ラジオから流れてくる恐怖の事実
「実はですね、我が国はご存じの通りGDPを水増ししまして」
「ええ」
経済学者が解説をしている。主にPCを扱えない高齢者専用となったメディア、ラジオは高齢者にとってながら視聴ができる貴重なメディアだ。
「35兆円分も水増ししてたんで、2008年当時のGDPよりも2021年は下回ったんですよ」
「ええ!?」
「つまり日本経済の14年平均成長率って年平均+0.18%だと言われてきたんだけど、これよりも低くてね……つまりここ14年の労働は無駄でしたと言うことになるんだわ」
「ということは……」
「そうなんだよ、14年平均経済成長率はマイナスなんだ!」
「つまり……この14年で過労死した人は……」
「たいへんむなしいけど『無駄死』ってことだね」
「そうなるよね。こんなに働いてるのに。我々は1円の価値すらも生み出せないどころかマイナスしか生み出せなかっただなんて」
「経済学的には価値を生み出さない仕事を長時間やっても経済的に全く寄与しないんです」
「どういう仕事?」
「パチンコのようなギャンブル産業、課金ゲームのような射幸心をあおるだけの産業、外食産業と言ったあっても無くても生活に困らないもの。こう言った産業ばかりに労働力が集中すると経済はマイナスに落ちる。こういうのを『ブルシット・ジョブ』というのだけど」
「いわゆる『エッセンシャル・ワーカー』にまともな給料を払ってないから我が国はこんなことになるんですね」
「そう、それと省力化、無人化、IT投資をここ30年怠って来たからこうなってる。派遣とかバイトと言った非正規雇用、外国人技能実習生という名の奴隷に頼って機械化・省力化・IT投資を怠ったツケが30年で来たんだね」
――おおおおおおおおお!
「ん?」
「なんだこの音は?」
――オレタチハムダジニなのか!!
「なんだこれは!?」
「いったんCMに入ります!!」
ディレクターが慌てる。
「入らない!! 切り替わらないぞ!!」
――オレタチヒョウガキセダイノジンセイヲカエセ!!
――サンジュウネントイウジカンヲカエセ!!
◆◆◆◆
以来このラジオ局は毎年8月7日12:00に氷河期世代追悼式を行ってから午後の放送に入ることとなった。
【GDP14年平均+0.16%】※2020年改訂後数値:まだ水増し分を訂正していない
2008年 -1.22%
2009年 -5.69%
2010年 +4.10%
2011年 +0.02%
2012年 +1.38%
2013年 +2.01%
2014年 +0.30%
2015年 +1.56%
2016年 +0.75%
2017年 +1.68%
2018年 +0.64%
2019年 -0.36%
2020年 -4.62%
2021年 +1.66%
日本国の実質GDP総額(単位:億円)
2008年 5,202,331
2021年 5,367,923
これに35兆円を引く
2021年 5,017,923(推定:概算)
したがって2008年と比べて-19兆円のマイナスとなった!
ということは14年平均の「本当の」数字はマイナスとなり、
2008年以降は「恒常的マイナス成長期」と経済学が定義するべきである。
(※なお1992~2007年は「低成長期」となる。年平均は+1.12%となる)
だから「労働とは何か」とか「働くことが果たして本当に善なのか」という哲学的問いを日本人全体に突き付けられている。だって多数の過労死者や高齢労働者を動員してこの数字なのだから。
ちなみに米国ドルに直すと日本のGDP総額は1994年=2021年と28年前とほぼ同額になる
1994年:4,998.80≒2021年:4,937.42 (単位:10億米国ドル)
ということは2022年は超円安なので1993年≒2022年となりドルに換算すると29年で1ドルすらも日本は国富を増やせなかったという恐ろしい現実が浮かび上がる。
労働は善じゃない。省力化して短時間で労働を切り上げる事こそが善なのだ。余った時間に文化創造を行うことこそ人間を幸せにする原動力なのであって、「ニートめ!」とニートと攻撃するのは経済学的にも間違ってると証明された。
もし、「人間の価値は労働だけじゃない。お金だけじゃないよ」とかジャマイカのように楽天的な国民性ならこのホラーは不成立でしょう。つまり勤勉であるがゆえに日本は世界最悪の経済成長率をここ30年で実現したということになる。もうこの時点でホラー成立である。
2008年は日本の総人口のピークであり、2008年以降から日本は恒常的マイナス成長になったのは偶然ではない。リーマンショックや東日本大震災やコロナだけが原因じゃないのだ。もっと根本的な原因があるのだ。人口減少という根本原因が。そんな根本原因を見なかったことにし、GDPを水増ししたという事件もそれだけで十分ホラーである。