第9話
「さぁて楽しい楽しい拷問タイムだよ。ほら、とっとと吐きなよ。爆弾の設置場所をさ。」
酒場で男が動き出すのを確認し、爆破スイッチと思わしきものを取り出した瞬間私の能力で眠らせボタンを回収。
そして縛り上げて目が覚めたところを鞭を振り回すルイスが男に質問……というかルイスの言葉通り拷問という状況だ。
もちろん天使に見えて悪魔なルイスがただ縛り上げるなんてぬるいことはしない。
体格の良い漢という字が似合いそうな男が服をひん剥かれ全裸の状態で街灯の真下につるし上げられている。
今の季節は春先で夜はひんやりと冷える。
また王室警備隊が駆け付けた時「少しやりすぎでは?」という顔をされるのだろうなと思いながら苦笑いをしていた。
「大体さぁ、君使えなさすぎるよ。体格の良い漢だから簡単に眠らず抵抗の一つや二つでもして見せるかと思ったらあっさり眠らされてさぁ?この子のマントひん剥くくらいできなかったわけ?」
にっこりと笑いながらも声が笑っていないルイスが私を指差して爆弾魔に文句を言う。
が、爆弾魔も私も「何言ってんだ、コイツ。」みたいな空気になる。
いや、本当に何言っているのだろう、ルイスは。
今すぐにでもそう突っ込みたいけれど仕事中は「リア」とういう男の設定の為、私は言葉を発しないことになっている。
ルイスとの約束は破ると怖いので私はただただその約束を守り黙る。
「はぁ……君にはがっかりだよ。だから付き合ってあげるのも面倒だからさっさと爆弾の場所吐いてくれる?」
ルイスはそういってほほ笑むと持っていた鞭を思い切り地面にたたきつけてならす。
そして叩きつけた鞭が地面を軽くえぐり、えぐれた部分が男の頬に当たる。
男は「こいつはやばい」と察したのだろう。
真っ青に顔を染めながら爆弾の場所を吐いた。
そして王室警備隊が身柄を連行しに来ると「早く連れてってくれ」と懇願するほど怯えていた。
「全く、つまらない男だった!」
頬を膨らませながら不服気に言葉を漏らすルイス。
だけどすぐ隣にいる私に視線を移し、にっこりと笑った。
「僕の家に帰ろっか。」
優しく笑いかけてくれるルイスに私は頷き、ルイスの家である雑貨屋へと帰る。
帰り道はルイスと手をつなぎながら帰ってきたことで私は幸せな気分でいっぱいになっていた為、今自分がマントの下に見つけている服がやばいものだということを忘れてマントを脱ごうとしてしまう。
が、脱ごうとした瞬間に服がどれだけやばいものか思い出し、脱ぐのをやめる。
帰るなりさっさとマントを脱いだルイスは私を見てにっこりと笑った。
「どうしたの?早くマント脱いだら?」
室内に入った今、マントを着ている理由はどこにもない。
むしろ人の家に上がるのにマントはいささか無作法だと言える。
けれどこれを脱いでしまうのはひどく恥ずかしい。
そう思いながらどうしようと悩んでいる時だった。
「僕の好みの服を着てる可愛いアリスを見せてくれないの?」
ルイスは私に近づき私の頬に手を伸ばしてきた。
そして優しく撫でながら悪魔の囁きのように声をかけてくる。
そんなルイスの行動が一層私に恥ずかしさを植え付けてくる。
「あぁ、もしかして恥ずかしい?じゃあ昨日の部屋に行く?この部屋にカーテンはないけどあの部屋にはあるしね。」
別に外の事から見られるかもしれないということを気にしていたわけじゃないけど
とりあえず気遣ってくれた様子のルイスに甘えて昨日、服をひん剥かれた部屋へと移動した。
その部屋に入った瞬間、覚悟が決まる。
そう、昨日みたいに下着姿になるわけではないのだ。
恥ずかしくてもちゃんと服は着ている。
覚悟を決めた私はマントを脱ぎ、自分の格好をルイスに見せた。
その瞬間ルイスの表情はとても明るくなった。
ルイスの好み、ヴィジュアルバンドのセクシーボーカルがクロネコモチーフの衣装として身にまといそうなぴったりと肌にフィットし、そのうえ露出も多い、パンク系ファッションをまとう私をひどく満足げに見つめながら。