第8話
翌日、ルイスとのデートの時間になり私は約束の場所である酒場にマントを羽織って現れた。
すると先にマントを羽織ったルイスが席についており、笑顔で手を振ってくれたのでルイスの元へと移動した。
「会いたかったよ、僕のリア。」
私が席に着くなりルイスに渡された正装の中に入っていた昨日と同様の首輪の鎖をマントのから引っ張り出すとルイスはその鎖を自分に引き寄せ、私と顔を近づける。
そして私の頬にキスをすると満足げに座り直した。
「ねぇリア。その服の中ってちゃんと僕のあげた服?」
マントの隙間からおそらくルイスには私がちゃんとルイスに渡された正装できたことは見えているだろう。
なのにわざわざ笑いながら聞いてくるルイス。
きっと服について触れられたくないとわかっていて触れてきているのだと解り私はただただ頷いて見せた。
するとルイスはまた私の首輪の鎖を自分に引き寄せ、今度は耳打ちをしてきた。
「ターゲットはリアの斜め後ろの男。一応変な動きをするのが見えたら報告するけど君も気にかけてて。」
二人ともマントを羽織っているという怪しげな格好でもうお気づきかもしれないけれど今晩の予定はただのデートではない。
今日の本当の予定は「お仕事」だった。
お仕事とは一体何か。
それを説明するにはまずルイスがただの雑貨屋ではないということから話始めなければいけない。
ルイスは探偵業をしており、王室の治安部隊とも密接な関係がある。
とはいえ表立った密接関係ではなく、陰ながらつながりがあるといった感じだ。
そして治安部隊といっても実際のところ、王宮の周りの治安にかかりきりで広大な城下町の治安には人手不足が理由で首が回らない状態だったりする。
近年犯罪が多く起きていることからどこも警備強化しなければいけないということで王室はいろいろなつながりを作り、街の治安を守るために一部見回り、取り締まり、事件解決を民間に委託している。
で、3番街、5番街が探偵ルイスの担当地区というわけだ。
最初、どうやってルイスと特別お近づきになろうかと考えた私は私の癒しの力を使ってルイスの手助けをしようという考えに至った。
私の癒しの力は実は家族にも教えていない能力で、なかなかに便利な能力だったりする。
呪いを払いのけるはもちろん、治癒能力を向上させる力、また極限のリラックス状態にして眠らせるなんてことができる。
ルイスは小柄なため小回りが利き、諜報活動には適しているものの戦闘面があまりすごそうなイメージがないため、犯人確保の際に私の能力を使い穏便に逮捕するという手を使うという手伝い方をしている。
探偵で鋭いルイスには男装で会いに行っても女だということがばれ、危ないことに女の子を協力させるわけにはいかないと断られたけれど怪我をしても治せることを見せ、しつこく懇願した結果手伝いを許され今がある。
というか最近はルイスが指令補助、私が犯人捕獲が分担内容になっているため出会った当初女の子扱いして心配してくれた日が懐かしい。
とはいえ、何もルイスとお近づきになりたいだけでここまでしているわけじゃない。
ルイスがおっている事件では時折イベントとしてうちの兄たちが巻き込まれることがある。
中には選択肢を間違えればすぐ死んでしまうというものもある。
だからルイスとお近づきになりたいというのに加え、兄たちを守るためにもこの仕事をしているというわけだ。
もちろん相手を眠らせるからと言って危険がないわけじゃない。
だから私は記憶はなくても体が覚えているといえばいいのだろうか。
物心ついた時から体術が使えるということもあるため、戦いになった時の為に日々ルイスの家で鍛えていたりする。
……さすがに家で鍛えていたら怪しまれそうだし。
そんなこんなで私たちは「デート」という隠語となっている「仕事」をするため酒場の客を演じながら料理を食べる。
どれだけ飲んでも全く酔わない体質のルイスは怪しまれない為にもお酒を飲んでいる。
そして3番街は人に言えない仕事をしている人間も多いため別にマント姿だからと言って目立つことはない。
私たちは男が動き出すのを待ち続けたのだった。
数日で何十話とストーリーが浮かぶままに書き上げてたりするので誤字脱字気づかれたら是非ご報告いただけると嬉しいです!