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BLゲームの世界に主人公たちの妹として転生した結果  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
本編
69/115

第69話

「あ、そういやさぁ、お前さえよければなんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだよなぁ。」


私たちの今後についての話が終わってすぐ、頼んでいたものが届き食べ始めた私とノウス。


お互いに一口二口注文の品に口を付けた頃、ノウスが恐る恐る私に問いかけてきた。


「えっと……一応聞くけどヴァルドの件とは……」


「安心しろ、無関係だ。ってかあいつの話はしないって決めたところだろう。」


どうしても避けたい話題を質問されては困ると思い問いかけるけれどひどく呆れた表情を返されてしまう。


とはいえその話題じゃ藍ということで私は安心して頷いた。


一体、何が知りたいというのだろうか。


そう思いノウスの言葉を待っていた私にノウスは驚くべき質問を投げかけてきた。


「時々屋敷抜け出してどこで何してんの?」


「…………え?」


全く想像もしていなかった言葉。


そんな言葉が投げかけられ、私は頭が真っ白になる。


(ど、どうして?いつバレたの!?)


ちゃんと人目を忍んで屋敷を抜け出していた。


そして今まで誰もツッコんでこなかったということは誰も私が抜け出していることに気づいていないと思っていた。


だけど……


(も、もしかして夜会の時みたいに口出しするとどうのとか思ってみんな知ってるけど知らないふりとかしてた?)


そしてヴァルドもこの事を知っていたからこそ朝帰りした日の件を問い詰めてこなかったのだとしたら……?


なんて思ってるとノウスがおどおどする私に向かって小さく笑い「大丈夫大丈夫」と声をかけてきた。


「知ってるのは俺だけだよ。ま、お前が使ってる隠し通路の出口が俺の部屋からはよく見えるってだけなんだけどな。」


(…………え、嘘。)


誰にも見られていないと自信満々で抜け出していた自分が恥ずかしくなってくる。


というか……――――――


「あ、あの、私が夜な夜な抜け出してるの、いつから知って……?」


「ん?1年近く前から。」


(んなっ!!!!)


ルイスと出会ったのは大体10か月前。


もちろん抜け出し始めたのだってそのころ当たりだ。


つまりノウスはほぼほぼ最初から私のお忍びの外出に気づいていたというのだ。


「って、お前本当俺らに興味ないよな。俺の部屋、一回も訪ねてきたことないけどまさか知らなかったんじゃないだろうな。」


どこか呆れと不快さを含んだ訝し気な顔。


そんな表情と視線を向けられ私はそっと視線を逸らす。


そう、無言の肯定だ。


というか、家長であるヴァンお兄様にはもちろん用がある事がある為書斎や部屋を訪ねることはある。


で、一応三つ子だしヴァルドやブランと部屋の行き来もする。


だけど本気でノウスとの部屋に行く理由がなかったというか、ノウスはいつも勝手に自分から私の元に来る上、ファウスの怒りを買って呪われるのも地味に嫌だったからちゃんと兄として好きだけど、自分から絡みに行くことはない。


そしてそんな私の本心を理解したかのようにノウスは盛大にあきれたようなため息を吐くとパフェを一口口に含ませ、少しすねるような感じで「ま、いいけどさ。」と言葉をこぼす。


……本当、申し訳ない。


(兄と普通の兄弟関係を築くに必要な最低限の情報……いや、それ以上はゲームの情報から会得してたなんて言えないよね……。)


興味がないというより本当にただ知ってるからこれ以上理解を深めなくていいと思っていただけ。


けれど昨日ルイスに言われたようにこの行動は一般的には「無関心」と捉えられてもおかしくない行動だ。


ただただこれ以上知りたいことがないぐらいに情報を持っているからというのはあくまで私の意見に過ぎないわけだけど。


「……その、ごめんなさい。別に興味がないというわけじゃないんだけど……。」


なんといえばうまく「無関心」ではないと伝わるのだろうか。


そう思いながら適切な言葉を探しているとまたノウスが小さく笑った。


「いいよ、わかってるから。お前は俺たちに関心のないそぶりをとってるくせに割と俺たちの事好きでいてくれてるのは伝わってるからさ。」


「…………え?」


伝わっている。


その言葉を聞いて私は驚かずにはいられなかった。


だって、「興味がない」なんて言葉をかけられた後なのだ。


興味がないという言葉と「好き」という言葉はつながらない気がする私はどうしてその解釈ができているのか理解ができないのだ。


「確かにお前は俺たちの事を何も聞かないし、自分からあまり話しかけてこないけどさ、不思議と俺たちの好みも知ってたり、望んでることを理解してるようなそぶりを見せるからさ。多分いろいろ言わなくても気づいてんだろうなって。女の勘は鋭いってやつか?っていつも思ってたんだよ。……ま、俺が屋敷抜け出してるのに気づいてるってことは勘づいてなかったけどな。」


どこか嬉しそうにほほ笑みながらパフェを食べるノウス。


そんなノウスの声はとても穏やかで嫌でも「兄」ということが理解させられるほどに「兄」らしいそぶりを見せてくれる。


そして言葉や態度に示していなくても「気づいてくれる」。


(忘れてたけどノウスって馬鹿っぽくてどっちかっていうと勉強苦手そうな無鉄砲な感じに見えるけどそれは底なしに明るくて気さくなだけで、頭も実はいいし、面倒見はいい、観察眼もすごい上に察しがよかったっけ。)


一見無鉄砲な底なしに明るい馬鹿という印象を抱かずにはいられないほどいつもパワフルに他人をいきなり攫うみたいに無理やり連れまわし振り回してくるノウス。


そんなノウスは陽キャならではなのか本当、心の距離感なんてお構いなく相手の懐に無理やり入り込む強引さを持っている。


だけど本当は――――――


「まぁ、屋敷抜け出してどこで何してるかは言いたくなきゃ言わなくていいよ。聞いといて何だけど俺は信じてるからな。俺の妹は危ない店や危ない連中と付き合ったりしないってさ。」


とても思慮深くて、相手をも思いやれる本当に本当に頼れる素敵な兄だと本当に心の底から思わずにはいられないのであった。

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