第36話
「え、社交活動を増やしたい、ですか?」
学園に行く前の家族団欒食事タイム。
そんな中で私は一つの決意をヴァンお兄様に告白していた。
もちろんその話を聞いているのはヴァンお兄様だけではない。
ノウスとブランはさして興味がなさそうな感じで食事をしつつ一応こちらを気にしているような感じ。
ヴァルドはというと驚きのあまりちぎろうとしていたパンを床に落とした。
「お、お前熱でもあんのかよ……夜会とか嫌いだって言って参加しないって駄々こねまくってたよな……また何で……」
驚きのあまりすごい顔で体を震わせながら問いかけてくるヴァルド。
そう、ヴァルドの言う通り私は夜会が嫌いだ。
でも嫌いな理由は行くのが面倒だとか、踊ったりするのが嫌いだとかそういう理由じゃない。
(だって胸の暴力がすごいんだもん、夜会……!!!)
制服はまだいい。
デザインのおかげで私のまっ平らはもちろん、ほんの少しだけだけど巨乳も隠れる。
だけど夜会はみんなコルセットを締め、くびれを作る分胸だって強調され、何なら普段以上に胸があるように見える子も多い。
だけどふくらみが全くない私はコルセットをすればするほど平が目立つうえもはや美しい逆三角形。
年頃の令嬢たちが胸と言う武器を余すことなく使う仲私は惨めに壁の華にもなれず、空気にしかなれない夜会。
一応公爵令嬢だというのに兄たち以外の男の人が基本的に傍にいないのが常。
……惨めすぎると思わないだろうか。
だけどそんなことをいつまでも思っていられない。
いやだいやだと逃げてきた結果、私には淑女らしさというものがないのだと理解した。
だからどう頑張っても男みたいになっていくのだと。
人間は見た目じゃない、中身だというのなら令嬢たちと過ごし、にじみ出るほどの女らしさを得ようという目的だ。
「ヴァルド、驚くのも無理はないと思うけどね、私は変わらなきゃいけないの。じゃないとそろそろドレッドにまで男扱いされる気がするっ……。」
私は両手で顔を覆い、心の叫びを口にした。
昨日の夜、あの男は私の上半身裸を見たわけだ。
なのに顔を赤らめることもせず、ひどくすました顔でタオルの巻き方を指摘してきた。
もうそろそろ私も、実は女の子として育てられた男なんじゃないかなと錯覚しそうなまでに周りの私への扱いがどう考えても女の子相手の扱いではなさすぎる。
本当、泣きたい。
「……任せろ、アリステラ。あいつは俺が消しとくからよ。」
私の隣に座るヴァルドはとても怖い顔を浮かべながら物騒なことを口にする。
だけどそれが私を思っての事だとわかる為私はこんな私でも女扱い?妹扱い?をちゃんとしてくれるヴァルドにうれし涙を浮かべながら抱き着いた。
「ったく、うちの可愛い妹捕まえてどういうつもりだろぉなぁ~あんの問題児。」
怒りがこもったヴァルドの声。
その声に首を縦に振りながらとてつもない頼もしさを感じる。
「是非ともしばらく遊びまわれないくらいにはぶっ飛ばしといて!!」
彼にとってはご褒美でもあるはずだから容赦なく私の気持ちを晴らしていただきたい。
そんな思いから無駄に力んでしまったのがよくないのだろう。
「……いつの間に私の可愛いアリステラはこんなに物騒になってしまったのでしょうか……。」
ヴァンお兄様が私の言動にため息をついてしまったのだった。




