第35話
「……あの、ルイスさん。何故私は「目隠し」をさせられているのでしょうか。」
ドレッドに用意してもらった食事を終え、そろそろ帰ろうかと思った私を呼び止め、一緒にお風呂に入ろうと提案してきたルイス。
ちょっと、いや、完全に下心からその提案を快く受けた私は何故か目隠しをされた状態で入浴していた。
うん、普通逆じゃない?
なんて思っているとどこからかルイスの声が聞こえてきた。
「だってアリスはヘンタイさんだから僕の裸まじまじ見そうだし、恥ずかしかったから目隠しさせてもらっちゃった。」
(恥ずかしいなら誘わないで!!!!)
なんだか少し照れてる風な声と可愛い言葉選びにきゅんとしながらも激しい憤りを感じる。
本当にこの人は私を弄ぶ天才だと思う。
というか本当、私からルイスの姿が見えないというのは結構な問題だったりする。
(い、今別にルイスにじろじろ見られていたりしないよね?)
浴槽の中で縮こまるように膝を抱えて座る私。
被害妄想が過ぎるかもしれないけれど今この瞬間、もしかしたらルイスが私の身体をジロジロともいているかもしれない!!
なんて想像をすると恥ずかしくてヤバイ。
ルイスの裸は見れなくていいからせめて今どこを見てどんな顔をしているのか、それだけは見させてほしいと切に願うけどそんなことは許されない。
なんとなく目隠しの隙間から隣にいる事だけは確認出来はするけど、一体ルイスの視線は今どこへ向かっているのだろうか。
そんなことばかりを考えていた時だった。
「うん、ちゃんと報告に嘘はないね。アリス、いい子いい子。」
突然隣から私を褒める声が聞こえてきて驚く。
一体何の話をしているのだろう。
そう思った私は見えないことに変わりないけれどルイスの方を向いてみて問いかけた。
「あの、嘘っていうのは……」
何のことを言っているのか本気でわからなかった私はルイスに問いかけた。
するとそう待たずしてルイスの優しい声が聞こえると同時に腕に何かがぶつかってきた。
「アリスがどこも怪我してないか見てたの。今日初めて体術だけで任務に挑んだでしょ?だからあざでも作ってたりしないか心配だったんだぁ。」
落ち着いた声音でゆったりと話すルイス。
心配してお風呂に誘ってくれたことがなんとなくわかり胸が少し暖かくなる。
だけどもともと私の身体を見る目的でお風呂に誘ったのならやはり私が目隠しをされるのは解せない。
なんて思っていた時だった。
「やっほ~!なんか寂しいから着ちゃった!」
いきなり扉が開く音と胡散臭い詐欺師のような声が聞こえ、私は目隠しを瞬時にはずし、近くにあった桶を投げつけた。
「い〝っ!!!」
投げつけた桶は見事に胡散臭さで右に出るものはそうそういないドレッドに直撃。
ドレッドは痛そうな声をしながら数歩後退した。
「ちょ、痛いんだけど……何してくれるわけ?」
私に桶を投げられたドレッドが睨んでくる。
恐らく彼の狙いはルイスに違いない。
最近の媚の売り方からして間違いなくそう!
そう思った私はルイスをかばうようにルイスの前に仁王立ちした。
そして―――――――
「あれ……?アリス、君何で男みたいなタオルの巻き方してるの?」
「……え?」
ドレッドに言われて自分の身体を見る。
するとドレッドの言葉通り今の私は男性のタオルの巻き方、つまり上半身は包まず、腰だから太ももにかけてだけをタオルで包んでいるだけの姿だということに気づく。
急ぎ胸元を両腕で抱き隠し、私は後ろを振り返る。
「あれ?巻き方間違えてた?」
振り返った先にあったのはキョトンとした顔で何がおかしいのと言わんばかりに首をかしげるルイスの姿。
そんな何が間違いかわからないふりをしているのか、本気でわかっていないのか、そんな彼のタオルの巻き方はまるで女性のような巻き方だった。
あまりにもおかしすぎるルイスと私の立場。
それを嫌というほどに思い知らされた私はとあることを決心するのだった。




