第45話
「ごめんね、アリス。アリスに浮気をしたお仕置きに何をしてあげようかを考えてたら止めるの遅くなっちゃった。」
「…………へ?」
いつも通りの笑みのルイスに安心したのもつかの間、ルイスの口からとんでもない発言が聞こえた。
その言葉の意味が解らずキョトンと目を丸くしているとルイスは私の頬に触れた。
「ねぇ、今嫌悪感ない?大丈夫?」
「え?う、うん、大丈―――――――」
「大丈夫。」と、そう返そうとしたその瞬間だった。
ルイスは私の唇にかみつくように勢いよく唇を重ねてきた。
あまりにも突然の事に開いた口がふさがらずキスをしているとルイスの温かな舌が私の口の中に侵入してきた。
そして――――――
(ちょっ……な……何っ……コレ……。)
ルイスの舌が私の舌に絡められる。
先程のライラ夫人とのキスとは違ってとても荒々しくて、キスに成れていない私には息をする暇も与えてくれないほどまさに息つく暇もないキス。
そんなキスに重ねてルイスの指がくすぐったいほどやさしく私の身体をなでてくる。
そんなあまりの激しさとむず痒さに恥ずかしい声がたくさん漏れる。
だけどルイスはそんな声のせいで私が恥ずかしさを抱いていることなんて知ってか知らずかキスをやめない。
(もう……だめっ……)
腰が抜けるほどのキス。
そんなもの実際にはないと思っていた。
だけどひどく激しく、だけど甘いルイスのキスに私は身体の力が抜けてしまった。
「あれ?もう駄目?」
恥ずかしさから全身から火が出て今にも燃え尽きてしまいそうな私を抱きながらルイスは不思議そうに声を出す。
こういったことに経験のない私にはもう十分すぎるほど駄目になる要素だらけだったのに「もう」だなんて使うなんて、本当にこの悪魔は……と、思わずにはいられない。
そんなことを思っていると全身から力が抜けて息を荒く吐く私の視界にすっかりとその存在を忘れてしまっていたドレッドの顔が映りこんだ。
「あ、これ駄目だ。ルイスさん、ちょっとやりすぎじゃない?いくら魔導具の効果かき消す為でもおこちゃまには刺激が強すぎだったんじゃない?」
「えぇ……加減はしたんだけどなぁ……。」
呆れた表情で話すドレッドに不服そうな声で言葉を返すルイス。
そしてルイスは体から力が抜けてうまく座る事すらできない私をゆっくりとベッドに寝転がらせてくれた。
……というか……――――――
(魔導具の効果……?)
目的があってキスされたようなことを理解させてくるドレッドの言葉。
その目的とキスがどう関係するかもわからないし、そもそもその魔導具の効果とやらがいつ私に作用したかもわからない。
私が飲まされた薬がそうとでもいうのだろうか。
なんて思っていると誰かさんの激しいキスのせいで全身が熱い私の頬にちょっと冷たいルイスの手が当てられる。
そんなルイスの表情はとても穏やかでもう怖いなんて感情はない。
ただただ非常に都合のいい話だけど「好き」という感情があふれてくる。
(なんだかよくわからないけどラッキーだったかも。)
私から触ることは許されないし、何時もなんでも寸止め、お預け。
そんなルイスに「愛情」からではなく「魔導具の効果の解除」目的だったとしてもキスしてもらえたという事実。
その事実に私はこの状況で思うのは何かもしれないけれどひどく幸福感を感じてしまうのだった。
 




