第17話
「…………どうしよう。」
鳥のさえずりが聞こえ、目を覚ます。
するとそこは見慣れてはいるはいるけれど普段寝起き一番に見る景色ではない景色が広がっていた。
そう、ルイスの家だ。
そして床には私のドレス、そして下着までもが転がっている。
(え、ちょ、え!?)
一体どういうことか理解できず困惑する。
確か私は昨晩王子に媚薬を盛られた。
そして助けを求めてルイスの家へ向かう途中、男の人とぶつかって貞操の危機!となったところにルイスが助けに来てくれたようなことを覚えている。
が、全裸でルイスのベッドに眠っている理由がわからない!!
(え?やっちゃった?やっちゃった!?)
セクハラまがいなことは受けてもこういうことは一度もなかった。
だからもし、もしそういうことがあったなら――――――
「き、既成事実ができ――――――」
「馬鹿だなぁ。僕がまな板なんて相手にするわけないでしょ?」
一瞬の妄想すら許してくれない天使がいつの間にか部屋の扉の前に立っている。
そして最上級のスマイルでバッサリと私を切り捨て絶望に突き落としてきた。
「裸なのは君が熱がって仕方なかったのと汗がすごかったから拭いてあげたんだよ。」
「そ、そうですか……。」
私の元へと歩み寄り私に水と何やら錠剤を手渡してくるルイス。
とりあえず飲めという事かと思い錠剤を口に含んで水を飲んだ瞬間だった。
「君さぁ、出されたものホイホイ口にすべきじゃないよ?それ、下剤だから。」
「!?」
呆れたような口調でとんでもない事実を教えてくれるルイス。
驚きながらルイスを見るとルイスは笑顔を浮かべた。
「しかもそれとっても効き目が強い下剤なんだ。これに懲りてしっかり反省できるよう足腰たたないレベルまで下してくるといいよ。」
天使のようなスマイルから悪魔のようなスマイルへナチュラルに転換しながら世にもおぞましい発言をするルイス。
ルイスの言葉通りすぐにお腹の調子が悪くなり私はこの後、3時間トイレにこもることになった。
そしてようやく腹痛が収まった頃、私は本当に足腰が痛くて立てないほどの痛みを感じていた。
「いやぁ拷問用の下剤徴収したんだけどどれぐらいの威力かなって思って使っちゃったんだ。ごめんね?」
トイレの前でへたれこむ私にシーツをかぶせてくれながら頭をなでて謝ってくるルイス。
でもこれはさすがにごめんと言われて大丈夫とは言えない。
「ごめんじゃない、ごめんじゃない、本当ごめんじゃないっ……。」
もうあまりのつらさに涙まで出てきていた私は泣きながらルイスに抗議する。
するとルイスはいい笑顔を浮かべて「いい教訓になったね」と返してきた。
本当にこの悪魔と大きな声で叫びたい気持ちを抑えながらもしかしたらここまでの事をされるほど昨日迷惑をかけたのかもしれないと申し訳なくなってしまった。
「本当、全部君が悪いんだからね。」
「えっ……?」
突然小さな声で吐き捨てられた言葉。
その言葉が聞き取れず聞き返すものの「なんでもない」と答えられる。
そして――――
「そういえば君学生だけど時間大丈夫?」
小さな置時計を可愛く両手で持ち、私に今の時刻を示してくる。
現在の時間、11時35分。
普通にもうアウトだ。
というか――――――
「そもそも無断外泊がアウト……。」
いくら王子と夜に出かけたとはいえ、今日クラウス王子が普通に登校してしまってはヴァンに不審がられる。
というか二人登校しなければしないで疑われる。
「駆け落ちしよう、ルイスぅ~~~」
涙目になりながらルイスに懇願してみる。
するとルイスはいい笑顔で微笑みながら「いつかね。」といつも通りの返しをしてくるのだった。




