第70話
「は!?男から見て魅力的な女になりたい!?」
カフェを後にした後、私とノウスは次の行き先をぶらぶらしながら考えていた。
その時ふとラグジュアリーショップが見えて少しばかり男の人の意見が知りたくて「魅力的な女」についてノウスに問いかけていた。
「う~ん、なるほどな。それで女を学ぶならライラ夫人ってことで夜会に行ったのか。」
流石察しのいいノウス。
すべて言わなくても私の行動を理解してくれた。
……というか、少し話せば理解してくれるノウスですら私の事が理解できずとるべき行動や言葉に迷うだなんて本当にどれだけ私の無関心そうな態度はひどいのだろうとひどく反省する。
そして反省しながらもノウスの答えを今か今かと待っていると――――――
「悪いなアリステラ、俺実は女の子苦手なんだよ。」
「…………はい?」
ひどく悩みに悩んだ末返された言葉。
その言葉に私は頭が真っ白になる。
つまり何か?もともと男色の毛があったという事なのだろうか。
「あ、お前は大丈夫だぞ、妹だし!ただ、なんていうか……肉食系っていうんだっけ?意外と女の子って自分から迫ってきたりするだろ?胸押し当てられるのとかダメなんだよな。」
う~んとうなりながら私の問いかけに言わなくてもいいことまで言いながら答えてくれるノウス。
しかもノウスの言い方だと色仕掛けをしない、できない子なら大丈夫という言い方にも聞こえなくもない。
少なくと胸のない私のような女の魅力が少ない人間は問題ないのだろう。
恐らく本人にそんなことを言いたい気はなく、私が苦手じゃない理由にも気づいていないさそうだからあえて言わないけど、ひどく言ってやりたい気持ちにはなる。
「私が苦手じゃないのは胸がなくて女の子らしさがないからですかね?」と。
別に大事な事じゃないから言わない。
言わないけど言ってやりたい気持ちを私は必死に抑えた。
(っていうかあれだった。そういえばノウスって恋愛事や異性の事にはひどく鈍感だから原作で余計馬鹿っぽく見えるんだっけ……。)
原作では兄の顔なんて見せない。
だから恋心に鈍感すぎて察しが悪いところなどに「そうじゃない!」と言いたくなるような行動が多くみられた。
……本当、鈍感族とは怖い生き物だ。
まぁ、人間だれしも自分の事に関しては客観的に見える他人よりは鈍感になりがちなのかもしれない。
けど――――――
(うん、まぁ、BLゲームのキャラっぽいっちゃキャラっぽいよ?でも本当、悪意のない攻撃……。)
色恋に鈍感だからこそ私が「魅力」について悩んでいることを察することができないのだろうと思わずにはいられなかった。
「あ、でも一応どういう下着に魅力を感じるとかはあるといえばあるな。」
「えっ!?な、なんで下着!?」
「あれ?違う?お前だってラグジュアリーショップ見て問いかけてきたじゃん。」
恥ずかしくてあくまで「下着」というワードは避けていたのにわざわざそのワードを入れて返してくるノウス。
そんなノウスの言動に「思慮深い」と「デリカシーがある」は別なんだなということに気づかされる。
そしてデリカシーのない兄は――――――
「俺はお前には清楚な感じが似合うと思うぞ。あんまり透けすぎてない清潔感があるのが護ってやりたいって感じがあっていいと思う。」
そんなダイレクトに求めていない下着のアドバイスをなんの悪びれも恥ずかしげもなく白昼堂々、道の往来でいい笑顔を浮かべながら口にしたのだった。
本当に、本当に――――――
「ノ……ノウスのバカぁ!!!」
私はひどく恥ずかしくなってノウスの足を踏みつけた。
ノウスは私に足を踏まれ痛そうに声をあげるがそんなことは知らない。
というかそもそも兄の下着の好みが聞きたい妹なんてとんだブラコンの妹くらいなわけで、普通は嫌悪感すら覚えるものだ。
馬鹿みたいに真剣にアドバイスしようとしてかけてくれた言葉に申し訳ないが本当、馬鹿な返答なんですよ、今のは!
と言いたいけどそんなことをわざわざ口にするのも恥ずかしい私はただただノウスを睨みつける。
するとノウスも何か理解できたのか苦笑いしながら「ごめん。」と謝ってくれる。
が、本当にひどく恥ずかしい私は荒い息を吐きノウスから視線を外したのだった。




