第63話
「ルイス殿、この度は妹の事を護ってくださりありがとうございました。」
ルイスと話が終わるとほぼ同時くらいにヴァンお兄様、そしてノウスがルイスの雑貨屋に私を迎えに来てくれた。
ヴァンお兄様は元気そうな私を見てひどく安堵した表情を見せ、ノウスは私が下手にしんみりしないようにか明るく振舞ってくれていた。
「とりあえず昨日報告した通り魔導人形の効果は今日も見られませんでしたので後遺症などは大丈夫だと思います。ただ、大事をとって不純物を体外に出すために下剤を服用した結果、足腰に大分痛みがあるようなので2,3日は学業を休まれた方がいいかと思います。長時間固い椅子に座り続けるのは少々酷でしょうから。」
普段あまり依頼人とやり取りするルイスを見ないせいだろう。
ルイスがお兄様に笑みを浮かべながらも淡々と色々説明している姿を見て「ルイスは大人」ということを思い出す。
もちろん普段忘れているわけじゃないけど、丁寧な口調で大人らしく理性的にしゃべるルイスを見ると見た目と中身が相反しているということをひどく感じさせられる。
が、それがまたギャップ萌えというかなんというか。
たまらなく可愛い。
なんて思いながらルイスを見つめているとヴァンお兄様に先に馬車の中に乗り込むように言われ、ノウスと私は馬車に乗り込んだ。
――――その瞬間だった。
ノウスのエスコートにより馬車に乗ると椅子に座ろうとするより先にノウスの膝の上に座らさせられた。
「ちょっ、ノウス!?」
はしたないとすらいえる行為に驚いているとノウスは私の頭を軽くぽんぽんっと叩いてきた。
「目立ない馬車できたせいで椅子が堅いから大人しくしてるんだぞ、アリステラ。」
足腰が痛むというのを聞いての配慮かわからないけど予想外な行動をしてくれるノウス。
あまりの恥ずかしさに私はとりあえず空いていた馬車内のカーテンを閉めた。
誰かに見られたら恥ずかしさで死ねる気がする。
なんて思っていた時だった。
「アリステラ、一つ聞いていいか?ライラ夫人がやばいやつってこと、お前は知ってて夜会に行ったのか?」
いつも底なしに明るいノウスが私の頭をたたきながら真剣な声音で突然問いかけてくる。
「……知らなかった。」
何時もと雰囲気の違うノウスに実はノウスも呆れたり、はたまた怒ったりしているのだろうか?
なんて思うと返答がひどく短くなってしまう。
一体どんな言葉を返されるのだろうと少し心をざわつかせているとノウスは私の頭を軽く撫でまわした。
「ったく、次から何かしたいと思ったときはちゃんと先に相談しろよ?お前は夜会にあんま出てこなかったから知らないだろうけどな、夜会に出席連絡したら滅多な事でもない限り欠席はできないんだよ。それにお前はどこか、すべてを見透かしてるかのような縁があるからな。あの女がやばいのを知ったうえで何か目的があって決めたのかと思ってた……って、言い訳でしかねぇよな。」
私の頭を優しく撫でていたノウスが優しくお説教をしてきているのかと思いきや突然大きなため息を吐きながらまるで自分にあきれているように言葉を口にした。
そして―――――
「ごめんな、言わなくて。」
優しい口調で謝罪を口にし、膝の上に座る私を少し力強く抱きしめてきた。
そんなノウスの様子から本当に心配をかけてしまったことが伝わってきて胸が痛くなる。
だから―――――
「私こそごめんなさい。それと、心配してくれてありがとう。」
私は私を抱きしめてくるノウスの腕に手をそっと置いて謝罪と感謝を口にした。
本当に本当に私はもっとこの私を愛してくれる家族を大事にするべきだ、いや、しなければならない。
ただ兄弟それぞれがハッピーエンドを迎えられるように陰ながらサポートするだけではなく、私も兄弟たちとの幸せな未来を迎えられるよう、これからはちゃんと言葉を交わしていこうと改めて決意したのだった。
 




