第28話
「よし、今日も異常なし!」
ヴァルドの事はドレッドに任せて部屋に戻ってきた私は今日も部屋に人が入った痕跡がないのを確認し、カーテンを開けた。
そして窓を開けると執事のセバスチャンと視線がぶつかった。
柔らかく笑みを向けてくれるセバスチャン。
いつも通りのセバスチャンに改めて誰も私の外出に気づいていないことが解る。
まぁ、ヴァルドにはばれたけれどドレッドがおそらく何とかしてくれるだろう。
そう思いながら私はセバスチャンが私の起床を確認したことでもうじき送られてくるであろう侍女の到着を待つ。
ちょっとヴァルドとドレッドが今どんなやり取りをしているか気になるけれど残念ながら私の部屋からは状況を確認できない為、今頃ドレッドにいいように遊ばれているであろうヴァルドを想像した。
(……そういえば結果的にラーヴェンの支部は破壊されたわけだし、ヴァルドの任務はなくなるのよね?多分……。)
予想外の事態が起き、ドレッドが負傷はしたものの目的は達成できた。
ドレッド曰く、「探しもの」という名の「お父様の事件の詳細記録」はあったらしい。
だけど爆発で回収することができなかったとのことだった。
とはいえ大爆発によりまず証拠が残っていることはないと思われるといっていた。
むしろあの大爆発は情報が外部に漏れないよう、ドレッドという侵入者を確認し起こしたものだったらしい。
(ドレッドは大けがしたけど結果オーライってところかな。)
死んではいないし、どうやら私の治療のおかげで動き回ることは問題なくできるらしい。
自分の能力がどの程度なのか知りたくて「ちなみに治療してない状態のときは動けそうだった?」と問いかけると嘘か本当か「指一本動かせなかったかな。」と笑顔で帰された。
(もし本当なら便利な力だよね……。)
大けがもある程度は治すことができる。
治癒魔法は本当に優秀だなぁと改めて再確認する。
まぁ残念ながら私にはまだまだ死んだ人間を生き返らせられるような某ゲームのようなザ●ラルみたいな技は到底使えないわけだけど。
なんて思っていると扉をたたく音が聞こえて「どうぞ」と扉の向こうにいるであろう人に声をかける。
すると公爵家の侍女が二人、扉を開けて入ってくる。
そして二人のうち一人は目覚めの1杯としていい香りの紅茶を運んできていた。
私は運んできてもらった紅茶を手に取ると「実は目覚めの一杯じゃないんだけどね」なんて心で思いながらも紅茶に口をつける。
そして私が優雅に紅茶を飲んでいる間に侍女たちが私の今日のドレスを選び始めた。
その時だった。
「そういえばお嬢様、昨晩町はずれの森で大きな爆発があったのですが、睡眠に問題はありませんでしたか?」
ドレスを選びながら侍女の一人が語り掛けてくる。
……ピンポイントで触れられたくない会話に触れてくるものだ。
とはいえ中々な爆発だったのだ。
こうして朝一の話題になるのは仕方がない事なのかもしれない。
「そうなの?昨日はぐっすり眠ってたから気にならなかったかな。」
とりあえず怪しまれたりなどしないように私はさらっと流せるような切り返しをしてみる。
すると侍女たちも「それはよかったです。」と話題を切り上げてくれた。
それからというもの私は休日だしおしゃれをしましょうと言われ、小一時間ほど侍女たちと服選びをすることとなったのだった。




