表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLゲームの世界に主人公たちの妹として転生した結果  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
本編
76/115

第76話

「ライラ夫人の身辺調査の結果わかった事なんだけど、ライラ夫人はフェリアナ様とは旧知の中だったらしいんだ。だけど二人の性格は似ても似つかない。少し物語風に語るとフェリアナ様が太陽ならライラ夫人は月。相反する二人のうち月は太陽に嫉妬した。」


あまり話すべきじゃないと言って語り始めたルイスだけど隠すつもりもないのかわかりやすく語り始めた。


そしてルイスはどんどん言葉を紡ぎ続けた――――――



太陽の周りにはいつも人が集まっていた。


老若男女問わず太陽は人々を笑顔で照らす。


けれど月はその美しさで人の心を惑わすことはできても本質はとても冷たい存在。


誰もが月より温かな太陽を求め、焦がれた。


やがて時が流れ太陽は宝を手にした。


その宝には心があり、その心が太陽を選んだ。


月も同じ宝に焦がれた。


けれど月は宝の心に触れることができなかった。


穢れを知らない太陽と汚れた夜を照らす月。


月は穢れを知らず光を放ち続ける太陽を憎んだ。


けれど憎しみは強い執着となり、そしてその執着は太陽が沈んだ後も続いた。


そして再び太陽が昇った時、月は見てしまった。


自分の知る太陽は失われ、新たな太陽が昇ったことを。


焦がれた宝と憎み続けた太陽の輝きをもつあらたな太陽。


その太陽を見た月には歪んだ愛情が芽生えた。


「汚したい」「大事にしたい」「壊したい」「守りたい」


そして、「独占したい」。


月はある日を境に自分の歪んだ感情に気づいてしまった。


そして新たに上った月を「手に入れ」、「壊し」、優しい愛を注ぎ続けて「独占」しようと企み始めた。



「……と、言うことだと思うんだけど、どう?伝わった?」


あまりにも物語風に語るルイス。


幸いにも読書は好きだからなんとなく物語の理解は追い付く。


そしてどうやらノウスもファウスも理解はできている様子だ。


……ただ、ルイスの物語の解釈が正しいのであれば……――――――


「宝はお父様で、お母様とお父様の娘である私を「壊して傍に置き続けたい」ってこと……なの?」


壊すという意味がよくはわからないけど話を聞いて私ができた受け取り方はこれだった。


そしてそんな私の受け取り方が間違っていないと頷くルイス。


正確に壊すとはどういうことなのだろう。


そんなことを考え始めた時だった。


「アリス、魔導士は心を操る術を持つって教えたでしょ?「壊す」っていうのは精神を破壊するってこと。君がライラ夫人だけの事しか考えられないようにして、永遠に自分を愛する奴隷のようにしたいってことだと思うんだ。どこかフェリアナ様の面影を感じさせる君を屈服させ、さらにお父上である前公爵のクラウドライン公爵に面持ちが似ている君をまさに恋の奴隷に、ってね。」


私の表情で私の考えを読み取ったかのように私が知りたいことを教えてくれるルイス。


そんなルイスのおかげで私は一つ、自分が生き残ったことで変わってしまった事象について気づいた。


(正直私の兄たちの顔は誰も似ていない。ゲームのご都合かもしれないけど遺伝子なんて全く感じさせない血のつながりがない兄妹と言われた方がしっくりくるほど誰も似ていない。目の色や髪の色は似たり寄ったりではあるけど……私とヴァルドとブランの三つ子ですら、全く血のつながりがないといわれても不自然ではないほど似てない……。)


こんなに似てないことがあるだろうか。


そう言いたくなるほど身体的特徴も顔の特徴も全員似ても似つかない。


意外と兄弟がたくさん出てくる作品でもなんか全員似ていないことがあるってこともあり、ここが「ゲームの世界」ということで似ていないことは気にかけていなかった。


でも、誰も似ていないからこそライラ夫人は私が死んでいたはずの本来の世界線では公爵家の人間の誰かに執着することがなく物語にさしてかかわりを見せなかったのだと思う。


でも、私が生き残ったことで公爵家に関わる理由ができてしまった。


夜会の事もそうだし、今回の事もそうだ。


(もし私にもルートがあったのだとしたら私の生存ルートでのラスボス的存在はライラ夫人みたい……。)


私が生き残ったことでいろいろ未来が変わっていくというよりは、私が生き残ったことで私という隠しルートが解放されたという考えの方がしっくりくる気がする。


おそらくライラ夫人との縁をどうにかしない限り私にハッピーエンドが来ないのだと感じずにはいられないほどの執着心に思える。


……ずっと私は本編とは無関係で、兄たちが危なげなくハッピーエンドを迎えられるようにと思って生きてきた。


どうせ私は平々凡々な人生にしかならないって決めつけて。


だけどよくよく考えれば兄弟全員、というかなくなった父母含めて誰も平凡ではない家系。


……平凡な人生を歩んで平民のルイスと平和にゴールインなんて楽観的に考えていた自分の考えが馬鹿みたいに思えてくるほど私の人生にもきっと選択肢を間違えば死亡ルート直行の未来があるのだと私は嫌でも理解してしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ