第15話【更新再開】
「あははははは!面白い、実に面白いよアリステラ!!君の意見にはひどく同意するよ!!!」
大きな声で笑いながらお腹を抱えて楽しそうに話すクラウス王子。
壊れた?
なんて思うくらい目の前の人物がクラウス王子とは思えないほど別人のように感じられた。
「私も見せかけの物など大嫌いだよ。……あぁ、そうだな。だから私は見せかけだけ繕う貴族が信頼できず、形のあるつながりを好んでいる。君はそんな私を見抜いていたかは知らないが私を一番納得させる台詞を言った……本当、面白いよ。」
すこし落ち着いたのか一息ついて声のボリュームを落としながら再び話し始めたクラウス王子。
すると王子は乾杯をしていないにもかかわらず料理に手を付け始めた。
「無礼講だ。作法も何も気にせず食べていいぞ。どうやら私は君を気に入ってしまったらしい。」
「は、はぁ……。有難迷惑というかなんというか……」
無礼講ということは本気で言葉を択ばず本心で話せということだと思い感じたままの言葉を口にする。
するとクラウス王子は私の返答にまた笑った。
「いい。実にいいぞ!お前はヴァンと違い表情が豊かな分本心で話しているということが伝わってくる。面白いお前に免じて婚約の申し入れは今後一切やめてやろう。」
姿勢を崩しながら肉にナイフを通し、一口サイズに切りながらさらっと私にとってとっても大事な事を口にするクラウス王子。
驚いた私は軽く口に含めたシャンパンを吐き出し、急ぎ「本当ですか!?」と問いかけた。
「あはは、お前、マナー以前にその行動は令嬢として駄目だろうっ……。」
私がシャンパンを拭きだしたのがそんなに面白かったのかまた笑い始めるクラウス王子。
(本当に底意地が悪い……。)
そう思いながら私は手拭いで口元をぬぐった。
「この無礼講の場で一つお前に誓ってやろう。私はもう二度と取り繕っただけの心ない言葉をお前に駆けないと約束しよう。まぁ、かけたところで見破られそうだからな。だからお前も私にすべて嘘偽りのない本心の言葉を語れ。」
ひどく楽しそうに言葉を紡ぎながら料理を食べるクラウス王子。
クラウス王子の言う通り確かにクラウス王子の取り繕っただけの言葉を私は見破ると思う。そして私がどう感じているか伝えた以上、私がとりつくろってもクラウス王子はそれがとりつくろってる言葉だと気づくだろう。
なら詮索し合うのも大変だしお互い正直でいいんじゃない?という提案に私はもちろん意義はない。
むしろ願ったりかなったりだ。
「約束します。本心でお相手することを。」
私の返答を聞くとクラウス王子は嬉しそうにグラスを高らかに掲げた。
それを見て私もグラスを掲げる。
貴族同士での「約束」の儀式のようなものだ。
私とクラウス王子は掲げたグラスを一気に飲み干した。
そしてこれで互いに誓いを立てたということになるのだった。
「さて、嘘をつかないと誓い合ったところで二つほどお前に手土産にいいことを教えてやろう。」
(……手土産?)
まだ土産の話をするには不十分なくらいしか食事は進んでいない。
何故今そんな話を大事そうな話をするのだろうと疑問を覚えながらクラウス王子の返答を待っていた時だった。
「私はお前に「婚約」は望まないと誓ったが「結婚」を申し込まないとは言っていないぞ。」
「…………え?」
ひどくいい笑顔で楽しそうに語るクラウス王子。
その言葉に意味が解らず固まってしまう私にさらにクラウス王子は畳みかけてくる。
「あとお前のシャンパンには時間差で効果を出す媚薬を少々入れておいた。さぁ、どうする?」
色々見透かされたお礼。
そう言いたげにクラウス王子は愉快そうな笑みを浮かべ私を見つめてくる。
「結婚」というワードに「媚薬」というワード。
混ぜるな危険のワードたちに危機を覚えた私は急ぎ立ち上がった。
そして――――――
「ほんっとありえない!このくそ王子!!!」
湧き上がる感情を思い切りクラウス王子にぶつけ、急ぎその場を逃げ出したのだった。




