどうしても摩耗してくる。自分で肉をはがしたり着せたりを行う必要がある。また、関節の部品も強化セラミックで出来ていて分解して内部の油やシールを点検しなければならない。大人ではめんどくさくてやりたがらないが、子供のころから習慣化すれば素早くできるようになるだろう。義足側の改良も考慮して2分で、消耗部品が全て交換できることが目標だ。ふくらはぎの肉の部分の取り外しが最もやっかいなので、今日はケンジがはがしてHeboは、フレームが見えた状態から分解する。分解といっても金属のボルトは1本も無く、すべてワンタッチ式で、はめ込んだり外したりできる。この部分は、今後、大幅に進化しなければならない部分でHeboが高速で、走るようになると衝撃で外れてしまうことも考えらえる。

ケンジ:そう、ここを押してねじる。外れたでしょ。

ケンジも手伝って2分ほどで全てばらばらになった。相当な部品数だ。5本の足の指。それぞれにダンパー。足の甲で分割しダンパーでつなぐ、くるぶしのダンパーにつながるすねの部分は、人間と同じく二本のフレーム。

ソケットとつながるダンパーは一番重要な部分で、5つの部品に分解できる。全部で30以上の部品に分解され、5歳の子供にとっては、最高難度のプラモデルといったところか。子供は、分解が大好きだからすぐに夢中になった。

分解も難しいが、組み立てはもっと難しい。今はケンジが分解した順番にきれいに並べている。

部品がテーブルの上いっぱいに順番に並んだ。それを順番に持ってくれば組み立てる順番は間違えない。

ところが、部品の向きが分からなくなった。1回目の組み立ては、ケンジが手伝いながら10分以上かかった。ただ、ケンジは満足げに

Hebo!すごいな予想より相当早いよ。

お世辞抜きにそう思った。

子供は興味を持てばそれに執着し、あっという間に大人の想像を超えて行く。今回も例外ではない。一緒に組み立てた義足を2回目は、Heboは、1分ちょっとでバラした。組み立てに5分、まだケンジが手伝っている。3回、4回とタイムを縮めるがケンジが手伝わないと組み立てられないところがある。あっという間に2時間がたった。

ケンジ:OK! Hebo、今日は、ここまで。また明日練習しよう。

Hebo:えーっ、、もうおしまい・・・

ケンジは、Heboがもっとやりたそうなのを感じて、うまくいっているなと実感した。

Heboとの人間関係を作るのにしっかりと時間を費やした。義足の試行から始まる予定が、ここまで10日間。エンジェルライフの平均時給から考えると500万円は使ってしまったことになる。真理がいら立つのも無理はない。しかし、ケンジは、無駄じゃなかったと確信していた。Heboがケンジやジャイアンと一緒に経験した実際の自然の中での経験が家族を超え親友を超えた人間関係を作り出した。いまやHeboもジャイアンもケンジが繰り出す遊びが楽しみでしょうがない。兄弟が休みの日のお父さんを楽しみにしているような状態だ。

以前のような口ごもって目を伏せるHeboの様子は見たことが無い。


ケンジは、最後の不安を取り除くプログラムに悩んでいた。




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