第40話
「あの、すみません、私は夜会などに滅多に参加しないため仮面舞踏会の作法がわからないのですが……お名前とかって伺ってもいいものなのでしょうか?」
恐る恐る尋ねてみる私。
そんな私を見て私の腕に抱き着いていた女性は静かに私から離れ、近くのメイドを呼び寄せた。
するとメイドは女性に仮面を渡し、仮面を受け取った女性はというと私の目元に仮面をつけた。
「別に伺ってはダメということはありませんが基本的に素直に本名を教えたりはしませんね。とはいえあなたは入り口で長く仮面もつけず立ち続けていたのでどこの誰かばれてしまっていると思いますが。」
女性は優しく仮面舞踏会の作法を私に教えながら私の頬を撫で、顔を近づけてくる。
すると彼女の仮面の隙間から美しい紫色の瞳が見えた。
「……もしかしてライラ夫人、ですか?」
大きな声で聞こえてはと思い小さな声で問いかけてみると女性は嬉しそうに笑みを浮かべた。
恐らく正解なのだろう。
一応お目当ての人物に会えたことで安堵する。
けれどライラ夫人自体からも怪しげな雰囲気が感じ取れてしまい、正直今すぐにでも帰りたい。
とは思うけれど一緒に来たヴァルドもブランもいない。
まず二人を見つけなければいけない。
正直手ぶらで帰るわけには……なんて思いもあるといえばあるけれどそれよりこの胡散臭い雰囲気がヴァルドとブランに何かあったらと不安を与えてくる。
しかもちょっと過激な表現のあるBLゲームだったんで、事細かい描写はなくてもこのイベントでルチェルが変な薬をかがされてブランを襲ってしまうというシーンがあった。
最終的に結ばれる二人かもしれないけれど今のブランはルチェルに対しほとんど好感度がない。
というか興味のある対象ではない!
あ、いや、確かもともと興味はないわけじゃなかったけど、このイベント後ブランがルチェルに大きく興味を持ち出す流れだったとは思う。
だけど流石に今回はブランが進んできたわけでなく、私の同行が目的だった。
「男同士の恋愛」に興味があるとはいえ、もしそんなことになったら私は申し訳なくて申し訳なくて家出したくなるかもしれない。
「ラ、ライラ夫人、その、大変申し訳ないのですが私ははぐれた家族を探しに行きたいのでこの辺りで――――」
「この辺りで失礼します。」といってその場を離れようとした瞬間だった。
ライラ夫人から遠ざかろうとしたはずの私の身体はなぜか彼女に抱き寄せられ、そして彼女に手拭いで口元を覆われた。
そして――――――
「探させになんていかせませんよ?だって貴方にはこれから私に溺れていただかないといけないのだから。」
耳元でひどく艶のある声でささやかれた言葉。
その言葉を聞き終わるころには私の視界は真っ暗になっていた。
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