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BLゲームの世界に主人公たちの妹として転生した結果  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
本編
34/115

第34話

「おかえり~二人とも!今日はちょっと気合い入れて待ってたんだ。」


ルイスの家に帰るや否や、料理をもって階段を駆け下りてきたドレッドと鉢合わせた。


ルイスは料理にくぎ付けだけれど私は異様すぎるその光景に静かに扉を閉め―――――ようとしたけれど、閉まる直前ドレッドの手に阻まれて閉じようとした扉はこじ開けられてしまった。


「ちょっと、ひどくない?さすがの俺も怒っちゃうよ、アリス。」


笑顔を浮かべてはいるものの非常に怒っていることが声と眉根からうかがえる。


どうやら対応が気に入らなかったらしいが気に入らないのは何もドレッドだけじゃない。


「いや、なんか邪魔なのがいるなって思って。」


私だって気に入らない。


すっごく気に入らない。


私とルイスが二人きりになれる唯一の空間にお邪魔虫がいることが。


「あ、ルイスさん。今日はルイスさんの好きなグラタンも作ったんですよ。」


「えぇ!?本当!?」


まるで通い妻のごとくエプロンをして甲斐甲斐しくルイスに媚びるドレッド。


ヴァルドが生活力がない分うまく調和をとるための設定か知らないけど料理がうまいのが正直ムカつく。


ドレッドは「ラーヴェン」支部爆発事件以来、仕事がなくて暇な日はいつもこうしてルイスの家に来てなぜか食事を作っているのだ。


しかもそれが公爵家のシェフにも負けず劣らずな出来の料理ばかり。


胃袋を掴まれたルイスはこの危険な男の出入りを「料理係」として許可してしまったのだ。


「ほらほら、二人とも疲れたでしょ?ご飯食べを食べながらゆっくりしようよ。」


にこにこと笑みを浮かべながら私とルイスにご飯を食べようと促してくるドレッド。


本性をさらけ出されてからというもの今後は本性出しっぱなしになるのかと思えばそういうわけでもなく、割と普段は本性が割れているというのに仮面を外さず接してくるドレッド。


ちなみにドレッドの本性を知っているのは別に私だけではないのだ。


実のところルイスはドレッドが闇ギルドのギルド長なことを最初から知っていて、ドレッドは勝手に私が色々ルイスから自分の事を聞いたのかもしれないと推測してくれたようでドレッドのイヤらしい拷問は今は受けていなかったりする。


自分の本性を知っている人間との付き合いが楽なのか、命を助けてもらった恩義からかはわからないけどルイスを慕う感じで入り浸るドレッド。


そんなドレッドに力強く来ないでと言いたくても言えないのはルイスにとって恋人でも何でもない私にはそんなことを言う権利がない事、そして何より――――――


……今日も今日とていい匂い。


(私が料理ができたら追い出せるのにっ……。)


サンドイッチぐらいは作れてもドレッドレベルの料理なんて私には到底作れない。


負け犬はおとなしく出された料理を食べながら敗北をかみしめる以外できることがなかった。


(っていうかまさかとは思うけどドレッドのお相手、ルイスに変わってたりしないよね……?)


正直、一番の心配はそこだった。


ルイスはどの兄たち《キャラクター》が主人公になってもある程度絡んでくる。


だからもしかして隠しルートみたいなのがどの兄たちとも存在していたりするかもしれない、と。


そして私が原作改変をしたせいで何の因果か主人公ではなく相手役とのカップリングルートになっていたりするのではないかと正直ひどく焦っている。


原作改変で私が生き残ったせいでBLになりそうでなっていなかったこの世界の根底はあくまでBLなんだなと思わずにはいられない。


ドレッドの事もそうだし、私の事もだ。


(絵面だけなら私とルイスもBLかもしれないしね……。はは……。)


考えていて虚しくさえなってくる。


本当に何で私はこうも欠片も胸が膨らまないのだろうか。


もう何なら私は男として生まれたけど生まれてすぐに大事なところを切り落とされたといわれた方がまだ納得できると思えるくらいに女性らしさがまるでない。


(その上料理もできないし……。)


ドレッドのせいで本当にひどい敗北感を感じながら料理を食べる。


本当においしすぎて腹が立って仕方ない。


理不尽な感情で申し訳ないがこれが恋愛感情からくる嫉妬なのだから仕方ない。


「おいしい、アリス?」


「……うん。」


にこにこと胡散臭い笑顔で私の愛称を呼び、問いかけてくるドレッド。


ルイスが私を「アリス」と呼ぶのを聞いていつの間にか呼び始められた。


別に馴れ馴れしいなんてことは思わないけど、どんどん私とルイスの間に割って入ってくるこの男が憎くないといえば嘘にはなると思う。


けれど私のおいしいという同調にちょっとだけ胡散臭く”ない”笑顔を浮かべているドレッドに対し、私は憎いだのなんだのは言えず、ただただ料理をおいしくいただくことしかできないのであった。


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